人事考課の決め方やマーケティング効果の伸び悩みなどは、ビジネスシーンにおいてよく見られる悩みです。そのような際に役立つのが社会心理学の用語として知られる「ハロー効果」です。

ハロー効果はビジネス面だけではなくさまざまな人間関係で活用できます。本記事ではハロー効果の法則と理論を紹介していきます。

  • ハロー効果について学びましょう

    ハロー効果について学びましょう

ハロー効果の意味

ハロー効果とは「ある対象に対する印象や評価が、その見た目や特徴に左右されて歪められてしまう現象」を意味します。「ハロー」は光の輪が現れる大気光学現象を指し、日本語では後光と訳されるため、ハロー効果は「光背効果」「後光効果」とも呼ばれます。

ハロー効果は社会心理学において「認知バイアス」と呼ばれるものに該当します。人の認知にバイアス、すなわち「偏り」を及ぼす概念であり、面接官らが短期間で人物を評価するためのヒューリスティック思考でも活用されます。

ハロー効果とピグマリオン効果との違い

ハロー効果と類似したもので「ピグマリオン効果」という言葉もあります。ハロー効果は相手のいい点を見ることで、その人を全体的に高く評価することです。

これに対してピグマリオン効果は「相手に期待し続けると、その人が期待に応えてよい結果を生み出す」という効果です。相手に期待することで行動変容を促すピグマリオン効果は、主に教育現場で教師が生徒に活用しています。

ポジティブハロー効果とネガティブハロー効果

ハロー効果には「ポジティブハロー効果」と「ネガティブハロー効果」の2種類があり、両方の効果を併せ持つと考えられています。

ポジティブハロー効果は相手の目立つ利点や肩書きにつられて他の部分も高く評価してしまう効果ですが、ネガティブハロー効果はその反対です。見た目や第一印象などのある特定の評価が低いと、ネガティブな特徴に引っ張られて全体を低く評価してしまう現象です。

【ポジティブハロー効果の具体例】

ポジティブハロー効果の例を挙げると、「笑顔で明るく挨拶ができ、身なりが清潔できっちりしている人は、きっと優秀な人材でしょう」と判断するケースがあります。

コマーシャルや広告宣伝などで好感度の高い有名芸能人を起用するのも、芸能人のイメージに引っ張られるポジティブハロー効果を狙った合理的な宣伝方法です。

【ネガティブハロー効果の具体例】

一方、対義語のネガティブハロー効果の具体例としては「身なりもだらしなく感じが悪い第一印象だと、その人をマイナスなイメージで評価しやすい」などがあげられます。別名「ホーン効果」とも呼ばれます。

例えば、恰好や愛想が悪いセールスマンや店員に商品を紹介されても、ネガティブな印象に引きずられて商品の質すらも悪く感じてしまう傾向があります。同じ商品でも、良質な対応の店に行って購入したいと考える人もいるのではないでしょうか。これがネガティブハロー効果です。

  • ハロー効果はプラス効果だけではない点を注意しましょう

    ハロー効果はプラス効果だけではない点に注意しましょう

商品に対するハロー効果活用の具体例

ハロー効果は人物だけでなく、商品にも同様の効果があります。例えばある商品の目立つ特徴に意識がいってしまうと他の部分の評価が疎かになってしまい、簡単によい商品だと思い込んでしまう現象があります。

ビジネスにおいて商品に対するハロー効果をうまく利用すれば、商品販売のマーケティング面にプラスとなる可能性があります。ここからは、ハロー効果におけるマーケティング具体例についても紹介していきます。

(1)専門家や社会的地位が高い人物が勧めている

CMで有名人が商品紹介しているとき、その人のイメージに影響されて商品の評価が高くなります。魅力的な女優さんが化粧品の宣伝広告に出ていれば、その化粧品を使ってみたいという気持ちになるでしょう。

また、テレビ番組で専門家が紹介した商品が、次の日にはスーパーやコンビニの売り場からなくなっている、ということもよく起こる現象です。これらはハロー現象のひとつで、肩書きのある専門家や社会的に地位が高い有名人などが商品を紹介することは消費者の購買意欲を駆り立てます。

