近畿日本鉄道は5日、名阪特急の新型車両80000系「ひのとり」の報道関係者向け試乗会を実施し、名古屋地区では名古屋線の近鉄名古屋~伊勢若松間を往復した。「ひのとり」は大阪難波~近鉄名古屋間を中心に、3月14日から運行開始する。
報道関係者向け試乗会は大阪地区・名古屋地区で行われ、大阪地区では大阪線大阪上本町~榛原間を往復したという。名古屋地区の試乗会では、10時32分頃、近鉄名古屋駅に6両編成の「ひのとり」が入線。報道関係者らを乗せて10時43分頃に発車し、往路は近鉄蟹江駅で列車待ち合わせを行った後、伊勢若松駅までノンストップで快走した。11時30分頃に伊勢若松駅に到着し、13分間停車した後、折り返して名古屋方面へ。復路は桑名駅で列車待ち合わせを行い、12時32分頃、近鉄名古屋駅に到着した。
途中、客室両端に2画面設置した大型液晶ディスプレイを活用し、先頭車からの展望映像を流す場面も。往復で2時間弱の乗車だったが、「くつろぎのアップグレード」のコンセプトが示す通り、快適性・居住性が向上したことを感じさせた。
近畿日本鉄道執行役員 鉄道本部企画統括部の湖東幸弘氏によれば、とくに両先頭車の「プレミアム車両」において、「ハイデッカー構造で高い位置から前方の景色を楽しめるところなど、現在も好評の『しまかぜ』のイメージを大事にして、当車両にも引き継いでいます」「『しまかぜ』で採用した横揺れ防止装置も、『ひのとり』のプレミアム車両は電動式でさらにグレードアップしており、横揺れを感じることなくご乗車いただけると思います」とのこと。居住性・快適性で新幹線のグリーン車と遜色なく、新幹線の普通車指定席・自由席と比べてもリーズナブルな料金設定ということもあり、「敷居の高さを感じずに乗れるのでは。いろんな方にご利用いただきたい」と話していた。
「ひのとり」の車両名称は、先進的でスピード感ある車体フォルム、深い艶感のあるメタリックレッドといった外観デザインに加え、ゆったりとした空間や上質なサービスを提供する気品ある車両をイメージし、翼を広げて大きく飛翔する「ひのとり」と重ね合わせ、命名されている。先頭車の車体側面にロゴマークも掲出した。両先頭車を「プレミアム車両」、中間車を「レギュラー車両」とし、全席にバックシェルを設置して、後部座席の乗客に気兼ねなくリクライニングできるように工夫されている。
「プレミアム車両」は全席3列シートで、座席に本革を使用し、前後間隔は130cm。電動リクライニングで伸縮式の電動レッグレストや高さ・角度調整機能付きヘッドレスト、読書灯、収納式の大型テーブル、小型テーブル・カップホルダーなどを備え、コンセントも設置している。ハイデッカー構造と前面・側面の大型ガラスで見晴らしの良さも確保した。フルカラーLEDを使用した天井間接照明による上質な照明演出も。デッキにカフェスポットを設け、コーヒー・お菓子等を販売する。
「レギュラー車両」は横4列(2列+2列)の配置で、座席の前後間隔は116cm。バックシェルの部分に大型テーブルなどを備え、コンセントも設置している。ガラス製の荷棚と仕切扉を採用した、明るく調和の取れたインテリアデザインも特徴。車いす対応席を用意し、多目的トイレにはチェンジングボード、ベビーベッド、オストメイト対応設備を配備している。各車両に大型荷物を収容できるロッカーや荷物置きスペースを設置。サービス設備として、多用途で活用できるベンチスペースを一部車両に設けたほか、3号車に喫煙専用室を用意した。なお、座席は全席禁煙となる。
「ひのとり」は今後、2月8日に有料試乗会ツアー、2月15日にお披露目会、2月16日に有料撮影会ツアー、2月22・23・24・29日と3月1日に無料試乗会を行った後、3月14日に3編成(いずれも6両編成)で営業運転を開始する予定。大阪難波~近鉄名古屋間の名阪特急(大阪難波発近鉄名古屋行6本、近鉄名古屋発大阪難波行6本)をはじめ、大阪難波~近鉄奈良間の一部特急列車(大阪難波発近鉄奈良行1本、近鉄奈良発大阪難波行1本)でも使用される。「ひのとり」では運賃・特別急行料金の他に特別車両料金が設定され、大阪難波~近鉄名古屋間で乗車した場合、合計金額は「プレミアム車両」5,240円、「レギュラー車両」4,540円となる。
2020年度中に全11編成(6両編成×8編成、8両編成×3編成)を導入し、大阪難波駅・近鉄名古屋駅を毎時0分に発車する停車駅の少ない名阪特急を中心に、2021年3月までに「ひのとり」へ順次置き換える予定。これにともない、「アーバンライナー」は大阪難波駅・近鉄名古屋駅を毎時30分に発車する名阪特急へ順次置き換えられる。