――それだけ、周囲の方たちが山口さんと倫太郎を同一視し、自然な雰囲気で演技されていることがうかがえますね。

そうだと思います。よくスタッフの方たちからは「思いっきり"芝居"しないほうが倫太郎らしいね」なんて言われることがあります。

――序盤のエピソードの中で、特に大変だった出来事があれば教えてください。

第6章で敵のズオスに対してなすすべもなかったブレイズ/倫太郎が、第7章で鍛錬を重ねて三冊のワンダーライドブックを使いこなせるようになるまでの一連の流れですね。第5、6章の上堀内佳寿也監督から、第7、8章の石田秀範監督に交代したことで、倫太郎に求められるものが少々変わって、自分が演じる中でそのあたりを"調整"するのが大変でした。僕は連続テレビドラマに携わるのが初めてなので、回によって「監督が代わる」という経験を初めてしました。監督が代われば現場の雰囲気や指示されることも少しずつ違ってきますので、その場その場で言われたことに対応できる"瞬発力"が大事なんだなって思うようになりました。

――石田監督は『仮面ライダークウガ』(2000年)からずっと仮面ライダーシリーズの監督として手腕をふるわれてきましたし、柴崎監督や上堀内監督のお師匠でもあります。現場では、どんな印象を持たれましたか?

現場に入る前に"石田監督は怖いぞ"なんて聞かされていましたが、実際にお会いしたら怖いイメージはありませんでした。キャリアが深い・浅いに関係なく、役者が思いっきり演技をすれば、それについてしっかりと評価をしてくださる方だと思いました。芝居について、特に何をしろとか強い指示をされることがなかったんです。第7章で倫太郎がリベラシオン(修練場)の中で鍛錬を行っているシーンでも、最初は立ち上がりながら"閉じていた目をゆっくり開けていく"演技をするところ、師匠(先代水の剣士・長嶺謙信/演:三上真史)への想いをこめていたら目を開けるのを忘れてしまい、目を閉じたまま立ち上がっていました。気持ちが先行して、予定にない芝居をしてしまったのですが、石田監督は「それでOKだ!」と言ってくださったんです。そのとき、役者が本気でぶつかれば、本気で当たってきてくれる熱い監督だ、と実感しました。

――第9、10章はハードなアクション演出を得意とされる坂本浩一監督ですから、山口さんもアクションの洗礼を受けたのではないですか。

そうですね。直前の石田組(第7、8章)ではどちらかというとドラマ重視の演出をしていただいた印象ですが、坂本組の第9章では僕や内藤くん、青木瞭(仮面ライダーエスパーダ/富加宮賢人役)くんがメギドと戦うスピーディなアクションカットがあって、すごく刺激になりました。あそこまで激しい立ち回りは初めてでしたから、みんなで一生懸命に練習して臨みました。メギドの攻撃を素早く交わしながら、ソードライバーから「水勢剣流水」を抜く変身シーンは、すごく迫力があったと思います。でも、現場でもっともカッコよかったのは、坂本監督が見せてくださった剣の"素振り"でしたね。"お手本"がいちばん上手くてカッコいいんですから、内藤くん、青木くんと一緒に「勝てないなあ」って言ってました(笑)。

立ち回りは3人とメギドたちが同時に動きますから、僕がひとつ間違えたらぜんぶ最初からやり直しになってしまうので、本番中は「間違えたらどうしよう、メギドの方々にも迷惑をかけてしまったらどうしよう」と、内心ハラハラしながら臨んでいました。でも、そんな僕を見て、仮面ライダーブレイズを演じる永徳さんが「山口くんがしっかり芝居をしていれば大丈夫、うまくいくよ」と励ましてくださったんです。永徳さんの言葉を聞いたとき、ブレイズ/倫太郎という役は僕たち2人で作り上げているんだなあって、しみじみ思いました。

――いわゆる"変身後"のブレイズがアクションするシーンに、山口さんが立ち会ったりすることはありますか。

スケジュールの都合もありますが、可能な限り永徳さんの演じるブレイズの動きは現場で見るようにしています。ただ見ているだけでは細かな動きがわかりにくいかな、と思ったときは、動画撮影をして分析することもあります。リハーサルのときは、マスクを被っていない状態の永徳さんがかけ声やセリフを発していますので、声の出し方、演技の仕方などをよく観察した上で、アフレコに臨んでいます。変身前と変身後との"一体感"が出せるよう、できることはやっておきたいですから。