ヴィーガン(ビーガン)という言葉をあなたは聞いたことがありますか?

海外セレブが取り組んでいたり、お洒落なレストランでヴィーガンメニューが扱われていたりと、なんとなく言葉は聞いたことがある方は多いかと思います。2020年の第92回アカデミー賞授賞式において「提供される料理をすべてヴィーガンフードにする」と発表されたことも記憶に新しいです。

そもそも、ヴィーガンとはどういう意味なのでしょうか? また、混同されてしまいがちな「ベジタリアン」との違いは何なのでしょうか? 本記事では、ヴィーガンについての基礎知識やメリット、ベジタリアンとの違いなどをご紹介します。

  • ヴィーガンとは?

    ヴィーガンの基礎知識について解説します

ヴィーガン(ビーガン)とは?

ヴィーガンとは、“徹底した”菜食主義(あるいは菜食主義者)のことで、「完全菜食主義者」と訳されることもあります。肉や魚に加えて、卵・乳製品などの動物由来の食材を摂取しないという特徴があります。

最近では芸能人や海外セレブなどがヴィーガンを取り入れ始め、SNSなどでも積極的に発信していることから、名前だけでも耳にしたことがあるという方も多いのではないでしょうか。

ヴィーガンの定義

英国ビーガン協会によると、ヴィーガンの定義とは「可能な限り食べ物・衣服・その他の目的のために動物の搾取を取り入れないようにする生き方」となっています。ヴィーガンという言葉は1944年のイギリスで生まれ、今では多くの人に取り入れられるようになってきました。

道徳的な観点から同じ生物である動物の商品化を否定し、動物の搾取を避けたライフスタイルとして浸透していったものですが、近年では、道徳的観点に加えて、環境保護の観点からも注目されています。

ヴィーガンとベジタリアンとの違い

ヴィーガンとベジタリアンの違いは卵や乳製品などの動物性食品を食べるか否かにあります。動物の商品化を避けるヴィーガンでは、動物性食品である卵やバター、はちみつなども食べることはありません。

種類によって細かな違いはありますが、ベジタリアン(菜食主義者)が口にしないのは肉や魚、それらの含有物だけであり、牛乳などの動物性食品は通常の食生活と同じように取り入れることができます。

そもそもヴィーガンとはベジタリアンの一種です。菜食主義であるベジタリアンの中でも「完全に」動物由来のものを口にしないのがヴィーガンであると覚えておくのがいいでしょう。

ヴィーガンとベジタリアンの歴史

ベジタリアンという言葉が誕生したのは、19世紀に入ってからだと言われています。ベジタリアンとはラテン語で「生き生きとしている」「健康な」という意味を持つ「vegetus」という言葉を語源として生まれました。語感が似ていることから「ベジタブル」から派生したものと思われがちですが、実は違うのです。

その後、ベジタリアンの中でも道徳的観念から完全に動物性のものを避けるという主義を持った人が「ヴィーガン」と自称するようになり、1944年にはヴィーガン協会も設立されました。

ベジタリアンの種類

ベジタリアンにも主義により、さまざまな種類があります。

  • ポーヨー・ベジタリアン
    卵・乳製品・魚介類・鶏肉・植物性食品を食べる。鶏肉以外の肉類は食べない。

  • ぺスコ・ベジタリアン
    卵・乳製品・魚介類・植物性食品を食べる。肉類は食べない。

  • オボラクトベジタリアン
    卵・乳製品・植物性食品を食べる。肉・魚介類は食べない。

  • ラクトベジタリアン
    乳製品・植物性食品を食べる。肉・魚介類・卵は食べない。

  • オボベジタリアン
    卵・植物性食品を食べる。肉・魚介類・乳製品は食べない。

  • ヴィーガン
    植物性食品のみを食べる。肉・魚介類・卵・乳製品・動物由来の食品は一切食べない。

「ベジタリアン」と一括りにされていた頃も含めるとおよそ200年の歴史を持つヴィーガンですが、2010年に入ってからはさらに広く受け入れられるようになりました。2016年の調査ではアメリカ人の6% がヴィーガンであると答えており、他の国でも年々その割合は増えているようです。

エシカル・ヴィーガンとは

エシカル・ヴィーガンとは食べ物だけではなく、普段の生活からも動物性由来のものを避ける生活を送る人のことを指します。ヴィーガンのすべての命を尊重するという考え方から、レザーや毛皮、動物性のニットなども使用しません。衣類だけではなく身の回りの小物や化粧品、動物実験をしているさまざまな製品も避けています。近年は革製品もヴィーガンレザー(エシカルレザー)など新たな素材が開発されています。

また、食生活でのみヴィーガンの主義を取り入れる人もいて、そういった人を「ダイエタリー・ヴィーガン」と呼ぶこともあります。

  • ヴィーガンとは?

