フジテレビのドキュメンタリー番組『ザ・ノンフィクション』(毎週日曜14:00~ ※関東ローカル)で、大阪の地下街で居酒屋を経営する大家族に密着した『お父さんと13人の子ども』。12日に放送された前編では、団結する家族の中の苦悩を映し出したが、19日放送の後編は、一家の大黒柱である父・淳一郎さんの新型コロナウイルスとの闘いを中心に描かれている。

ナレーションを担当する、タレントのファーストサマーウイカは、キレのあるトーク力で一躍ブレイクを果たしたが、そんな矢先に襲いかかったコロナ禍という現実に、どう向き合ったのか。インタビューでは、バラエティでの威勢のいいキャラクターとはまた違う、謙虚な一面を見せてくれた――。

  • 『ザ・ノンフィクション』のナレーション収録に臨んだファーストサマーウイカ

    『ザ・ノンフィクション』のナレーション収録に臨んだファーストサマーウイカ

■収録中止相次ぐも「大きな危機感はなかった」

コロナ禍で立て続けに番組収録が中止になった事態に直面し、「個人的には、そこまでの大きな危機感はなかったです」というウイカ。

「万が一1年間仕事がなくなったとしても、大丈夫なように貯蓄してある(笑)」と笑わせながら、「自分の仕事だけが本当にパッタリ止まっていたら不安だったと思うんですけど、日本みんな同じ不安な気持ちだったと思うんです。みんな一緒だからって。私なんてこの10年、仕事があったときのほうが少なかったですから、最近忙しかったのが異常なくらいだったんで。なので、一気に仕事が止まったことに対して、私は『よっしゃ!長期休暇や!』っていう気持ちと、今後のことを考えて、『まぁどうにかしていかないといけないけど、みんなそうだから。逆にみんながこうやるんだ!ってなったときに、自分のことで手いっぱいにならないようにしておこう』って、すごく前向きでした」と振り返る。

■クローゼットをリモート出演部屋に改造

その中で、危機的状況の乗り越え方について、「自分がどう作用していくかっていうのを考えていました」とのこと。

「正直、プライベートと仕事の時間はきっちり分けたいタイプだったので、自宅からリモート出演っていうのはちょっと難しいなと思っていた部分もあったんです。でも、コロナを乗り越えていくときに、『他にあてがなくて、ウイカさんに出てもらえてよかった』というスタッフの方がいらっしゃるかもしれないので、私が稼働できることによってなにか手助けできたり、フォローになったりすればいいなと思って、マネージャーさんに『家からのリモートも受けます』と言いました」

一度決意したからには、そこに全力を注ぐのがウイカ流。「ウォークインクローゼットを改造して、リモート出演の部屋を作ったんです。そこしかスペースがなくて、身動きが取れない状態で収録に臨んでました(笑)」と苦笑いしつつ、「やっぱりこの環境の中で自分ができることは何だろうって思ったときに、頂いた仕事に前向きに尽力すること。撮影用の照明も買いましたよ(笑)。新しいスタイルに協力して、一緒に考えていく、ということだったんですよね」と解決策を見出した。

■他人が見て100点とは限らない…妥協許さない収録

今回の『ザ・ノンフィクション』は前編・後編の2週連続放送ということで、ナレーション収録は約5時間におよんだ。スタッフがうまく読めていると感じた部分も、「ここもう1回いいですか?」「さっきのところやり直したいんですけど!」と志願し、納得いくまで妥協を許さない姿が印象的だった。

その真意について聞くと、「ただのウザいやつだと思われてませんかね?(笑)」と心配しながら、「自分がこの番組の大ファンなので、ナレーションの大切さが分かるんです。ナレーターという役割はとても重要だけど、本質的には“外の人間”だと思うんですよ。映像の中にストーリーが詰まってるのに、第三者が乗っかってくる瞬間にそれが気に障ったら、邪魔に感じちゃうこともある。私自身かなり厳しい視聴者だから、この番組に限らずそう思う時がたまにあります(笑)。だから、できるだけノイズになりたくないと思って、自分のできる限りのことを尽くしたいと思ってやったんです」と打ち明けた。

全力を尽くす姿勢は、他のジャンルでも同様だ。

「バラエティでも『次はこういうことができたらな…』と毎回反省しますし、曲のレコーディングや吹き替えでも、自分の納得いったものも他人が見て100点とは限らないし、逆もまた然り。でも自分で0点と思っているものは、やっぱり出せない。だから、自分の中でもまず確実に及第点をとって、そこからブラッシュアップして満点を目指していく。良いものと思えるものを出したいんです」と、飽くなき向上心を見せている。

  • 新型コロナウイルスによる肺炎で倒れた澤井淳一郎さん (C)フジテレビ

●ファーストサマーウイカ
1990年生まれ、大阪府出身。13年アイドルグループ・BiSに加入し、メジャーデビュー。14年にBiSが解散し、15年BILLIE IDLEを結成。ライブを中心に活動し、19年12月に解散。最近は関西弁の切れ味鋭いトークを武器に、『ワイドナショー』『ダウンタウンなう』『今夜くらべてみました』といったバラエティや、ラジオ『ファーストサマーウイカのオールナイトニッポン0』、さらに『凪のお暇』でドラマにも出演するなど、様々な場で活躍する。2020上半期ブレイクタレント(ニホンモニター調べ)にもランクイン。