トヨタ自動車は自動運転の電気自動車(EV)「e-Palette」(イーパレット)の開発を加速させる。まずは2021年の東京オリンピック・パラリンピックで選手村の移動手段として活用し、2020年代前半には複数のエリア・地域で商用化を目指す方針。富士山の裾野に建設する実証都市「ウーブンシティ」(Woven City)でもe-Paletteを実際に走らせ、開発を進める計画だ。

  • トヨタが開発している「e-Palette」

    トヨタが開発している「e-Palette」。自動運転のEVで、ヒトやモノを載せて移動できるほか、移動店舗のような使い方も想定している

2021オリンピックでサービス開始?

e-Paletteはトヨタが開発している新しいモビリティだ。2018年1月の「CES」で初公開し、2019年の東京モーターショーでは「東京2020オリンピック・パラリンピック仕様」を発表していた。オリンピック仕様のスペックによると、ボディサイズは全長5,255mm、全幅2,065mm、全高2,760mm、ホイールベース(前後タイヤ間の距離)4,000mm。乗員はオペレーター1人を含む20人で、車いすの場合は4人+立ち乗り7人まで乗れるという。EVとして気になる航続距離は150キロ程度。最高速度は時速19キロだ。

トヨタはこのほど、e-Paletteに関するオンライン発表会を開催。同社コネクティッドカンパニーでプレジデントを務める山本圭司さんがe-Paletteの現状と今後について説明した。

  • トヨタが開発している「e-Palette」

    オリンピックの延期により、選手村での活用が決まっていた「e-Palette」の現状についての問い合わせが増えていたそうだ

e-Paletteの運行に向け、トヨタでは「AMMS」(Autonomous Mobility Management System)と「e-TAP」(e-Palette Task Assignment Platform)という2つのシステムを開発した。

AMMSは「究極の“ジャスト・イン・タイムモビリティ”」を目指し、必要な時に、必要な場所へ、必要な台数だけe-Paletteを配車するシステムだ。e-paletteは事前の計画をもとに自動運行を行うが、AMMSは乗車を待つ客が増えれば計画を修正し、追加の車両を投入。追加車両の投入による運行間隔のばらつきを防止し、等間隔での運行を維持する。異常・故障の発生した車両は自動で検知して車庫に回送させたうえ、代替車両を即座に投入。緊急時には遠隔で車両を停止させる。ジャスト・イン・タイムはトヨタ生産方式(TPS)の看板ともいえる概念である。

「e-TAP」はTPSにおける自働化の考え方に基づいた「目で見る管理」だ。車両やスタッフの異常を見える化し、車両1台をスタッフ1人が常時監視するのではなく、1人で複数台を管理することを可能とする。搭乗員や保守スタッフなどには次の作業を自動で指示し、作業の進捗状況を見える化することで、状況に応じたタスク管理を実施する。

  • トヨタが開発している「e-Palette」

    ジャスト・イン・タイムの運行を少ない人数で実現するため、トヨタでは「e-palette」のシステム作りを進めている

e-paletteのサービス開始は2021年のオリンピックとなる予定。2021年2月の着工を計画する「ウーブンシティ」でも実際に車両を走らせつつ、e-paletteを使ったサービスの在り方を含め開発を進めていく。2020年代前半には複数の地域・エリアで実用化したい意向だ。山本さんによればe-paletteには多方面から多くの引き合いがきているそうで、現在はサービス事業者や地方自治体などと議論を進めているという。新型コロナウイルスの感染拡大によるものと思われるが、最近では医療機関からの問い合わせも増えているそう。ヒトやモノを運ぶだけでなく、移動するサービス拠点としての活用も可能なe-paletteであるだけに、医療機関を含め、使い方のアイデアは今後も増えていくだろう。