2019年6月から施行された「チケット不正転売禁止法」。チケットの不正転売を禁止する法律ですが、実際のところ定価よりも高い金額でチケットが取り引きされている場面は多くあるようです。

友達に定価に手数料分を足した金額でチケットを譲ったり、TwitterなどのSNSで「相場理解」と定価より高い金額で取り引きをしたりする行為は法律違反となるのでしょうか。

そこで今回は弁護士の柳川智輝氏に、チケット不正転売禁止法について状況別に解説してもらいました。

  • チケットの取引、何がアウトなの?

    チケットの取引、何がアウトなの?

チケット不正転売禁止法とは?

チケット不正転売禁止法は、正確には「特定興行入場券の不正転売の禁止等による興行入場券の適正な流通の確保に関する法律」といい、チケットの不正転売を禁止する法律です。

「特定興行入場券」とはコンサートやイベントのチケットのことを示し、主に以下のポイントに当てはまるものが対象となります。

●イベントの日時・場所の他に、そのチケットで入場することができる人または座席が指定されているチケットである

●転売が禁止されていて、チケットにその旨が表示されている

●入場することができる人あるいは購入者の氏名と連絡先が購入時に確認されていて、氏名・連絡先が確認済みということがチケットに表示されている

法律に反すると、「1年以下の懲役もしくは100万円以下の罰金、またはこれを併科する」という罰則があります。

不正転売の考え方

不正転売の「不正」に該当するかは、以下の4点で判断することになります。

(1)興行主の事前の同意を得ていないこと
(2)興行主の事前の同意を得ずに転売することを業として行う、すなわち「たまたま単発的に行うのではなく反復継続して行う意思を持っている」こと
(3)有償での譲渡であること
(4)興行主等の当該興行入場券の販売価格を超える」価格を販売価格とすること、すなわち「定価より高い値段で転売する」こと

以下、この点を踏まえて、対象となるチケットが「特定興行入場券」に該当することを前提に見ていきます。

チケットを定価(手数料なし)で売る場合

定価での転売の場合、(4)の「定価より高い値段で転売する」という要件を満たしませんので、不正転売には該当しないことになります。

チケットを定価と手数料分を合わせた金額で売る場合

結論としては、チケット不正転売禁止法に反するかどうかはグレーであり、個別の事情に基づいて判断されることになります。

不正チケット転売禁止法では、「興行主等のチケットの販売価格を超える価格をその販売価格とする」ことを禁止しています。すなわち、法律で禁止しているのはそのチケットの「興行主等のチケットの販売価格」を超える価格での転売であって、購入するために必要となった実費は含まれないものと考えられます。

そのため、定価に手数料を足してチケットを売った場合には、「興行主等のチケットの販売価格を超える価格」での転売という要件に該当すると判断される可能性があります。

一方で、元々チケット不正転売禁止法は、適正な流通を阻害するような高額なチケットの転売を規制することを想定していると考えられるため、手数料を上乗せしてチケットを転売することは、必ずしも不正転売には該当しないと解釈される可能性があります。

例えば、手数料などの実費を上乗せする程度では、チケットの転売を通じて利益を得るということにはつながりにくいため、不正転売の要件である「業として」、すなわち繰り返して転売を行うものではないとして、不正転売には該当しないと解釈される可能性はあります。

チケットをチケットサイトやフリマアプリなどで売る場合

まず、不正転売については、方法や場所を特に限定していません。そのため、不正転売を行う方法がインターネットや電話、対面などいずれの販売方法であっても不正転売に該当することになります。

そのため、チケットサイトやフリマアプリについても同様に規制の対象になり、あとは「不正転売の要件に該当するかどうか」という点で判断することになります。

例えば、たまたま自身で興行を観覧する目的であったが行くことができなくなってしまったなどのように単発的に転売を行った場合や、売却するときの金額が元々の販売価格と同じかそれより低ければ、「業として」の要件、あるいは、「当該興行入場券の販売価格を超える価格を販売価格とすること」(定価より高い値段で転売する)の要件を満たさないことになり、不正転売には該当しません。

一方で、興行主の同意を得ずに、このようなチケットの転売を繰り返し行っていて、売る際の価格を元々の販売価格よりも高い値段で売っている場合などは、不正転売に該当することになります。