生活保護の受給を考えていて、実際に受けることになった場合のデメリットはとても気になりますね。また、生活保護に対する誤解があるせいで、受給できるかもしれないのに最初からあきらめてしまっている人もいるかもしれません。

本記事では、生活保護のデメリットとメリットを紹介し、よく誤解されがちな事例について解説いたします。

  • 生活保護受給のデメリットは? ありがちな誤解についても解説

    生活保護受給のデメリットは? ありがちな誤解についても解説

生活保護受給のデメリットは?

生活保護を受けると、次のようなデメリットがあります。

  • 年に数回、福祉事務所のケースワーカーによる家庭訪問がある
  • 毎月、収入状況を申告しなければならない
  • 親族に扶養照会が入り、生活保護を受けていることが知られる
  • ローンを組むことができない
  • 新しくクレジットカードをつくれない
  • 車やブランド品などの贅沢品は持てない (※車は持つことができるケースもあります)

特に注意したいのがローンを組めないことです。クレジットカードも一時的にお金を借りて買い物をして後払いで返済する形なのでローンと同じですね。生活保護でローンが組めない理由は受給する生活保護費で返済をすることができないからです。

生活保護費は最低限の生活費です。それを節約しながらうまくやりくりして、生活の維持・向上に努めなければなりません。そのため、ローンを組んで高価な買い物をすることは認められていないのです。これは住宅ローンも該当します。

そんなことから、現在、住宅ローンを返済中の人は生活保護の申請を控えたほうがいいかもしれません。なぜなら生活保護費でローンの返済はできないことと、生活保護を申請する際にローン返済中の家を売却することを求められるからです。仮に生活が困窮してローンの返済ができなくなって生活保護を考えている場合は、任意売却や自己破産など他の方法を検討しましょう。

ただし、住宅ローンが残っていても生活保護を受けられる場合があります。これは東京都の事例なのですが、残債の目安として「期間は5年程度、金額は月毎の支払額が世帯の生活扶助基準の15% 以下程度、ローンの残額が総額で300万円以下程度」となっています。もしこの程度の残債である場合は、福祉事務所に相談してみるとよいでしょう。

参照 : 東京都福祉保健局「生活保護運用事例集

あわせて読みたい : 自分や家族が生活保護受給者になったら知っておきたいこと

生活保護受給のメリットは?

生活保護を受給すると、次のようなメリットがあります。

  • 必要最低限の生活費を受け取ることができる
  • 支払いが免除となるものがある
  • 国民年金保険料が免除される
  • 住民税が非課税になる
  • 固定資産税、都市計画税が非課税になる
  • 軽自動車税が非課税になる
  • JR通勤定期代が3割引きになる
  • 上下水道料金が減免になる
  • NHK受信料が減免になる……など

そしてもう1つメリットになるケースがあります。それは、多額の借金がある場合です。原則、生活保護費で借金を返済することはできません。もし返済に充てたことが知られると生活保護費が支給停止になるかもしれないのです。

しかし、借金が多額のために自己破産して借金をすべて免除してもらいたいと考えている場合、生活保護の要件を満たすのであれば生活保護を受けておいたほうがいいかもしれません。自己破産は弁護士に依頼しますが、収入が非常に少ない場合は依頼する費用がありません。

そんなときに利用できるのが日本司法支援センター、通称「法テラス」です。法テラスでは、収入が一定額以下などの要件を満たせば法律相談をすることができます。その際の相談料は立て替えてもらえて、後日返済するようになっています。このとき、生活保護受給者であれば立て替えてもらった費用の返済が免除となる場合があるのです。

借金があっても生活保護は受けられるので、自己破産を考えている場合は先に生活保護を受けておいたほうがよいかもしれません。

生活保護に関する誤解

生活が困窮していても生活保護の受給を躊躇している人もいます。その理由として、自分の置かれた状況は生活保護が利用できないケースだと誤解していることが考えられます。そこで、多くの人に誤解されているケースについて解説しましょう。

誤解されているケース1 : 車を所有していると生活保護を受けられない

確かに生活保護では車やバイク、ブランド品などの贅沢品を持つことはできません。それらを売却して生活費をねん出するよう指導されるからです。しかし贅沢品といわれる車でも、場合によっては生活に欠かせないものとなっているケースもあります(※1)。例えば次のようなケースです。

  • 車を仕事で使用している
  • 障害がある人が通勤や通学に車を使っている
  • 公共交通機関の便がよくない地域に住んでいて、通勤や通院など生活に車が不可欠
  • 早朝や深夜に通勤している など

このように、きちんとした理由がある場合は車の所有が認められますので福祉事務所に相談しましょう。

誤解されているケース2 : 嗜好品の購入やギャンブルはダメ

生活保護を受けると最低生活費の給付があります。そのお金を上手にやりくりしたうえでお酒やタバコなどの嗜好品を購入するのであれば特に問題はありません。

また、パチンコや競馬などのギャンブルは禁止だと規定されているわけではありません(※2)。しかし、ギャンブルに生活保護費をつぎ込み指導や助言を受けるケースが増えています。

生活保護受給者には「能力に応じて勤労に励み、保護費を無駄遣いせず節約を図るなどして、生活の維持・向上に努めなければならない」という義務があります。そのため、節度を持って生活をする必要があります。ちなみに、ギャンブルで得たお金は収入として申告する必要があることは留意しておきましょう。

誤解されているケース3 : 生活保護を受けたら近所に知られてしまう

生活保護を申請すると、そのことが近所の人たちに知られてしまうと思っている人は少なくないようです。しかしご安心ください。生活保護の相談先である福祉事務所の職員は公務員であるため守秘義務があります。そのため機関や職員から個人情報が漏れることはなくプライバシーは守られます(※3)

誤解されているケース4 : 生活保護費を受けると貯蓄してはいけない

生活保護を受給する際の条件として、預貯金がある場合はそれを活用しなければいけないとされているため、生活保護費で貯蓄をしてはいけないと思っている人もいます。

実際のところ、生活保護費での貯金は可能です(※4)。ただし貯蓄目的に制限があります。例えば子どもの大学や専門学校への進学費用、将来就労するための資格取得など、自立につながる貯蓄の場合は認められています。しかし旅行へ行く、貴金属や株を買うなどといった自立とは関係のないことが目的の貯蓄は認められていません。

もし貯蓄をする場合は福祉事務所に相談しておくとよいでしょう。

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生活保護にはケースワーカーの定期訪問や毎月の収入申告などのほか、ローンを組むことができなかったり、クレジットカードがつくれなかったりするデメリットがあります。その反対に、最低生活費が確保でき税金や公共料金の支払いが免除できるといったメリットもあることがわかりました。

また、場合によっては車を所有したり、生活保護費をやりくりしたりしたうえでなら嗜好品をたしなむことができます。とはいえ、常に節約をしながら生活の維持・向上が求められます。生活保護を受けるうえで求められる生活を正しく認識しておきましょう。

参照 :
(※1)大阪弁護士会「生活保護に関数Q&A
(※2)佐野市「生活保護受給者がパチンコを許されているのはおかしい
(※3)南アルプス市役所「生活保護
(※4)豊橋市「生活保護を受けると貯蓄、運用をしてはいけないのですか?

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