昨年9月26日に放送されたフジテレビ『奇跡体験!アンビリバボー 仲間たちとの12年越しの約束SP』が、第46回放送文化基金賞のテレビエンターテインメント番組部門で最優秀賞を受賞した。
この番組は、一度は夢を諦めた男性が果たした奇跡の“復活”と、叶えられなかった仲間たちとの約束を、12年の歳月を経て実現させる一部始終を独占密着したもの。この主人公の男性・杉田秀之さんが、出演者賞を受賞した。
慶應義塾大学ラグビー部に所属していた杉田さんは、2007年夏、合宿中の練習試合で頚椎(けいつい)・頸髄(けいずい)を損傷し、ラグビーができない体に。合宿の最後に「皆で富士山に登ろう」と誓っていたが、その約束は果たされなかった。
そして、10年の歳月が流れたある日、仲間たちから「いつ富士山に登るの?」とメッセージが。約束を忘れたわけでなかったものの現実的ではないと諦めかけていた杉田さんだったが、仲間たちの思いに動かされ、再び富士山を登る決心をした。
2019年8月、杉田さん、ラグビー部員、その関係者約80人が富士登山に挑む姿を追った番組でのインタビューでは、杉田さんが事故当時から現在に至るまでの思いを明かし、家族や仲間たちも複雑な心境を率直に語り、それぞれが今回の富士登山をきっかけに「今だから言えること」を告白。2007年当時、ラグビー部の学生トレーナーとして事故現場に居合わせたフジテレビの鈴木麻衣子ディレクターが企画し、イースト・エンタテインメントとともに番組化した。
同賞では、最優秀賞について「練習試合中の不慮の事故で選手生命を絶たれた慶大ラグビー部の杉田秀之さんが、ケガから12年後、仲間の支えによって約束の富士登山に挑む。その一部始終を、綿密な取材と質の高い再現ドラマ、そして登山への密着取材で見応えたっぷりに描き出した。杉田さん、監督、部員たち、それぞれの止まっていた時間が動き出す瞬間が記録された奇跡的な番組となった。20年以上にわたって人間が生み出す『奇跡』を追い続け、再現ドラマの手法を磨き上げてきた『奇跡体験!アンビリバボー』の歴史が結実した屈指の“神回”である」と講評。また、出演者賞について、「自分の弱さを受け入れることで、人は強くなれるということを身をもって示した。“転んでも起き上がる”ラグビーのような彼の生き方が、番組に説得力と感動をもたらした」と評価し、277件(うちエンターテインメント67件)の応募の中から見事受賞となった。
杉田さんは「12年越しに果たした富士登山の約束、頂上で見た景色の記憶は御来光でも絶景でもなく、涙と笑顔にあふれた仲間の姿でした。人は誰かの支えがあればどんな困難も乗り越えられることを、仲間と経験することができました。私たちのストーリーを番組にして頂いたこと、そして何よりアンビリバボーな出演者賞の受賞をとてもうれしく思います。一人では躊躇してしまう一歩を誰かの力を借りて踏み出すこと、誰かの踏み出す一歩を応援してあげること、そんな支え合いの気持ちが今後もメディアを通して社会に広がることを願っております」とコメント。
鈴木麻衣子ディレクターは「“この奇跡のストーリーを世の中のたくさんの方に観て頂きたい”というテレビマンとしての想いと、“当時、事故現場で無力だった私が、彼の人生をテレビで描いていいのか”というひとりの人としての思い――この2つの気持ちの間で、企画書を出し、番組にするまで約1年半葛藤しました。今こうして素敵な賞を頂き、私もこの番組を通じて、“勇気を出して一歩踏み出せば、新しい景色が見えてくること”“仲間の支えがあれば困難も乗り越えられるということ”を学びました。取材にご協力いただいた皆さま、放送の機会をくださった皆さま、そして番組を観てくださった皆さまに心から感謝しております」。
イースト・エンタテインメントの谷悠里ディレクターは「このような素晴らしい賞を頂き、大変光栄ですし、とてもうれしく思っています。番組では、視聴して頂いた皆様に少しでも勇気や希望を感じて頂ければという思いを胸に日頃から制作を行っています。この回については、障害を負った杉田さんご本人の不断の努力とそして何より慶應大学ラグビー部の皆さんの絆が素晴らしいと感じています。誰しも困難に直面した時は、一人で抱え込みがちになるのですが、お互いに支え合うことで、一人の時よりも何十倍も力を発揮することができると実感させられましたし、多くの方に勇気や希望を感じて頂けたのではないかと思っています。今後も、この賞を励みにより皆様の心に響く番組作りを目指していきます」と語った。
なお、フジテレビは、「総合コンテンツ管理システムとオンラインキューシートで実現した送出ワークフロー改革」で、【個人・グループ部門】放送技術も受賞している。
(C)フジテレビ