新型コロナウイルスの感染拡大により、テレワークがあたりまえになり、社内の同僚と会う機会が減ったのではないでしょうか。それこそ、上司と部下の関係含め、これからは社内における人間関係の構築方法に変化が出ると推測されます。

連続起業家として数々の企業を立ち上げるだけでなく、ビジネス・ブレークスルー大学で准教授も務める小林慎和さんは、4つのシーンに分けて社内コミュニケーションがどう変わっていくかを考えるべきだと説きます。

(1) 社内コミュニケーション全般

ITスタートアップやIT業界などでは、コロナ以前から一般的ですが、ビジネスチャットベースの業務推進がいよいよ全業種、そして、日本全国へと普及していきます。その代表的なツールとしては、Skype、Slack、chatworkなどが挙げられます。これらのツールをすでに活用している人も多いと推測しますが、ビジネスチャット導入前と後とでは、社内のコミュニケーションはどのように変わるのかを考えていきます。

まず、社内でのコミュニケーションのすべてが、非同期非連続に変わっていきます。社内チャットには、あたりまえのように数十(場合によっては数百)ものグループが立ち上がり、そのなかで「細切れの会話」として、業務の進捗状況の共有や確認事項が乱れ飛びます。

プレゼン資料やwordの資料はクラウド上におかれ、共同編集によって徐々にブラッシュアップされていく。アートワークやアプリのUIUX、さらには動画制作すらも共同編集可能なツールが現れ始めています。

目の前の自分のタスクに集中したいときはそれに集中し、チャットを放置する。一息ついたところで、チャット上に溜まった数十もの通知を確認し、反応するべきメッセージに返信を返していく――。社内コミュニケーションはどんどんと細切れに、非連続に、それでいて、とてつもなくスピーディに進んでいきます。

この円滑な環境を築けるかどうかは、「会社としての強さ」に直結するでしょう。チャットツールを導入するなかで、それを成功させるための最も重要な要素がひとつあります。それは、クラウド上で、できる限り多くの社内情報を公開すること。これまではマネジメント層にだけ共有していた情報などについても、全社員に公開していく方が得策です。

それはなぜでしょうか? これまでとの比較で説明していきます。

細切れで非連続に効率的に進む社内コミュニケーションがないときは、トップマネジメント層が掲げる大方針があり、それらが部署単位に落ちてくることが一般的でした。いわば、各部署で話し合ったミッションの遂行をすることこそが大きな目的だったのです。

部署単位でも、情報共有は短いサイクルで週単位、長い場合は1カ月に一度程度のもの。このような環境では、日々の軌道修正が非常に利きにくいことはいうまでもありません。この場合であれば、トップが決めた大方針がぶれずに進むことが全体最適につながります。

しかし、これからの細切れで非連続なやり方の場合だと、日々、いや毎分のように業務の軌道修正がすべての社員のあいだで可能になります。状況の変化があれば、全社員で軌道修正が可能な環境なのです。それゆえに、トップマネジメントが持つ情報はどんどんと共有することが重要になる。重要な情報が共有されていれば、会社としての進む道が見えます。その情報を知っていることで、目の前の10分の軌道修正ができる可能性が広がります。

(2) Web会議での社内打ち合わせ

社内打ち合わせは、基本オンラインでの開催になっていくことが考えられます。すでに、お多くの企業でZoomやTeamsなど様々なツールが使われていると思います。そんなオンラインでのWeb会議を、うまく進めるための秘訣がひとつあります。

仮にオンラインで会議を開催するのであれば、参加者全員がオンラインで参加すべきです。たとえば、部長と他数人はリアルの会議室に集まり、他の参加者はオンラインで参加するようなケースがあるかもしれません。しかし、このような一部はリアル参加、一部はオンライン参加というやり方はよくありません。

その理由は、情報格差が起きやすいから。リアル参加した人たちは、目の前に人がいることで、その場の空気や発言者の態度、または雰囲気がよりよくわかります。オンライン参加者では通信状態の影響で聞こえにくかったような小さな声も、リアル参加者はその声まで聞くことができます。

同じ内容の会議に参加していたとしても、リアル参加者とオンライン参加者のあいだでは大きな情報の差が生まれるのです。Web会議をする場合は、すべての参加者が等しくWeb会議で参加するべき。一人ひとりが、それぞれの1台のパソコンの前(スマホでも可)に座り、イヤホンをつけて参加する。これが、円滑なWeb会議を進めるポイントとなります。

(3) 部署内や同僚との交流

都内では3月末ころより在宅勤務に切り替えた会社も多いと思います。そろそろ在宅に切り替わってから1カ月半~2カ月程が経とうとしています。チャットやWeb会議のツールを駆使し、どうにかこうにか業務を推進しているところでしょう。

そして、この短期間の間に確実にすべての会社において減ったものがあります。売上でしょうか? もちろん売上が厳しい会社はあり奮闘されていることと思いますが、伸ばしている会社もあるのですべてには該当しません。すべての会社で減ったもの――それは、同僚との雑談です。

在宅勤務になり、どんどんリモートワーク化が進み、同僚と会うことがなくなった。そんな日々があたりまえになったなか、今日、同僚は元気かどうかみなさんご存知ですか? 今日、部下や上司の調子がいいかどうかご存知ですか?

