――今回、20年前の『燃えろ!!ロボコン』ならびに46年前の『がんばれ!!ロボコン』を意識された部分はあるのでしょうか?
今回のスタッフがほぼ、昔の『燃えろ!!ロボコン』とはぜんぜん違っていて、おそらく最初の『がんばれ!!ロボコン』の存在も知らない若い人もいたんじゃないかな。そんなこともあり、昔のロボコンはこうだったから……みたいなこだわりは一切入っておらず、まさに「令和」に復活した現代のロボコンという風にとらえてほしいですね。僕自身、『燃えろ!!ロボコン』をやっていたころの時間に引きずられることもなかったですし、同じことを繰り返しても仕方がないぞ、と考えながら撮影を行いました。
新しいロボコンは現代風にメカっぽくアップデートされたデザインになっているけれど、全体の真ん丸いシルエットなんて昔のまんまでしょう。時代がいくら変化しても、ロボコンを「かわいいな」と思える"ツボ"は同じですから、この先何年経っても、どんなに変化を重ねても、ロボコンは愛されるキャラクターでい続けるんだろうなって思っています。
――ロボコンが全力でお手伝いする(しかし、結果的に迷惑をかけてしまう)中華料理屋「全中華」の伊東さん一家のキャスティングについてお聞かせください。
パパ、ママ、ヒロシと、3人のバランスに注意して「面白い家族」にしたいと思いました。ロボコンと友だちになるヒロシ役の屋鋪琥三郎(やしき・こさぶろう)くんは、芝居心がありましたね。お芝居をするのが好きと見えて、撮影中はずっと活き活きとしていました。パパの小浦(一優/芋洗坂係長)さんは、ルックスが気に入ってキャスティングしたんですけれど、表情がクルクルと変わってとてもいい雰囲気で芝居してくれて、とてもよかったですね。高橋ユウさんは『仮面ライダーキバ』(2008年/麻生ゆり役)以来ひさびさに仕事をしましたが、すごくやわらかな雰囲気になっていました。『キバ』当時は高校生でしたが、今や素敵なお母さんですし、時の流れを痛感しますね。3人家族は狙ったとおりの、よいコンビネーションを見せてくれました。
――ロボコンの憧れのヒロイン・ロビン役の土屋希乃さんも、非常に愛らしいルックスとコスチュームが印象的ですが、ただかわいいだけではない意外な面を見せるのがよかったです。途中で汁なしタンタンメンがロビンに恋をしてから、ロビンにもさらなる"過激な変化"が起こり、騒動があらぬ方向へとエスカレートしていくのが凄いですね。予告編ではロビンが一瞬「変顔」を見せるカットが入っていて、驚かされました。
悪いことをしてしまったかもしれない(笑)。ご存じのとおり僕はあまのじゃくなので、かわいい女の子をただかわいく出すだけじゃイヤなんですよ。かわいいんだけど、そこにヒトクセ加えたくなっちゃう。ロビンがロボコンを「連打」するとは台本にも書いてあるんですが、書かれているともっと膨らませたくなります。何事でも「増幅」させてしまうタチがあるんですね、僕には(笑)。
――本作のキーパーソンというべきトルネード婆々役・清水ミチコさんも非常にクセの強い役柄を見事に演じられましたね。
いいキャラクターになったと思います。トルネード婆々について、浦沢さんのホンには特に外見的な特徴や性格など、詳しいことが書かれていないので、こちらで細かなディテールを積み重ねていくしかないのですが、できあがった作品を見ると見事にトルネード婆々が「浦沢キャラ」と呼べるものになっていますよね。監督にそこまでさせる筆なんでしょう。監督を操るかのような台本を書く浦沢さんは、まったく不思議な人物です。
――登場キャラクターの中でひときわ異彩を放っている「汁なしタンタンメン」(声:鈴村健一)についても詳しいところを教えてください。
こちらに映画で使われた汁なしタンタンメンがあるんですが(と、手に取り)合羽橋の業者さんに依頼して、映画のために特製の食品サンプルを作ってもらったんです。よーく出来ているでしょう。鈴村健一さんはさすがベテランで、収録中は「上手いなあ!」と感心してばかりでした。恐れ入りましたよ。生まれたばかりの汁なしタンタンメンから、成長を遂げた汁なしタンタンメンへと声を使い分けている。鈴村さんがいなかったら、面白くもなんともない作品になっていたかもしれません。
撮影中、この汁なしタンタンメンを動かしていたのはほとんど僕でした。棒をくっつけて、一生懸命に動かしたんです。この汁なしタンタンメン、もう別の作品に使うなんてこともないでしょうし、撮影所に置いたままでホコリを被るのもかわいそうですから、PRが終わったら僕が記念にもらっていきたいんですよ。それだけ、愛着がわいています。僕が死んだら棺桶に入れてほしいくらいです(笑)。
――YouTubeで配信されている撮影メイキングを拝見しますと、スタッフ・キャストのみなさんがウイルス感染防止策をとりつつも、非常に楽しくなごやかに撮影をされていたことがうかがえます。エンディングではキャスト陣のみなさんが楽しいダンスをしているシーンもあるようですが、お一人だけ、映画本編中に出てきていない謎の人物が一瞬だけ出てきて注目をかっさらっていきますね。
あれにはちゃんと理由があります。エンディングダンスは初日に撮ったのですが、そのとき現場の空気がまだ「重苦しいな……」と感じまして、スタッフを笑わせようと"一発カマして"みたわけです。これでみんなの緊張が解けて、楽しい現場になってくれたらいいなという作戦だったのですが、これが見事に成功。現場は終始和気あいあいとした、よい環境になりました。
――エンディングで何が起きたのか、はぜひ映画館で本作を見て確かめてほしいところですね! 作り手側の楽しい雰囲気が、映画のあちこちに表れている感じがしました。
この映画では、とにかく明るくやろうと思って取り組みました。明るいのが一番! 難しい理屈は置いといて、楽しければそれでOKという思いを念頭に置いています。汁なしタンタンメンや中華料理がしゃべって動き出す突拍子もない作品ですが、小難しいことを一言も言っていませんし、子どもたちに楽しんでもらいたい、ということしか考えていません。
――かつて『仮面ライダーアマゾンズ』でガッチガチのバイオレンスアクションを演出していた石田監督のファンの方々が今回の『ロボコン』を見ると、ビックリするかもしれませんね。
今は世の中が厳しい状態ですから、『ロボコン』みたいに底抜けに明るく楽しい作品をやったほうがいいんじゃないかと思います。社会が平和を取り戻したときには、また『アマゾンズ』のような作品に取り組んでみたいですが(笑)。バイオレンス要素、好きですからね。考えようによっては今回の『ロボコン』にもバイオレンス要素がありますし(笑)。
――『ロボコン』も今回の反響次第では、シリーズ化も夢ではないですね。
次回作があるかどうかは、白倉さんの考え次第じゃないですかね。僕自身やスタッフたちはほんとに楽しかったので、また同じメンバーで『ロボコン』をやりたいと思っています。現場の雰囲気がとてもよかった作品には、そう思わせる魅力があるんです。不思議な脚本の浦沢さん、不思議な監督の僕、不思議なプロデューサーの白倉さんが組んで作り上げた、不思議な映画『がんばれいわ!!ロボコン ウララ~!恋する汁なしタンタンメン!!の巻』の応援をどうぞよろしくお願いします。
映画『がんばれいわ!! ロボコン ウララ~! 恋する汁なしタンタンメン!!の巻』は、現在全国公開中。
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