講演者の山本恭子氏

NTTコミュニケーションズ(NTT Com)は10月14日から16日にかけて、「NTT Communications Digital Forum 2020」というオンラインイベントを開催した。本記事ではその中から、「ニューノーマル時代におけるリモートワークネイティブな働き方とは ~多様性を尊重したエンゲージメント向上をめざして~」と題する特別講演の内容を紹介する。

講演者は、同社ヒューマンリソース部長の山本恭子氏。同講演では、ニューノーマル(新型コロナウイルス感染症(COVID-19)後の新常識)における働き方への同社の取り組みを、エンプロイーエンゲージメントの観点も含めて紹介した。

働き方改革3つの基本理念

同社の働き方改革は、2017年から本格化させているといい、「風土・意識」「制度・ルール」「環境・ツール」の3つを基本理念に掲げている。

風土・意識については、幹部自らがリモートワークをし、また働き方について語るなど、幹部が変わることで意識改革を推進してきたと山本氏は語る。

制度面は、リモートワークやフレックスタイム制を全社員に拡大すると共に、リモートオフィスの充実などに取り組んできたという。

環境・ツール面では、セキュアドPCやセキュアモバイルの導入に加え、コミュニケーションツールとしてマイクロソフトのTeamsを導入し、リモートに適した環境整備を進めてきたとのこと。

  • NTT Comの働き方改革の基本理念

こうした取り組みを実施してきたため、新型コロナウイルスに対しては、比較的早めに対応できたという。

同社では2月17日から、派遣スタッフも含めて全社的にリモートワークを推奨し、実施率は3月の時点で50%、緊急事態宣言以降は80%に上昇したとのことだ。

  • リモートワークの実施状況

リモートワークでの生産性が上がったもの、下がったもの

同社におけるリモートワークの生産性はどうだろうか。

派遣社員を含む同社グループ社員5145人に対するアンケートを6月に実施したところ、「生産性が上がった」または「やや上がった」との回答は、合わせて全体の64%に達したという。

生産性が上がった要因は、「オフィスよりも集中できるから」「コミュニケーションツールがオンラインに変わったから」が上位2要因だった。業務の種類別に見ると、資料作成、打ち合わせや会議、メールや問い合わせ対応の順となった。

  • リモートワークで生産性が上がった要因と業務

逆に、生産性が下がったと感じる要因は何だったのか。

最も多かったのは、「オフィスよりICT環境が悪い」という回答だった。これは、社員の自宅に問題がある場合もあれば、接続先の会社側が原因の場合もある。山本氏は、「会社側のリモート接続用ネットワークは帯域増などの改善を図りましたので、今はだいぶ解消されていると思います」と語る。

生産性が下がった業務として最も多く挙がったのは調整業務であり、これは複数の関係者と対応して意見調整をすることが求められる業務だ。

また、資料作成や打ち合わせ・会議といった、生産性が上がったと感じる業務として挙がっていた業務について、生産性が下がったとの回答が一定数あった。

これについて山本氏は、「会議や打ち合わせなどコミュニケーションの仕方、資料作成など業務のは、やり方次第で生産性は上がる場合もあれば下がる場合もあることを示していると思います」と分析する。

  • リモートワークで生産性が下がった要因と業務

そして、「このことは、私たちのニューノーマルにおける新たな働き方を考える上で、重要なポイントとなりました」と山本氏は振り返った。

改善を期待するもの

同アンケートでは、改善を期待するものも尋ねている。

最も多かったのは社内ネットワークや業務システムの改善だが、「既に手を打っており、効果が出始めています」(山本氏)という。

これに続く、リモートが当たり前の文化の醸成や紙から電子化の推進については、この後の、新たな働き方に向けた施策の紹介の中で触れている。

  • 改善を期待するもの

同社における働き方改革の施策の手始めとして、新入社員の受け入れについての紹介があった。

2020年度の同社の新入社員は、入社式から導入研修までフルリモートの、「まさにリモートワークネイティブな世代」(山本氏)だという。5月中旬に配属が決まった新入社員がどう職場に馴染んだか、また上長やチームはどのような工夫をしたかについて、現場の声を紹介。

ここで紹介されたのは法務監査部という、社内の各部署からの法律に関する相談を受けたり規約をチェックしたり、電子契約の推進などを担当する部門だ。同部も、現在はリモートワーク中心で業務を進めているという。

法務監査部の音高氏

新しいメンバーの受け入れに当たっては、「細かくマネジメントするより、相談したい時に相談してもらえる環境や雰囲気作りに気を配っています」(音高氏)とのことだ。

同部では毎日、朝会という15分ほどのオンラインミーティングを行っており、そこでは仕事の話よりも、雑談中心の話しやすいコミュニケーションの場にしていると音高氏は語る。

新入社員の岩月氏

一方、新入社員の岩月氏は、先輩社員の仕事のやり方などを直接目にできないため、成長に関して苦労していると語るが、チャットや電話などで随時先輩に尋ねているという。

音高氏を含む先輩社員の側では、新人がわからないことなどを一人で抱え込まないよう、また急ぎの要件などをすぐに連絡するよう伝えた上で、相談や連絡があった際にはすぐに反応するよう心掛けているとのこと。

音高氏は、「すぐリアクションできるというのも、リモートワークで活用しているコミュニケーションツールのメリットの1つかなと思います」と締めくくった。

  • オンラインミーティングの様子