バンクシーの作品展が日本で開催される! と聞いて心が躍ったのは筆者だけではないだろう。また、そこまでではなくとも、「なんか聞いたことある名前だね」と思う読者も多いのでは?
現代アート、ストリートアートの世界ではその存在感抜群なバンクシー。その作品展「BANKSY GENIUS OR VANDAL?(バンクシー展 天才か反逆者か)」は3月15日~9月27日、横浜の「アソビル」で開催されるので、紹介しよう。
バンクシーの「シュレッダー事件」
バンクシーを筆者が知ったのは2009年に出版された『Personal Effects』(マガジンハウス)だろうか。著者はストリート界のゴッドファーザーとも呼ばれる、藤原ヒロシ氏。裏原をリアル体験した私には、常に動向が気になる存在だった。
その書籍内で2006年にバンクシーが行ったCDを使ったゲリラ作品が紹介されていたのだ。これが、ファッション業界では知られていた存在から、もう少し知名度が高まったきっかけではないだろうか。
そしてバンクシーが監督し、2010年に公開されたドキュメンタリー映画「イグジット・スルー・ザ・ギフトショップ」(アップリンク)が公開されると、一気に認知され始めた印象だ。
そして、決定的だったのは2018年10月の「シュレッダー事件」だろう。自らの作品を、オークション会場で落札された瞬間に細断するという事件は世界中に拡散し、日本でもニュースなどで大きく取り上げられた。
バンクシーと現代アート
現代アートという巨大で巨額のマネーが飛び交う市場に対して、常に否定的な立ち位置でメッセージ出すバンクシー。今回の展示で紹介されるのは、彼の主戦場であるストリートの作品から、スタジオで制作されたものまで70点以上が展示されている。
現代アートの作品は作品のテキスト(メッセージ)だけでなく、作家が背景に込めたコンテキスト(由来や経緯)を読み取ること求められる場合が多い。そのため、時に作品は難解で、正直見て退屈することもある。
しかし、バンクシーの作品で退屈することはないだろう。もちろん、重層的なメッセージが込められてはいるが、表現された制作物は分かりやすく、100パーセントの理解が無くても楽しめる。
更に、展覧会用に無料の音声ガイドも日本語で用意。データは会場でQRコードを読み込んでダウンロードするか、公式サイトでも入手可能だ。なお、イヤホン使用が前提で、会場では機材の貸し出しはないので、注意が必要。
展覧会のプロデューサーであるアレクサンダー・ナチケビア氏は、バンクシーと個人的な知り合いではないという。しかし、2006年に初めてバンクシーの作品を見た時の驚きと心を揺さぶられた体験以来、常にバンクシーの作品を追いかけてきたと話す。
そして、バンクシー自身による展示会以外には、作品展開会が無かったことから、今回の展覧会を実施することを決めたそうだ。
今回の展覧会では「消費社会」「政治家に対する抗議」など7つのテーマを基に作品を選別。複数の個人コレクターの協力により、オリジナル作品や版画、立体オブジェクトなどを展示している。
筆者はアートに対する知識は少ないが、どの作品も十分に楽しむことができた。ここでの下手な紹介より、会場に足を運んで作品を鑑賞するのが一番だろう。
検索によりあらゆる情報を見つけることができる今、バンクシーの作品をディスプレイ(スマホ画面)で見ることはたやすい。しかしデジタルデータでなく、リアルデータを見ることも大事なことではないだろうか。現代アートという敷居を超えて楽しむことができるバンクシーの世界を堪能してほしい。
ちなみにすべての展示作品は撮影OKで、個人のSNS投稿での利用も可能だ。ただフラッシュ撮影、自撮り棒の使用、三脚はNGとなる。