HSPという言葉を聞いたことはありませんか? HSPとはhighly sensitive personの略で、「非常に感受性が強い人」などのように日本語訳されます。HSPには「物事を深く考える」「刺激に敏感である」などのさまざまな特性が備わっており、その特性が時に「生きづらさにつながる」と言われるとケースも少なくないようです。

ただ、仮に自分自身が「嫌いだ」と思っている特性がHSP由来のものだとわかれば、これまでとは違った風に自分自身を前向きにとらえられる可能性もあるでしょう。そこで、この記事ではHSPの特性やHSPの人がよりよく生きるためのヒントを紹介します。

「DOES」とは

  • HSPの言葉の意味を理解しましょう

HSPは、アメリカの心理学者エレイン・アーロン博士が提唱した概念であり、相手の感情やその場の雰囲気など、自分の身の回りの環境の変化を人一倍敏感に感じやすい人のことを指します。他者の感情や行動を気にしすぎたり光や匂いに集中を奪われたりするため、日常生活の中で疲れてしまうことが多いようです。こういった点が生きづらさにつながっているのかもしれません。

アーロン博士は、HSPの代表的な特性として「人の気持ちを読む能力に長け、情報処理力に優れる」「痛みや刺激を受けやすい」「他人への共感力が強い」「物事の小さな変化に気づきやすい」という4つの特性があると述べています。

そして、この4つの特性は「Depth of processing」「Overstimulated」「Emotionally reactive and high Empathy」「Sensitivity to Subtleties」のアルファベットのそれぞれの頭文字をとって「DOES(ダズ)」と称されることもあります。

これらのHSPの特性は生まれつきのものであり、世界中の5人に1人の割合で存在することが、アーロン博士の研究により判明しています。そして病気ではないため、正式な治療法はありません。ただ、自身がHSPなのかどうかをセルフチェックするための基準は「日本版HSP尺度(HSPS-J19)」などで知ることが可能です。

HSPS-J19の各項目は「大きな音で不快になりますか」「他人の気分に左右されますか」などで構成されており、HSPかどうかを自己診断するための一つの目安となります。

HSPの特性

上述のように複数のタイプに分類されるHSPは、その人ごとに異なるさまざまな特性を備えています。その代表例をいくつか紹介します。

  • HSPの特性を知ろう

特性1: 深く考える傾向にある

物事を深く考える傾向があるのも、HSPにみられる特性です。「自分の言葉が違う意味でとらえられていないか、必要以上に気にしてしまう」「考えても結論が出ないことを熟考する」などのように深く考えすぎて、他のことが手につかなかったり、体調を崩したりしてしまいます。

特性2: 刺激に敏感である

HSPは人間関係だけでなく、強い音や光、においなど、さまざまな感覚が敏感になります。そのせいで本来集中すべきことに集中できないといった支障が出てしまうケースもあるため、HSPは自分が安心して落ち着くことのできる場所を探す必要があると言われています。

特性3: 共感しやすい

感情移入しやすいのもHSPの一つであり、自分の考えが他人の感情に左右されたり、自分とは全く関係のないことや悲しいニュースでも傷ついたりしてしまうケースがあるとされています。

特性4: 些細なことに気づき、影響を受けやすい

HSPは人の言動に敏感です。たとえば、電車内で大声で会話している人たちが気になって嫌な気持ちになってしまいます。自分の家にいると心が落ち着きますが、上の階や隣人の足音や物音が気になってイライラしてしまうこともあります。どんなに小さく些細なことでも気づいてしまうため、いろいろと考えを巡らせてしまい、結果的に疲れてしまうのです。

HSPと判明した際の対処法

もしもHSPと明らかになった場合、自身がよりよく生きるためにどうしたらよいのかをご紹介します。

  • HSPと判明した際の対処法とは

対処法1: 発想を転換する

相手とのやり取りから自分の言動を振り返ったり、相手の心情を配慮したりすることができるのは、HSPのよいところでもあります。深く考えてしまうからといって、「自分は気にしすぎる性格なんだ」と落ち込むのではなく、「自分はいろいろと気にしすぎるからこそ、相手の心情を思いやることができるんだ」などと、発想を転換してみるのもいいでしょう。

対処法2: 仕事量を減らす

HSPは、自分が安心して落ち着ける環境で、一つひとつの仕事に向き合えるような仕事が向いています。忙しかったり休息が取れなかったりするような仕事だと、身体的にも精神的にも疲労感を強く感じてしまうこともあるでしょう。 場合によっては、仕事量を減らして自分にとって無理のない仕事内容に変える必要も出てくるでしょう。

対処法3: 過ごす環境を自分に合わせる

HSPは自分と合わない環境にいるとさまざまな刺激を受けてしまうため、自然体でいることが難しいです。HSPと判明したら、自分がストレスに感じているものを減らしていくことから始めていくといいでしょう。

対処法4: 自分に合った職業を選ぶ

HSPが持つ特性はそれぞれ異なります。例えば「他人への共感力が強い」HSPは、他人の思いを理解する能力に長けているため、カウンセリングへの仕事に適性が見いだせる可能性があります。「自身が安心して働ける」という前提のもと、自分の特性を活かした仕事を選ぶといいでしょう。

自分自身をしっかり理解しよう

HSPの特性やHSPと診断されたときの対処法について説明してきました。もしも自身がHSPと明らかになったら、周りの環境を変えるなどの工夫を凝らし、少しでも心の余裕を持って日々の暮らしを改善していくことが大切だと覚えておきましょう。