2015年12月2日、20歳の誕生日に1stシングル「夢のつぼみ」で歌手としてのキャリアをスタートさせた水瀬いのりが、アーティストデビュー5周年を迎えた2020年12月5日、自身初のオンラインライブ「InoriMinase 5th ANNIVERSARY LIVE Starry Wishes」を開催した。

会場は、今年残念ながら中止となってしまったライブツアーのファイナル公演を行う予定だった横浜アリーナ。5年間の集大成、そして6年目のスタートを切った記念すべきライブの模様を紹介しよう。

開演時間の19時、ライブの空間をイメージして制作された「僕らは今」に乗せ、5年間を振り返るオープニングムービーが流れる。そして、画面いっぱいにミラーボールの光が溢れ、デビュー曲「夢のつぼみ」のきらめくイントロが奏でられると、観客のいない横浜アリーナの中央に水瀬いのりの姿が。LEDライトによって様々に色を変えるセンターステージの上、画面の向こう側にいるファン一人一人に届けるように、弾ける笑顔で “行くよまだまだまだ”と力強く歌い上げる。今回のライブ衣装は、いずれも水瀬のイメージカラーである水色や青を基調としたデザインとなっており、1着目はラメが輝く水色とシルバーのジャケット&ショートパンツという、キュートで軽やかな出で立ちに。歌い終わるとすぐにトロッコに乗り込み、いつもライブを支えてくれる「いのりバンド」が待つステージへと向かっていく。

「配信をご覧の皆さんも一緒にタオル回しましょう!」そう叫んで、早くもライブには欠かせない定番曲「Ready Steady Go!」へ突入。タオルを振り回し声を張り上げ、ステージ、そして観客の熱気を一気に高めていく。続いて演奏されたのは、自身のラジオ番組『水瀬いのり MELODY FLAG』(文化放送)のテーマソングにもなっている「MELODY FLAG」。“約束の時間ここで待ち合わせ”という歌詞の通り、オンラインながらもこうしてライブという場所で再開できた喜びを歌っていた。

改めて「InoriMinase 5th ANNIVERSARY LIVE Starry Wishesへようこそ!」と開会宣言。「今年2020年はアーティスト活動5周年を迎えるアニバーサリーイヤーということで、このような形ではありますが、皆さんにライブをお届けできました。今日ご覧の皆さんは、自宅だったり、自分の生活の中にライブを取り込んでご覧になってくれていると思います。いろいろ忙しい中で、ご予定を空けてこの配信を見てくださって本当にありがとうございます」と、観客への感謝を伝え、「横浜アリーナは単独で立たせていただくのは初めてで、本当に広くてドキドキしているのですが、今日はこの配信ライブで、自分が今まで5年間やってきた素敵なものをみんなに見せられるように、頑張りたいと思います!」と意気込みを語った。

すっかりおなじみとなったバンドメンバーを紹介した後は、同じくラジオ繋がりで、初代のエンディングテーマである「笑顔が似合う日」へ。1stシングルに収録されているこの楽曲は、実はアーティストとして初めて、「夢のつぼみ」よりも早くレコーディングした思い出深い1曲とのこと。「時の流れも感じていただきながら聞いてください」と話し、ステージ2階へと移動。巨大なLEDスクリーンには何気ない日々の風景が映し出され、水瀬が歩き出すのに合わせて景色がだんだんと流れていく。まるでイラストの世界に入り込んだかのうような演出で、“笑顔が似合う日”を音楽と映像とで鮮やかに表現する。続く「Wonder Caravan!」では、星をテーマにしたステージの中央、背景から足元へと続くLEDスクリーンの上で、温もり溢れる歌声を届ける。間奏ではバンドメンバーの方を振り返り、楽隊を率いる指揮者のようなポーズを見せる場面もあった。

優しいピアノソロから始まる「春空」では、カラフルな花をあしらい「心はプリンセス気分」というボリューミーな水色のドレス姿にチェンジして登場。あたたかな春への希望を高らかに歌い、続いて「アイマイモコ」では、伸びやかなファルセットを織り交ぜながら、恋する女の子の淡い想いをキュートに表現する。

