最後は羽生九段のとん死という劇的な幕切れ。豊島-羽生戦の後手番連勝は10に伸びる
将棋界最高峰のタイトル戦、第33期竜王戦七番勝負(主催:読売新聞社)の第3局、▲羽生善治九段-△豊島将之竜王戦が11月7・8日に京都府「総本山仁和寺」で行われました。ここまでは両者1勝1敗、後手番が2連勝中で迎えた本局は、172手で豊島竜王が勝利を収めました。
羽生九段が先手番の本局は、相掛かりの将棋になりました。羽生九段が歩得を重ねる一方、豊島竜王は手得を重ね、歩と銀を前へ前へと進めていきます。1日目は両者の主張が真っ向からぶつかる展開から、豊島竜王が9筋の端攻めを仕掛けたところで封じ手となりました。
2日目は両者が大駒を大きく活用する派手な展開に。豊島竜王の飛車は盤上を縦横無尽に駆け回りました。羽生九段は狙われていた角を相手の角にぶつけて交換を迫り、手にした角で豊島竜王の飛車に狙いを定めました。
豊島竜王も羽生九段も自信がないと感想戦で述べるほど、難解な中盤戦で優位に立ったのは豊島竜王だったようです。しかし、豊島竜王の飛車を見捨てた構想が急ぎすぎで、形勢が再接近。そしてついには羽生九段が逆転に成功します。
しかし、逆転とは言っても一手でひっくり返る程度の差。豊島竜王は激しく羽生玉を攻め立て、羽生玉の守り駒をはがしていきます。羽生九段も持ち駒をどんどん投入して頑強に受けてなんとか豊島竜王の攻めをしのぎました。
羽生九段の受けの前に、豊島竜王の攻めがついにストップ。一手の余裕を得た羽生九段がついに攻めに転じました。まずは馬を急所に引き付け、詰めろをかけます。豊島竜王は△4二歩と打って防御。5一にいる豊島玉は、4二歩・5二歩・6二歩と頭上を歩に守られる珍しい形になりました。
この歩の守りをこじ開けるべく、羽生九段は歩の利きに▲5三銀と打ち込んでいきました。銀は取られるものの、これで豊島玉は受けなしになります。決まったか、と思われましたが、なんと評価値は豊島竜王側に大きく振れたのです。
銀を取った豊島竜王は、銀を捨てて羽生玉に王手をかけました。銀を渡してしまったことで、羽生玉には詰みが生じていたのです。このチャンスを逃す豊島竜王ではありません。しっかりと詰まし上げ、豊島竜王が勝利を収めました。
▲5三銀に代えて、▲9四角と打っていればまだ羽生九段が残していたようですが、羽生九段が問題視したのはその前の受け方でした。時間切迫の中、豊島竜王の猛攻を正確に受け止め切れなかったという認識が羽生九段にあったのでしょう。
後手番の豊島竜王が勝利したことで、本シリーズはここまで後手番3連勝。また、豊島-羽生戦ではなんと後手番が10連勝となりました。
第4局は11月12・13日に行われます。豊島竜王は本来なら有利なはずの先手番。防衛に王手をかける3勝目をあげられるでしょうか。羽生九段は連勝中の後手番。連勝をさらに伸ばし、シリーズ成績をタイにすることができるでしょうか。注目です。