豊島竜王はここまで2勝2敗。挑戦権争いに踏み止まれるかの正念場

第79期A級順位戦(主催:毎日新聞社・朝日新聞社)の5回戦、▲豊島将之竜王(2勝2敗)-△斎藤慎太郎八段(4勝0敗)戦が12月9日に関西将棋会館で行われています。A級初参加ながらここまで全勝の斎藤八段が、全9回戦のリーグを負けなしで折り返すのか。それとも前名人の豊島竜王が挑戦権争いに踏み止まるのか。注目の一戦です。

斎藤八段は1993年4月生まれの27歳。2012年4月に四段に昇段すると、初参加の第71期順位戦C級2組で9勝1敗の成績を挙げ、いきなり昇級を果たします。その後は第74期C級1組で9勝1敗、第75期B級2組でも9勝1敗で連続昇級。そして前期の第78期B級1組で9勝3敗の成績を残して、A級へ昇級しました。

初参戦のA級では、ここまで糸谷哲郎八段、広瀬章人八段、菅井竜也八段、羽生善治九段を破っていて、唯一の無敗で現在首位。斎藤八段を追う2番手集団は、4勝2敗の広瀬八段、3勝2敗の佐藤康光九段、糸谷八段、そして2勝2敗の豊島竜王となっています。彼らと星の差2つを付けている斎藤八段は、本局に勝利すれば挑戦権争いでかなり優位に立つことができると言えそうです。

ここ数年、B級1組から昇級してきた勢いそのままに、名人への挑戦者になる例が目立ちます。過去5期で佐藤天彦八段(74期)、稲葉陽八段(75期)、渡辺明三冠(78期)と、3人も挑戦権を勝ち取っているのです。佐藤天九段、渡辺名人はさらに名人奪取も果たしています。斎藤八段もこの流れに乗じて、彼らに続くことができるでしょうか。

一方、前期名人戦で渡辺二冠に2勝4敗で名人位を奪われてしまった豊島竜王は、ここまで2勝2敗。稲葉八段、佐藤天九段には勝利したものの、菅井八段、糸谷八段には敗れています。

豊島竜王が本局で斎藤八段を破れば、星1つ差にまで縮めることができ、挑戦権争いは混沌としてきます。しかし、負けてしまうと星の差3つ。たとえ自身が残りの対局を全勝しても、最低でも斎藤八段に1勝3敗の成績を期待しないといけません。その他に2敗勢も多くいるため、挑戦は現実的ではなくなってしまうでしょう。

お互いにとって大きな意味を持つ本局の戦型は、角換わりとなりました。先手の豊島竜王が腰掛け銀に組むと、後手の斎藤八段は4二に上がっていた玉を△5一玉~△6二玉~△7二玉と逆サイドへと移動。右玉に組み直し、千日手歓迎の構えを見せています。

先手の豊島竜王としては千日手では当然不満。よって、自陣を万全の状態にしてから、積極的に仕掛けていく展開が予想されます。右玉に組んだ斎藤陣は、自ら仕掛けていくには不向きな陣形。先手が仕掛けてくるまではじっと待機し、あわよくば千日手、攻めてこられたらカウンター狙いという構想でしょう。

持ち時間が6時間の本局は、日付が変わる前後での決着が予想されます。

ここまで全勝の斎藤八段。全勝ターンでリーグ後半戦に向かえるか
ここまで全勝の斎藤八段。全勝ターンでリーグ後半戦に向かえるか