豊島竜王は3勝2敗、斎藤八段は4勝1敗の成績に。2敗は4人の混戦ムード

第79期A級順位戦(主催:毎日新聞社・朝日新聞社)の5回戦、▲豊島将之竜王(2勝2敗)-△斎藤慎太郎八段(4勝0敗)戦が12月9日に関西将棋会館で行われました。ここまで4戦全勝の斎藤八段が連勝を伸ばすのか。それとも豊島竜王が2敗を維持して挑戦権争いに踏み止まるのか。注目の一戦は、147手で豊島竜王が勝利。A級初参加の斎藤八段に対して、前名人の豊島竜王が意地を見せました。

角換わりの将棋となった本局。後手の斎藤八段は一度△4二玉と上がった玉を、△5一玉~△6二玉~△7二玉と逆サイドへ移動させて右玉に組みました。対する豊島竜王も銀を繰り替えて仕掛けのタイミングをうかがう、じりじりとした展開になりました。

豊島竜王側から仕掛けるのかと思いきや、斎藤八段が先に桂を跳ねて仕掛けていきます。しかし、そこから本格的な戦いにはなかなか至りません。豊島竜王は隙を生まないように自陣の駒を動かして、戦いに備えます。斎藤八段は再び玉の移動を開始。7二の玉が今度は△6二玉~△5三玉~△4二玉と大移動。紆余曲折を経て、結局元々上がった4二の地点に玉が戻ってきました。

斎藤八段の△5三玉を見て、ついに豊島竜王が仕掛けていきます。駒損ながら相手玉を露出させる猛攻です。玉を丸裸にされた斎藤八段ですが、蓄えた駒を生かして反撃に出ます。

難解な形勢が長く続いた本局ですが、斎藤八段の攻めに対して、正確な対応をみせた豊島竜王が次第にリードを奪っていきます。豊島玉を寄せるだけなら厳しい手段は多くあるものの、自玉が不安定極まりないため、斎藤八段は駒を渡せないという制約がある局面。そこを的確に突いて、相手玉ではなく相手の攻め駒を狙いにいった豊島竜王の組み立てが見事でした。

苦境に陥っても、斎藤八段は自陣に金銀を打ち付けて粘ります。しかし、豊島竜王の指し手は正確無比。最後は自玉を敵陣に逃がした後に、相手玉へ遠見の角で王手をかけて勝負あり。相手玉を攻めつつ、自玉への脅威を軽減する一石二鳥の一手でした。この手を見た斎藤八段はまだ指し続けることはできたものの、潔く投了を告げました。

挑戦権争いのライバルを下して、大きな一勝を手にした豊島竜王。これでリーグ成績を3勝2敗としました。首位の斎藤八段とは星1つ差です。

敗れた斎藤八段は全勝がストップして4勝1敗に。依然挑戦へは自力ですが、4勝2敗の広瀬八段、3勝2敗の豊島竜王、佐藤康光九段、糸谷哲郎八段がすぐ後ろに控えています。挑戦権争いは混戦模様になってきました。

渡辺明名人へのリターンマッチに望みをつないだ豊島竜王(写真は名人戦第3局のもの)【提供:日本将棋連盟】
渡辺明名人へのリターンマッチに望みをつないだ豊島竜王(写真は名人戦第3局のもの)【提供:日本将棋連盟】