2月17日、NTTコミュニケーションズ(NTT Com)は、新型コロナウイルスへの対応として、これまでの週2回月8回までという在宅勤務の上限を当面撤廃し、対象も派遣社員を含む全従業員が利用できるように変更した。

その後政府は、日本経済団体連合会、日本商工会議所、経済同友会、日本労働組合総連合会の労使団体に対して、風邪症状が見られる際に、休みやすい環境の整備、テレワークや時差通勤の活用推進、校が学級閉鎖になった際に、保護者である労働者が休みやすいように配慮、イベント開催の必要性の検討を要請した。

また2月28日には、全国すべての小・中学校に対し、3月2日から春休みに入るまでの間、臨時休校をするように要請した。

このような情勢の中、NTTコミュニケーションズが新型コロナウイルスにどのような対策を立てているのか、総務部長 兼 法務監査部長の小原琢彦氏に聞いた。

過去の経験が今回の対応に役立つ

同社が新型コロナウイルスへの対応を検討し始めたのは、1月中旬からだという。当時の日本の状況を考えると、かなり早い段階から警戒を行っていたことになる。

「武漢には弊社の現地法人の支店もあり、1月中旬から中国の武漢の情報は入ってきていました。中国のツアー客への感染も広がっていたため、この先、日本でもどこかのタイミングで在宅に切り替える必要があると思っていました」と小原氏は説明する。

  • NTTコミュニケーションズ 総務部長 兼 法務監査部長の小原琢彦氏

そのため、すでにあるテレワーク制度の活用推進は1月から行い、さらに2月17日には、制度を拡大し、全社的に在宅勤務を基本にした。

「国内の感染はじわじわ広がっている感じで、どのタイミングでどういう施策を実施するかを決定するのが難しい状況でした。トリガーとなったのが、国内で感染経路不明の感染者が発表された2月初旬で、そこからリモートにシフトする対策をやってきました」(小原氏)

3月5日時点では、派遣社員なども含む全従業員約7,000名のうち、65%にあたる約4,500名がテレワークを実施。利用率は、小中学校の一斉休校がスタートした3月2日以降は、1割程度上昇したという。

業務上どうしても出社せざるを得ない部署もあるが、その場合は輪番制でテレワークを行うなど、現場の運用でカバーしているという。

他社では、リモートワーク拡大により、VPNなどのネットワーク負荷が課題として出ているが、同社は現状、とくに問題なく利用できている。これには、昨年7月のテレワークデイズの経験が生きているという。

同社では、昨年のテレワークデイズに「実施団体」および「特別協力団体」として参加。NTT Com の全社員約6,350名がテレワーク勤務を実施した。この際、オリンピックに向けて自社のシステムやネットワークがテレワーク環境に耐えうるかの実証も行い、その結果、ネットワークの帯域不足が判明。2月17日の一斉テレワークへのシフトの際には事前にネットワークを増強する対策を実施したという。

また、2018年から「セキュアドPC環境」に切り替えた点も、今回、役立ったという。

同社は2011年から働き改革を実施する中で、全社的にシンクライアント環境を導入。PCにデータが残らないリモートワーク環境を整備した。しかし、ネットワーク環境がないと利用できない、スピードが遅い、遅延があるなどの課題があり、2018年からは「セキュアドPC環境」に切り替えている。

「セキュアドPC環境」は、「Office 365」、「Windows 10」、IDベースのセキュリティソリューション「Enterprise Mobility + Security」を含む「Microsoft 365」、SSL-VPNに対応した業務システムへの接続サービスである「Bizモバイルコネクト」やセキュリティマネジメントサービスなどを組み合わせたもの。常時インターネットとSSL-VPNの両方に接続でき、利用するサービスによって自動でどちらのネットワークを利用するか振り分ける。そのため、VPNに接続しなくてもローカルで作業が行えたり、常時インターネットの環境でOffice 365を利用できる。

すでに社内PCの98%が「セキュアドPC環境」になっており、それが今回の大規模な在宅勤務へのスムーズな移行に役立ったという。

  • 現在、社員が利用するセキュアドPC

「IT基盤が整っていないと、急激なタイミングでのシフトは難しいと思います。今回のような大規模なテレワークにおいては、制度、IT環境、運用/管理がかみあわないとうまくいかないと思います。これまでさまざまな働き方改革を実施する中で、オフィスのあり方や社員間のコミュニケーションの仕方などを改革してきた点が、今回の大規模テレワークにおいては運用や管理の面で生かされていると思います」(小原氏)

また、災害時の安否確認ツールも、全社員にメッセージを届ける際に役立っているといい、会社の方針を伝える際などに利用している。もちろん、社内ポータルでも掲示しているが、スマホや携帯に一斉通知できるため、全員に確実に伝えるという面で役立っているという。

小原氏は、今回のようなケースでは、社内ポータル、安否確認ツール、所属組織からの連絡など、複合的な連絡手段が必要だと話す。

終わりが見えない中での対策の難しさ

そのほか、会社として、手洗いやうがいなど基本動作の徹底、出張自粛、大規模会議の自粛、イベントの自粛を促している。

「会議やイベントは一斉禁止ではなく、精査してしてほしいとお願いしています。コントロールできるのであれば、予防対策をしっかりやって実施してほしいと言っています」(小原氏)

また同社では独自に社員からの相談窓口も設置しているが、これまで20件弱の相談が寄せられ、感染者の出た施設にいったがどうすればいいのかといった不安に関する質問が多かったという。

「ひとりひとりの感度や状況が違いますので、窓口を設けてよかったと思います」と小原氏は語る。

同社では現在、テレワーク実施による業績への悪影響は出ていないというが、実際に、社員の生産性がどうなっているかは今後検証していく必要があるとしている。また、長期化する在宅勤務で、社員間のコミュニケーション不足も懸念され、対策としては、かならず始業時にテレビ会議を行うなどの取組も一部部署では始まっているという。

小原氏は、「新型コロナへの対応は、しばらく続きそうですので、生産性の問題などのいろいろな課題が今後出てくると思いますので、社員への対応をしっかり行っていきたいと思います」と語った。