ビジネスの場面で相手との会話を円滑に進めるために使いたいのが、婉曲表現と呼ばれる方法です。正しく使うことができれば、どんな場面、どんな相手でも好印象を残すことができるでしょう。
本記事では「婉曲」の詳しい意味や読み方を解説。婉曲表現の具体例や使用時の注意点の他、類語、対義語、英語表現もまとめました。
「婉曲」の意味や由来、例文とは
「婉曲」には「遠回しな表現」「角の立たない言い回し」という意味があります。
また「婉曲表現」とする場合には、否定的な意味・直接的な意味を持つ言葉を「遠回しに表現すること」を指します。例えば、「死ぬ」を「三途の川を渡る」と言い換えることがこれにあたります。
日本で婉曲表現が浸透した背景、由来としては、「農耕文化」があったといわれています。なんでも、一緒に作業する人との人間関係の円滑化を図るために、婉曲表現が生まれたとか。昔から「和」を重んじてきた、日本人らしい背景ですね。
例文としては「せっかくの申し出だったが、婉曲に断っておいたよ」「彼女は常に婉曲な言い方をする」などのように使用します。
「婉曲」の読み方は「えんきょく」 - 「わんきょく」や「わいきょく」は間違い
「婉曲」の読み方は「えんきょく」です。
「婉(えん)」の字が「茶碗(ちゃわん)」の「碗(わん)」や、「腕力(わんりょく)」「腕(わん)」と似ているため、「わんきょく」と呼んでしまう人がいますが誤りです。
「婉(えん)」は、「穏やか」「ものやわらか」「しなやかで美しい」などの意味を持つ漢字です。音読みの「えん」の他に、訓読みでは「うつく(しい)」「しと(やか)」「したが(う)」と読みます。
また、「物事を歪めて曲げること」と言う意味の「歪曲(わいきょく)」と混同して「わいきょく」と読むのも間違いなので気を付けましょう。
婉曲表現を使う理由
婉曲表現は、相手の自尊心を傷つけないため、不愉快な思いをさせないため、といった理由で古くより用いられてきました。現代でも、円滑なコミュニケーションをとることを目的に、日常会話やビジネスシーンで頻繁に使われます。
相手との信頼関係を築く上でも、重要な技法になってきます。
婉曲表現の具体例をわかりやすく解説
婉曲表現に丁寧な意味合いを含ませるためには適切な使い方が重要です。しかし、使い方が正しくなければ、相手に不快感を与えてしまう可能性も……。
そこで、以下では婉曲表現を使用するシチュエーションと例を紹介します。
ケース1. 「できません」という直接表現を避ける場合
何か自分にできないことがあったり、断ったりしたいことがあった場合「できません」というのは直接的な表現になり印象がよくありません。
そのような場面では例えば「お見送りさせていただきます」や、「遠慮させていただきます」という婉曲表現を使いましょう。
ケース2. 「死」の直接表現を避ける場合
人の死に関する場面では、特に言葉を選ぶ必要があります。例えば、人が死んでしまった場合に「息を引き取った」や「逝去した」とするのが婉曲表現です。
なるべく「死」という言葉を使わないように注意が必要です。
もっと詳しく : 「死ぬ」の丁寧語は? - 知っておきたい敬語表現
婉曲表現を使う際の注意点
婉曲表現はただ使えばいいというものではありません。間違った使い方をしてしまうと、丁寧な言い方をしたかったのに逆効果になってしまうこともありえます。正しい方法で使うための注意点について紹介していくので、把握しておきましょう。
注意点1. 多用しない
婉曲表現をむやみやたらに乱用すると、かえって印象を悪くしてしまう可能性があります。
遠回しに伝えようとして、伝えたかったことがうまく伝わらずに円滑に話が進まないケースもあるでしょう。
注意点2. TPOに合わせた使い方が必要
はっきりした意見を求められたときに、遠回しな表現をしてしまうと不信感を抱かれてしまうこともあります。婉曲表現を用いる際には、TPOに応じた使い方を意識しましょう。
また、上司にお願いごとをするときは婉曲表現を使うのが好ましいですが、同僚に対しても同じだと、距離があるように感じられてしまうこともあるでしょう。
注意点3. メールでは特に注意
直接相手の表情や声のトーンがわからないメールでは、話し言葉よりも表現に気を使う必要があります。
特に、メールで婉曲表現を用いる際には、メールの受信者が「何度もメールを読み返せること」や「意味を間違って理解してしまう可能性があること」を意識しましょう。
もちろん丁寧な表現を心掛けることは必要ですが、相手が読みやすい文章に仕上げることも大切なポイントです。
「婉曲」の類義語・言い換え表現は「遠回し」など
「婉曲」という言葉の同義語として、「遠回し」「間接的」「差し障りない」などが挙げられます。
これらの言葉には「はっきりと物事を伝えず核心を濁す」といった意味があります。
「婉曲」の対義語は「露骨」など
「婉曲」という言葉の対義語として、「露骨」が挙げられます。
この言葉には、「感情や意図を隠さずに表現する」といった意味があります。ビジネスシーンにおいてこのような表現をすることは、印象を悪くすることにつながります。特に、否定的な意見や断りの返事をするときには注意が必要です。
また、「直接的」「ストレート」なども対義語と言えるでしょう。
英語での婉曲表現は?
英語での婉曲表現の例としては、死を「die」ではなく「pass away」と表現したり、背が低いことを「short」でなく「vertically challenged」と表現したりするようなケースが挙げられます。
「婉曲」の意味や「婉曲表現」とは何かを理解しよう
「婉曲」とは遠回しな表現のことで、直接的に言うのに比べて角が立たないようにするという狙いがあります。
婉曲表現は、日常においてもビジネスにおいても大事な表現方法になります。身に着けておけば相手に好印象を与えることができるので、円滑に仕事を進めることができるでしょう。
「婉曲」「婉曲表現」の正しい意味と使い方をきちんと把握し、相手も自分も心地よく仕事ができるようにしましょう。