ポルシェは同社初の100%電気自動車(EV)「タイカン」を日本で初めて公開した。エンジンを搭載せず、ガソリンも使わないポルシェの電動4ドアセダンとは一体、どんなクルマなのか。ジャパンプレミアの会場でポルシェジャパンに話を聞いてきた。

  • ポルシェの「タイカン」

    ポルシェが初めて開発した100%EV「タイカン」。ガソリンではなく電気を動力源とし、エンジンではなくモーターで駆動する

電動ポルシェはポルシェか

「超高度な電動パワートレインと真のポルシェが持つべき特性の全てを兼ね備えるクルマ」。ポルシェジャパンのミヒャエル・キルシュ社長は、タイカンをこう紹介した。

「タイカン」は前後に搭載する2基のモーターで走るEVだ。グレードは「Turbo S」「Turbo」「4S」の3種類で価格は未定。日本仕様のスペックは決まっていないそうなので、この記事で紹介する数値データは全て欧州モデルのものとなるが、Turbo Sは最高出力625ps(オーバーブースト出力761ps)、最大トルク1,050Nmというとてつもないパワーを持ち、停止状態から時速100キロまでの加速(ゼロヒャク加速)に要する時間はわずか2.8秒だという。4Sは最高出力435ps(オーバーブースト530出力)、最大トルク640Nmだ。フル充電で走れる距離(航続距離)は、4Sで463キロ(WLTPモード)となっている。

  • ポルシェの「タイカン」

    ボディサイズは全長4,963mm、全幅1,966mm(サイドミラーの端までだと2,144mm)、全高はTurboが1,381mm、Turbo Sが1,378mm

EVであることは、タイカンのデザインにも影響を与えている。例えばフロントノーズを見ると、中にエンジンを積まないEVではボンネットを低くできるので、フェンダー(タイヤを囲む張り出した部分)との高低差を強調できたそうだ。リアでは、エンジン車であればマフラーを取り付ける場所に大型のディフューザーを装着し、空力性能を向上させている。

  • ポルシェの「タイカン」

    張り出したフェンダーはポルシェらしさを象徴する部分でもある

おそらく、ポルシェファンが気にしているのは、「電動化してもポルシェはポルシェなのか」という点なのではないだろうか。そのヒントになりそうな話を聞けたので、お伝えしておきたい。それは、タイカンの「回生」に関する話だ。

EVは減速する際、発生する運動エネルギーをモーターを用いて電気エネルギーに変換し、バッテリーに回収する仕組みになっている。なので、EVはアクセルペダルを戻した時、エンジン車よりも強めに減速する。この仕組みをうまく使うと、アクセルペダルのオン/オフだけで走ったり、止まったりする「ワンペダル走行」を楽しむことができる。

  • ポルシェの「タイカン」

    電動ポルシェに昔ながらのポルシェファンは納得できるのか

ポルシェジャパン マーケティング部のアレキサンダー・クワースさんによると、タイカンではあえて、回生の効きを弱くして、「ワンペダル走行」ができないような仕組みにしてあるそうだ。回生の効き具合は3つのモードから選べるそうで、「オフ」ではほとんど効かず、「オン」では「ゆるく」効く。そして「オート」を選べば、前を走るクルマの挙動を捕捉して、回生を強めたり弱めたりするのだという。

なぜ、そんな仕組みにしたのか。それは、ポルシェを運転すること、操ることを、ドライバーに楽しんでほしいという思いからだ。加速する時はアクセルペダル、減速する時はブレーキペダルを踏んで、クルマに意思を伝える。スポーツカーを操作する楽しみを残したいという考えから、ポルシェはあえて、タイカンにワンペダル走行をさせないのだ。

  • ポルシェの「タイカン」

    「タイカン」からは、スポーツカーを操る喜びをEVでも感じもらおうというポルシェの工夫が感じられる

タイカンの納車は2020年後半に開始予定とのこと。このクルマが欲しい人、あるいは興味がある人は、「期間限定タイカン予約プログラム」というホームページを立ち上がるそうなので、そこで登録しておくといいだろう。クワースさんによると、タイカンは世界中の市場で取り合いの様相を呈し始めているそうなので、予約プログラムを通じ、日本市場の熱意の高さを見せておくことで、販売台数の割り当てを増やすことに間接的に貢献できるかもしれない。