(2)受賞歴がある

お菓子やスイーツなど、食べ物をはじめとする各商品に対するさまざまなセレクションが近年は広く行われるようになっています。セレクションで金賞や最優秀賞などの賞を受賞した商品ならば、今まで購入したことがない店の商品でも消費者にとっては信用性が高くなるでしょう。

このようなハロー効果はネット販売においても活用されています。人気商品ランキングで上位の商品は売れる確率が高く、人気度によって売れ行きが左右されると言われています。

(3)口コミやSNSでの評価が高い

SNSでの口コミや評価に影響されることもハロー効果のひとつです。例えば、大手グルメ評価サイトで五つ星をつけられているレストランならば、信用が高く利用してみたいという気持ちになりやすいですよね。

アンケート調査を行って消費者のポジティブな意見をハロー効果として活用する場合もあります。実際に商品を使った人の意見は、購入してみようというきっかけになるでしょう。

(4)目を引く数値データがある

購入意識を高める数値やデータによって、顧客が商品に対してよいイメージを持つこともハロー効果のひとつです。例えばサプリメントに「〇〇成分が〇%含まれています」という具体的な数値やデータが記載されていると、より商品の印象がよくなります。

また、含有成分などの論文や研究事例を挙げれば、商品を購入したいと考えている人にとって説得力のあるハロー効果となり、商品の売り上げにも影響することでしょう。

人物に対するハロー効果の具体例

ハロー効果は目立つ印象が優れていると、その他のことも引っ張られて優れていると感じるバイアスです。これは人物に対する評価で多く取り入れられていますので、接客でも活用できます。

第一印象でポジティブな部分を強調すれば、その後の人間関係をよくする資産になりえます。具体例をみていきましょう。

身だしなみが整っている

人物の印象で目立つ部分のひとつとして身だしなみが挙げられます。髪がボサボサで着衣の乱れがあるだらしない服装の人よりは、きっちりとしたスーツで整えられた髪の人の方が印象がよく、セールスマンであれば信頼も勝ち取りやすいでしょう。

人間は見た目で判断していることも多いため、就職時の会社面接や営業職における心得として身だしなみを整えることは常識になっています。このことは目立つ印象をよくすることで他の部分の評価も必然的に上がるというハロー効果によるものです。

学歴が高い

学歴が高いことは「キャリア」とも呼ばれ、影響力のあるハロー効果例です。学歴が高いとその人の発言が「○○大学を卒業した人」という先入観で信頼されやすい傾向にあり、就職の採用にも高学歴は有利です。

学歴が高いから仕事が優秀だとは限りませんが、その情報に引っ張られて、その人物のことをあまり深く知らなくても信用してしまうこともあるでしょう。

英語能力などのスキルがある

学歴と同様に何らかの資格やスキルを有していると、「仕事もテキパキとこなせるだろう」という印象を抱きやすくなります。例えば、日本人が比較的苦手とされている英語を流暢に話せる人がいるとしたら、たとえその人の仕事ぶりや性格を知らなくても「仕事ができる」という思い込みで判断してしまいがちということです。

ビジネスにおいてハロー効果を活用する際の注意点

ハロー効果はビジネスにおいても有効に働きますが、その効果をマーケティングに活用するためには、対象となる消費者がどのような商品を求めているか、その背景にある日常の生活スタイルはどういったものかを念頭に置いておくことが重要です。

ビジネスでポジティブハロー効果を狙ったつもりでも、やり方によってはネガティブハロー効果が働いてしまうこともあります。ビジネスにおいてハロー効果を活用するためには、この両面を理解してマーケティングすることが必要となります。

それでは注意点をみていきましょう。

■誇大表現につながりやすい

ポジティブハロー効果を期待した商品宣伝時に注意したいのは、表現が大げさになりすぎることです。誇大表現には消費者の商品イメージと実際の商品との間に大きなずれを起こす問題点があります。

