日常から役を作るという点を詳しく聞いてみると、或人を演じていたとき帰り道にスキップしていたという愉快なエピソードが飛び出した。「元気があるときは駅から家までスキップで帰っていました。或人はスキップして帰ってそうだなと思って。元気が有り余ってまだ仕事ができるなという感じのときは、帰り道でも1個仕事をしたい、或人のために時間を使おうと思って。駅から家まで7分くらいずっとスキップするというのを1回やったんですけど、足がきつくて、半分くらいからやるようになりました」
そのスキップ姿をぜひ見たいが、撮影期間が終わったあと無意識のうちにスキップしてしまったこともあるそう。「或人を演じ終わって3、4カ月経っているのに、この間、音楽を聴いていたら無意識にスキップして帰っていて、すごく変な目で見られたのでやめました。僕とは気づかれていないですけど(笑)」
『劇場版 仮面ライダーゼロワン REAL×TIME』で約3カ月ぶりに或人を演じた際は、とても懐かしく感じたという。「現場の雰囲気も、スタッフさん一人ひとりも、懐かしいなと。自分が飛電或人を演じていることも懐かしく思いました。また、ちょっとでも成長した姿を見せなきゃなと思ってアドリブを入れてみたり、自分なりの或人をトライし、いろんなパターンを撮影させていただました」と振り返った。
最初は役が抜けてしまっていると感じたものの、感覚を取り戻すのに時間はかからず。「1年間演じてきたので染みついている部分があり、小さい火種を大きくするイメージで。或人の衣装を着て、髪型を作ってもらって、現場の人たちの顔を見て、素直に或人になれたらいいなと思ったので、変に作りこむというのをあえてしないで現場に入りました。実際、その場で感じ取ったものでできたのではないかなと思っています」と手ごたえを語った。
『先生を消す方程式。』で藤原刀矢役を演じていたときは、「1点に集中するというのをよくやっていた」と明かす。「10分くらい1点をずっと見ていると、そこの色が変わってくるんです。1個に集中することによって外部からの情報をシャットダウンする方法。たまたま電車で窓に映った自分をずっと見ていたら、自分が誰だかわからないという感覚になって、刀矢を演じるのにこれはいいなと思い、鏡でよくやっていました」
外部からの情報をシャットダウンしたときの感覚が「刀矢モード」だそう。「刀矢は自分がどうあるべきで、自分がどういう人なのか、理解しているようで何もわかっていなくて、それに悩んでいるのかなと。家で自分の素とは何なのか考えているんだろうなと思いました。鏡を見たときに一瞬だけ刀矢になる瞬間があり、そうやって刀矢に近づきながら、セリフを言ってみたりしていました」と説明した。
役に入り込みすぎて大変ではないかと心配になったが、「そうなんです」とやはりそうらしく、「或人だったら、闇落ちの時期はご飯が喉を通らなくてきつかったですね。自分以外の人類に対してムカついちゃうし、自分を正当化したくてたまらない感情が日常でも続いていたので」と吐露。
「刀矢のときは、常に自分がどこにいるかわからなかったです。刀矢は二面性を持っていましたが僕は、仕事モード、プライベートモードというように、パターン分けをしてるんです。刀矢を演じているときは自分が何なのかわからなくなって、自分が怖くなったりしました」と打ち明けた。