「アーティストとしては5年、声優としては10年、生まれてきてからは25年ということで、自分にとって今までを見つめ直したり、これからのことを考えたりする、そんな2020年でした」と、活動を振り返り、声優としてだけでなく、アーティストとしても作品に関わることは一つの夢だったと話す。たくさんの想いの詰まったアニメ主題歌の中から、次に披露されたのは、TVアニメ『ソマリと森の神様』エンディングテーマ「ココロソマリ」。家族や大切な人への深い愛をテーマに自ら書いた詞を、情感を込めて優しく歌い上げた。続く「harmony ribbon」では、ステージのLEDスクリーンにカラフルなリボンが舞う。「皆さんも一緒に歌ってください!」と水瀬が画面の向こうの観客にマイクを向ければ、たくさんの「ララララ〜♪」というシンガロングが聴こえてくるようだ。

一旦舞台を去った水瀬が、星座や月がデザインされた夜空色のワンピースを纏い、ステージ2階に登場。スクリーンと連動し、大きな羽が生えたような姿で「TRUST IN ETERNITY」を力強く熱唱する。これまでのやわらかな雰囲気からは一変、ここからは疾走感溢れるナンバーを立て続けに繰り出していく。赤や紫のライトが印象的な「Million Futures」では、観客に掛け声を求め、笑顔でOK!とサインをするシーンも。

MCでは、今回の5周年ライブのテーマとなった“星”について、星マークの先端が“5”つあることや、自身の楽曲の中に星をモチーフとしたものが多く、気付いたらそばにある存在だったことを話す。そして、タイトルの「Starry Wishes」と聴いて思い出すのはもちろん、初めてのアニメタイアップとなった「Starry Wish」。「たくさんの人に私の音楽を知っていただけた、キーになる1曲なんじゃないかなと思います」と言って、自身にとって思い出深い1曲を、凛とした歌声で紡いでいく。束の間の静寂の後、繊細なピアノのイントロが奏でられ、披露されたのは6分を超える壮大なバラード「BLUE COMPASS」。まるで深い海の底にいるかのような演出の中、一音一音を噛み締めながら、丁寧に歌い繋ぐ。

「離れていても、星を見上げた時、同じ空を見ているんだよということを伝えたいですし、私自身も寂しくなった時や辛くなった時に俯くんじゃなくて、星を見て勇気をもらって今日まで頑張ってこれたので、そんな思いを皆さんに届けられたら嬉しいなと思います。みんなで一緒に星空を作ってくれると嬉しいです」

そう言って本編ラストに披露されたのは、デビュー5周年記念日である12月2日にリリースしたばかりの新曲「Starlight Museum」。自身も作詞に参加し、これまでの感謝とこれから先の未来を綴ったこの楽曲。横浜アリーナに浮かぶたくさんの星々のもと、応援してくれる全ての人に“ありがとう、好きだよ!”と伝えるように、5年間の集大成となるハーモニーを美しく響かせた。

本来のライブさながらにここからはアンコールゾーンとしての演出となり、画面の向こうの熱い“いのりん”コールに応えるように、ライブTシャツに着替えて水瀬が再登場。「皆さん、まだまだ一緒に歌いましょう!この曲はみんなと私の歌です!」と高らかに叫んで、自身初めての作詞曲「Catch the Rainbow!」を歌唱。虹色のテープが舞い、溢れんばかりの笑顔で観客にアピール、画面内がハッピーなムードでいっぱいになる。

そして、このライブのスタート地点であるセンターステージに戻る。横浜アリーナという自身最大規模のステージは、5年前には想像もできなかった景色。「この横浜アリーナで歌を歌わせていただいてることが、とても感慨深くて。皆さんと一緒に頑張って歩み続けたら、こんな素敵なステージに巡り合うことができました」と話し、瞳を潤ませる。

