クルマの内燃機関を進化させることにこだわり続けてきたマツダが、独自の燃焼方法を盛り込んで開発した新たなガソリンエンジン「SKYACTIV-X」。マツダのほかのエンジン車に比べ少し高くつく新型エンジンだが、その魅力と課題とは。「MAZDA3」(マツダ3)に乗って考えた。

  • マツダの「MAZDA3」

    「MAZDA3」の「SKYACTIV-X」搭載モデルに乗って、このエンジンの魅力と課題を探った

エンジンの可能性を追求するマツダらしい新エンジン

新エンジン「SKYACTIV-X」は、マツダが独自技術「SKYACTIVテクノロジー」で生み出したガソリンエンジン「SKYACTIV-G」とクリーンディーゼルエンジン「SKYACTIV-D」に続く第3のエンジンとして誕生した。このエンジンもガソリンエンジンの1種だが、通常のガソリンエンジンとは燃焼方法が異なる。昨今、マツダはガソリンエンジンとディーゼルエンジンの両方に力を入れているが、その経験をいかし、双方の「いいとこ取り」を狙ったものなのだ。

そもそもガソリンとディーゼル(軽油)は、燃料の燃焼特性が異なるため、燃焼方法も異なる。エンジン内部で圧縮された混合気(燃料と空気を混ぜたもの)を引火しやすいガソリンは、スパークプラグによる引火で爆発させる。一方、引火はしにくいが発火しやすい軽油の場合は、混合気を圧縮することで、自己着火により爆発させる。

ディーゼルエンジンの燃焼方法だと、空気に対して燃料が少なくて済み、さらには圧縮された混合気が多数点で着火するので、得られるパワーも大きくなる。簡単にいえば、「SKYACTIV-X」は、このディーゼルエンジンのメリットをガソリンエンジンに取り入れることにより、少ない燃料で、より効率的な燃焼を行うことを可能にしたエンジンなのだ。

こうした手法は以前から考えられていたものだが、高度な燃焼制御が求められるため、実用化されたことがなかった。しかしながら、マツダは新技術「SPCCI」(火花点火制御圧縮着火)の開発に成功。つまり、エンジンの状態に合わせて、燃焼方法を変化させる制御を実現させたのだ。これを市販化したことは画期的な出来事だった。

  • マツダの「MAZDA3」

    ガソリンとディーゼルの「いいとこ取り」を狙ったマツダの新エンジン「SKYACTIV-X」(写真はエンジンカバーを外した状態)

新エンジンが備える2つの武器

SKYACTIV-Xエンジンは2つの武器を備えている。マイルドハイブリッドシステム「M hybrid」(エム ハイブリッド)と過給機のスーパーチャージャーだ。

1つ目の武器である「M Hybrid」は、発電機とエンジンスターターを一体化させた「ISG」(ベルト式インテグレート・スターター・ジェネレーター)によるエネルギー回生とモーターアシストを行う。回生による発電で得られた電力は、小型のリチウムイオン電池に充電。それを車載の電装品に供給することで、エンジンによる発電を減らし、エネルギー効率を高めるのが狙いだ。

マイルドハイブリッドなのでモーター走行はできないが、ISGで駆動をアシストすることにより、エンジンの負荷を低減する。また、ISGによるアイドリングストップからのスムーズなエンジン始動は、快適性を高めることにも役立つ。

もう1つの武器であるスーパーチャージャーは、性能向上の役割を持つ。過給を行うことで、力強い加速や伸びやかなエンジン回転をもたらすものだが、単に性能を高めるだけでなく、エンジン効率を向上させる役割も担うようだ。

SKYACTIV-Xエンジン搭載車の燃料はハイオク指定となるが、もちろん、レギュラーも使用できる。もし誤ってレギュラーを給油し、ハイオクとレギュラーがタンク内で混ざってしまっても、しっかりとしたエンジン制御が入るので、問題が起こることはない。ただ、ユーザーメリットを考えるとハイオクを給油するのがおススメだ。もしレギュラー仕様で発売していたら、現在のエンジンスペックよりも性能は低くなっていたという。レギュラーが一般的な日本で、あえてハイオク指定としている理由はそこにある。