新型コロナウイルスが流行する前、オフィスに通勤していたわたしたちは毎日同じオフィスで同僚と顔を合わせ、何気ない会話をしてきました。給湯室や休憩室でお茶を飲みたわいのない会話をしていました。タバコ部屋でも同様のことが行われていたでしょう。ランチタイムもそうでした。そうしたなかの雑談には、部内の、チームメンバーの、会社全体の雰囲気を嗅ぎ取る役割がありました。

雑談する時間がこの短時間で確実に減りました(一方、家族との雑談は増えたかもしれません)。そして、雑談が減ったがゆえに、同僚の調子が見えなくなり、また、タスクを進めるにあたって、些細な迷い事も出てくるようになったかもしれません。実はこれまで何気なくしていた雑談のなかには、日々の仕事の進め方の手がかりがあったのです。

この状況への対策としてわたしが推奨したいのは、垂れ流しのWeb会議チャンネルをひとつ開設することです。ランチタイムだけでも構いません。全員の何気ない会話が聞こえる場所をつくるだけで、無理に話さなくてもいいのです。

それこそ、ROM専(聞くだけ専門のこと)でもいいと思います。そうしたチャンネルを用意することで、みんなの調子が確認でき、円滑な社内コミュニケーションにつながると思います。

(4)上司と部下間のコミュニケーション

1回目の記事で配信しましたが、リモートで同僚と会わない時間が長くなるなかで重要なのは、「心理的安全性」となります。

ここでいう心理的安全性とは、話しやすさ、居心地の良さ、意見の言いやすさ、報告のしやすさ、相談のしやすさなどです。Web会議などリモートであればあるほど、本音のところは言い難くなる場合があります。指摘や怒ることは、これまで以上に冷たい対応だと感じられるようになってしまいます。

ウィズコロナ、アフターコロナの会社内では、これまで以上に部下にとっての働きやすさを考える必要があります。Web会議によって移動時間がなくなり効率性は俄然あがりますが、見えにくいものも増えてきます。見えにくいからこそ、いま部内の居心地はどういう状況かということに細心の注意を払う必要が出てくるのです。

また、対面で会えない上司とのコミュニケーションで悩んでいる人も多いかもしれません。チャットやWeb会議で、どう振る舞うといいでしょうか。ポイントは小さな相談事を簡潔に伝えること。業務がオンラインに移行することで、部長やマネジメント層は、これまで以上に大量のテキスト情報を多くの部下から受け取ります。移動時間もなくなったことで、Web会議の連続となっている日もあります。

そんななかで、また長いチャットのポストや、ページ数の多い資料がアップロードされたら、あなたの上司は悲しくなって思わず目頭を押さえるかもしれません。簡潔な情報共有、些細な変化の共有、Go/Not Goで答えられる質問、そうしたものが円滑なコミュニケーションにつながると思います。

ここまで3回の記事で、これからのウィズコロナ/アフターコロナの世界で「稼げる人と稼げない人の違い」「オンラインでの営業スタイル」そして、「会社を強くする社内コミュニケーション」について書いてきました。

いうまでもなく、これまでとは非連続の新世界がやってこようとしています。産業を問わず、国を問わず、現在は間違いなく危機的状況にあります。そんな状況下で、「予想もしないところから危機がやってきた」と思う人もいるでしょう。ただ、危機とは予想できないところからやって来るから危機なのです。そんなときの対策は、「想像」することです。

これから自分はどうするべきか、この危機のなかにおいて同僚や上司はなにを考えているのか、競合他社はどう動くのかなどを想像するのです。危機の後には必ずチャンスがやってきます。今回の記事が、あなたのビジネスにとって危機をチャンスにかえるための想像のきっかけになれば幸いです。

構成:岩川悟(slipstream)

小林慎和(こばやしのりたか)

大阪大学大学院修了。Columbia business school executive education 修了、野村総合研究所にて9年経営コンサルタントに従事。専門産業はモバイル、IT、エレクトロニクス、専門領域は新規事業立ち上げ、買収、海外展開など。2011年グリーに転職、2012年シンガポールにて起業。1社目Diixiは、イノベーションイベントのプロデュース、海外展開のM&A、アライアンス支援のコンサルティングに従事。以来国内外で7社創業。現在は2019年に創業したブロックチェーンのスタートアップ、株式会社bajjiの代表取締役。ビジネス・ブレークスルー大学で准教授も務める。

著書に『リーダーになる前に知って起きたかったこと』『世界標準の仕事のルール』『海外に飛び出す前に知って起きたかったこと』(すべてディスカヴァー・トゥエンティワン)などがある。オンラインサロン「アフターコロナ 〜答えのない時代をどう生き抜くか〜」を運営。