「アーティスト活動をしていく中で、プラスな気持ちもマイナスな気持ちもいっぱいあって、そんな時にいつもそばにいてくれた大切な人たちへ想いを込めて、今日はこのステージに立つという気持ちで会場まで来ました。出会った日や応援してくれた月日は関係なく、わたしを支えてくれている人たちみんなに、わたしの歌をこれからも届けていきたいなと思います。この横浜アリーナで次はみんなに囲まれながら歌えるその日を願って、ここにわたしの歌を、わたしだけの花を咲かせたいと思います!」

そう言って最後に贈られた曲は「Innocent flower」。デビュー当時“まだ小さなつぼみ”だった少女は、“振り返ればどんな時もひとりぼっちじゃなかったと知るよ”という歌詞の通り、ファンを始め様々な人に支えられ、この5年間成長し続けてきた。そして花びらのシャワーが降る中、溢れる涙を拭いながらも「これからも宜しくお願いします!」と伝えた力強いその言葉には、永遠に続くいのりが込められていた。

「初めてのオンラインライブで、離れているからこそみんなの応援が恋しいなぁという時がありましたが、私からみんなにできること、そしてこれからもこんなことをしていきたい!という想いをたくさん込めたライブになったと思います。次に会えた時には思いきり全力で歌を歌いましょう。今日は本当にありがとうございました!」と改めて応援してくれるファンへ心からの感謝を伝え、この日のステージは幕を閉じた。

そしてライブ終了後には、オフィシャルファンクラブ「いのりまち」会員限定にて、アフタートークの生配信が実施された。ゲストとして、長年水瀬の活動を見守ってきた親友である声優・大西沙織が登場。事前収録だったライブの配信を、実はファンと同じくリアルタイムで見ていたという二人。改めてライブの感想を尋ねられた水瀬は、まるで本当に観客がいるかのように目を合わせたり指を差したりしていた様子に、「あの瞬間はファンのみんなが見えていたんだと思う。本当に『届いている!』と思って、自然としていた」と振り返っていた。また、アーティスト水瀬いのりの“5年来のファン“である大西が、水瀬を知り尽くした彼女ならではの感動ポイントなどを熱く語る場面も。

さらに、12月2日に誕生日を迎えたばかりの水瀬のために、「誕生日プレゼント争奪 シンクロクイズ」のコーナーも実施。二人で答えを合わせるこのクイズ、「初めて会ったときの印象」や「大西沙織が1番好きな水瀬いのりの楽曲」など、仲の良さが試される企画に苦戦しながらも、無事プレゼントをゲットした。ライブ本編とはまた異なる雰囲気の、和やかな笑いのあふれるトークが繰り広げられ、大盛り上がりの中この日の全工程が終了した。

ライブの中では、来年2月21日にオンラインファンクラブイベント「いのりまち町民集会」が開催されることも発表。オンラインという形式ではあるが、今回のライブのように、離れていても繋がれるイベントにしたいということなので、こちらも楽しみにしておきたい。

アーティストデビューからの5年間、楽しいことも辛いことも経て出会ってきたたくさんの光が、横浜アリーナに美しい星空を作り上げた。そして、これから水瀬いのりがファンとともに歩んでいく未来には、きっともっと輝く景色が広がっていることだろう。6年目以降の彼女の活動にも期待を抱かずにはいられない、そんなアニバーサリーライブとなった。

なお、本ライブは、12月12日(土)23:59までアーカイブ配信が実施されるので、こちらもチェックしておきたい。各詳細は公式サイトにて。

●「InoriMinase 5th ANNIVERSARY LIVE Starry Wishes」セットリスト

<OPENING MOVIE>
M-01. 夢のつぼみ
M-02. Ready Steady Go!
M-03. MELODY FLAG
M-04. 笑顔が似合う日
M-05. Wonder Caravan!
M-06. 春空
M-07. アイマイモコ
M-08.ココロソマリ
M-09. harmony ribbon
M-10. TRUST IN ETERNITY
M-11. Million Futures
M-12. Starry Wish
M-13. BLUE COMPASS
M-14. Starlight Museum
<ENCORE>
EN-01. Catch the Rainbow!
EN-02. Innocent flower

(写真:加藤アラタ)