ハロー効果を起こすためのセレクションの受賞歴や専門家の意見、数値データなどは合理的な根拠を示すものでなくてはなりません。これらに対して大げさすぎる虚偽の疑いがある場合には、裏付けがある資料の提出を消費者庁に提出することになります。

このときに合理的な根拠を示すものでないと判断されると、裁判になったり課徴金を納付しなければならなかったりするため、商品紹介が誇大表現になりすぎないように注意しましょう。

■長期的なイメージの維持は難しい

商品をポジティブに宣伝することでハロー効果は期待できますが、逆に目立った特徴ばかりにスポットを当てていると、商品の本質や他のよい点が消費者に伝わらない可能性もあります。

例えば有名人がテレビで紹介していた商品だと、購入してみようという消費者は増えます。しかし、その商品のよさを真に理解していなければ一時的に購入者が増えたとしても、長期間にわたってリピートしてくれる消費者は獲得しづらくなるでしょう。

■不祥事によるイメージダウンが起こりやすい

メディアを利用する有名人のCM広告などは、ハロー効果の中でも売り上げにつながりやすい宣伝方法の一つです。しかし、もし起用した有名人が不祥事を起こしたときには、商品イメージに悪い印象が付きイメージダウンが起こりやすいので注意が必要です。

■不当な評価につながる場合がある

ハロー効果は優れた点があると、プラスイメージに引っ張られてその他の要素も好印象になる、という効果です。それはつまり「その他の要素」が正当に評価されていない状況である、ということです。「その他の要素」とは、商品であれば価格や仕様、素材のよさなどです。人物であれば、本来の人柄や素養などが該当します。

例えば上述したように不祥事によるイメージダウンが起きた場合、ネガティブハロー効果が作用してしまう可能性があります。

ハロー効果によって目くらましされた状態では「その他の要素(本来の特徴)」が正当に評価されていない可能性がある、というリスクは念頭に置くべきです。

広告におけるハロー効果の活用例

日ごろ何気なく目にする広告宣伝でも、商品の評価を上げるために多くのハロー効果を取り入れている例があります。これから紹介する例と、日常目にしている広告に共通点がないか確認してみてください。

  • 広告におけるハロー効果の活用例を知りましょう

    広告におけるハロー効果の活用例を知りましょう

有名人の起用

宣伝したい商品イメージに合う有名人を広告に起用することで、商品の特徴もポジティブな印象に引っ張られやすくなります。

一例としては、美しい有名人モデルをメイク用品の宣伝に登場させるのもハロー効果です。美しい肌の有名人モデルがアップで写っていれば、「自分もあのようになりたい」と考えて購入するユーザーも多いでしょう。

イメージキャラクターの活用

幅広く知られているキャラクターを商品のイメージキャラクターに使うことも、ポピュラーなハロー効果の方法です。

例えば有名なアニメやイラストのキャラクターで物語風に宣伝をしたり、人間の言葉を喋る動物をキャラクターにして宣伝をしたりすると、イメージキャラクターの強いインパクトで商品に対する印象も残りやすくなります。

「3Bの要素」の採用

ハロー効果を促す方法として「3B」と呼ばれる要素を活用することも効果的です。「3B」とは「Beauty(美しい人物)」「Baby(赤ちゃん)」「Beast(動物)」の頭文字です。

「Beauty」は上述した化粧品広告などでよく起用され、「Baby」はベビー用品だけでなく、家電や保険などの家族向けの広告にも起用されています。「Beast」は多様な広告で起用されており、企業のイメージキャラクターも動物であることが多いです。

ハロー効果をビジネスで活用しよう

ハロー効果とは、特徴のある目立つことに引っ張られて、他の部分の評価が歪められる心理現象です。ハロー効果には、プラス効果とマイナス効果があるため、使い方を考えてバランスよくビジネスに取り入れて効果を上げていきましょう。

その際に大切なことは、決して表面上だけで取り組むのではなく、顧客に対して真摯な気持ちでわかりやすく説明し情報を伝えることです。そうすることでより効果を上げられるでしょう。