    菜食主義であるベジタリアンとは違い、ヴィーガンでは乳製品も口にしません

ヴィーガンのメリット

ヴィーガンは道徳的思想だけではなく、宗教的観念や健康上の理由から取り入れる人も多くいます。では、ヴィーガンの食生活を送ることによってどのようなメリットが得られるのでしょうか。期待できる効果をご紹介します。

ダイエット効果

肉や魚、バターなどの動物性食品を避けると、自然と脂質の摂取も控えることになります。このような生活を続けることにより体重も落ちるのでダイエットのような効果を見込むことができるでしょう。

便秘解消

便秘の原因は複数ありますが、一般的に多い便秘の原因としては食物繊維不足が挙げられます。ヴィーガン食では野菜や豆、きのこなど食物繊維が豊富に含まれているものを中心に摂ることになります。そのため、腸内環境の改善が期待できます。

  • ヴィーガンのメリット

    ヴィーガン食によって健康的な生活を手に入れられるかもしれません

ヴィーガンのデメリット

ヴィーガン食では、工夫をしないと栄養面の偏りが生じてしまいがちです。脂質やタンパク質を摂取するのが難しいことから発生するデメリットもあります。次はヴィーガンのデメリットをご紹介します。

タンパク質が不足する

ヴィーガンでは肉や魚などを食べることができないため、タンパク質が不足してしまいがちです。タンパク質は人間の体を作るのに大切な栄養素であるため、タンパク質が不足すると代謝が低下したり、肌荒れやガサガサ肌を招いてしまったりする可能性があります。

そのため、ヴィーガンでは積極的に豆類などでタンパク質を補ったり、アボカドなどから良質な油をとったりすることが重要です。最近では大豆ミートなど肉と同じような感覚で食べられるヴィーガンフードもあります。

体調を崩しやすい

生活習慣をガラリと変えると、それまでの食事とは摂れる栄養素が異なるほか、ストレスなども要因となり、体調を崩してしまうこともあるようです。偏った知識のままにヴィーガンの生活を続けていると、貧血やめまい、骨粗しょう症など重大な疾患につながってしまいかねません。

ヴィーガンを始める場合には、必要な栄養素をしっかりと理解し、栄養バランスの整った食生活を送れるようにしましょう。

  • ヴィーガンのデメリット

    ヴィーガンは「偏食」であることを念頭に置き、栄養バランスに気をつけましょう

ヴィーガンを始めたいと思ったら

最近では日本でも取り入れる人が増えてきたヴィーガンですが、ヴィーガンを始めたいと思ったら、どのようなことから行えばいいのでしょうか。

精進料理はヴィーガンだった?

そもそも古代日本では肉類を食べることが少なく、雑穀を中心とした自給自足の菜食主義でした。さらに、仏教の僧侶が修行期間に食する精進料理は、動物の殺生を避け、植物性食品のみを使用することが許されています。

海外で浸透しつつある考え方と聞くと自分から遠いもののように思いがちですが、実はヴィーガンは日本人のルーツに近い食生活でもあるのです。

まずは短期間から始めてみよう

とはいえ、ある日から突然ヴィーガン食を始めるのは大変です。肉体的にも負担の大きいものとなるでしょう。ヴィーガンを始める場合は、「まずは数日から」や「月曜日はヴィーガン食」「肉類を豆類に置き換えてみる」など小さな目標を定めて少しずつ体を慣れさせていきましょう。段階的に取り入れることで体への負担も少なく、長く続けていくことができます。

ヴィーガンメニューやヴィーガン製品も

肉魚だけではなく、卵やバター、はちみつなども口にできないとなると、精神面でもハードルが高そうですよね。しかし今では動物性食品を使わないヴィーガン食品が多くあります。大豆ミートやヴィーガンチョコレートやヴィーガンバターを取り入れれば、ヴィーガンでもお肉やお菓子の味を楽しむことができそうです。

最近ではヴィーガンメニューが用意されたレストランやカフェショップなども増えてきています。コーヒーチェーンのドトールでも、大豆ミートを使用したサンドが用意されておりますし、友人との食事でも気兼ねなく楽しむことができます。ヴィーガン製品を取り入れて、自分の心にも無理なくヴィーガン生活を送りましょう。

  • ヴィーガンをはじめたいと思ったら

    ヴィーガン製品を取り入れれば、さまざまなメニューを楽しめます


肉や卵などの動物性食品を徹底して避けるヴィーガン。便秘解消やダイエット、道徳的にも意義のあることですが、生活に取り入れる際にはしっかりと栄養バランスを考えることが重要です。ヴィーガンを始めたいと思ったら、少しずつ取り入れつつ体を慣れさせて、ヴィーガンフードなども使って無理なく行いましょう。