レシピ投稿サイトなどで近年、「酢納豆」というキーワードを目にする機会が増えてきている人もいるのではないだろうか。普段の食卓に並ぶ市販の納豆に酢を混ぜるだけというごくシンプルな料理なのだが、「納豆」+「酢」という体によいイメージを抱きやすい食材の掛け合わせだけに、この酢納豆のさまざまな健康効果も叫ばれている。
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その一つにダイエットがあるのだが、果たして本当にその効果は得られるのだろうか。管理栄養士の真野稔子さんに、酢納豆の栄養素や効果的な食べ方、酢納豆を活用したレシピについてうかがった。
酢納豆に期待できるダイエット効果
酢に含まれるクエン酸は生活習慣病予防の効果が見込め、納豆は脂質の代謝に必要なビタミンB2が豊富に含まれている。これらの事実から、酢×納豆のコラボは確かにダイエット効果が期待できそうだ。
酢を摂取する栄養面のメリット
真野さんは、酢を摂取する主なメリットとして以下の3点をあげる。
・疲労回復
・スタミナ増進
・各種予防(肩こり、腰痛、シミ、ソバカス、肥満、生活習慣病)
「お酢には、お米や玄米などの穀物酢、リンゴなどが原料の果実酢、黒酢などがあり、麹菌や酢酸菌を加えて発酵させた醸造酢と、酢酸を水で薄めてアミノ酸を加えた合成酢に分けることができます。お酢の主な成分は酢酸ですが、そのほかにクエン酸、コハク酸などの有機酸やアミノ酸、糖類なども含まれ、独特の風味がかもし出されています」
クエン酸は食物を体内でエネルギーに変える働きをスムーズにするため、疲労回復やスタミナ増進には欠かせない成分。疲労の原因となったり、肩こりや腰痛のもととなる乳酸の生成を抑えたりする。その他、ビタミンCの酸化や、肥満や過酸化脂質の生成を抑える働きがあり、シミやソバカス、ダイエットや生活習慣病の予防にも役立つと考えられている。
また、酢には水に溶けにくいカルシウムを水溶性にする働きがあるので、カルシウムを含む食品と一緒に食べれば、効率よく吸収できるという。
納豆を摂取する栄養面のメリット
もう一方の納豆を摂取するメリットも以下にまとめてみた。
・たんぱく質源
・脂質の代謝に必要なビタミンB2が豊富
・たんぱく質の消化吸収を高めるムチン
・血栓溶解作用(ビタミンK、ナットウキナーゼ)
・美肌作用(ビタミンB2、レシチン、ムチン)
納豆は納豆菌による発酵作用で、たんぱく質やレシチンが消化吸収しやすい状態にあり、納豆のネバネバは、たんぱく質の消化吸収を高めるムチンを含んでいるとのこと。
「納豆に多いビタミンB2は、脂質の代謝や細胞の生成に関わるビタミンです。納豆菌により繊維などがある程度分解されて、消化性が良くなるとともに、ビタミンB2などが生合成されることによって栄養価が高くなります。なんとビタミンB2はゆで大豆の約6倍になります。納豆菌が大豆を分解して作った酵素ナットウキナーゼや、ビタミンKは血液中の血栓をできにくくする血栓溶解作用があります」
なお、国産大豆はたんぱく質や炭水化物が多く、脂質は少なめとなっており、栄養面では輸入大豆より国産の方が優れていると言われているそうだ。
酢納豆の作り方
まずは酢納豆に必要な材料と作り方を紹介しよう。
【材料】
- 納豆(1パック)
- 納豆のたれ
- 酢(小さじ1/2~1: 好みにより調整可)
【作り方】
(1)市販の納豆パックを開ける
(2)納豆パックに専用のたれと酢を入れる
(3)たれと酢をまんべんなく納豆に混ぜる
いわゆる「普通の納豆」に適量の酢をプラスするという一手間を加えるだけで酢納豆が完成する。
酢納豆の目安量は
だからと言って、毎日の食事で酢納豆をドカ食いしても意味はない。真野さんは一日の摂取量の目安は40g(1パック)程度が適切だと話す。
「納豆は大豆を発酵して作られる大豆製品。大豆は『畑のお肉』と呼ばれるほどたんぱく質が多く、低カロリーではありますが、脂質も含まれています。そのため、たんぱく質の分類、つまり主菜(肉、魚、大豆製品、卵)となるメイン料理の仲間になります。主菜のたんぱく質分を含めると、やはり1パック程度が適切な量になります」
たとえ身体に良いからといっても、食べ過ぎはやはり栄養バランスが偏り、身体に影響を与えるので注意が必要だ。
「たとえば、朝食で納豆を1パック食べた場合、昼と夕食は、お肉かお魚などの料理を食べるなど、調整できるとバランスがより良くなります。朝、昼、晩のどこで食べてもいいですが、朝食がより好ましいです。特に朝のたんぱく質は、目覚めの体温上昇ととともに、基礎体温の向上につながります。手軽に食べられる点を含め、朝に納豆を食べるのはおすすめです」
酢納豆を活用したレシピ
酢納豆を食べるときには、「酢納豆+薬味(ネギなど)+カルシウム食品」の組み合わせがよいという。
「薬味にネギを入れると、ビタミンB群の吸収を助けます。また、納豆にはビタミンCやカロテンが含まれていないので、それらを補います。カルシウムを含んだ食品、ひじき、ごま、チーズ、しらす干し、しそ、小松菜などを加えるとカルシウムを効率的に摂(と)れます」
酢納豆+ゴマ+岩のり+ネギ
納豆: 1パック(40g)
酢: 小さじ1
ゴマ: 小さじ1
岩のり(佃煮): 小さじ1
ネギ: 適量
酢納豆+ゴマ+モッツァレラチーズ+大葉
納豆: 1パック(40g)
酢: 小さじ1
モッツァレラチーズ: 15g
ゴマ: 小さじ1
大葉: 1枚
普段食べている納豆に酢をはじめ、さまざまな食材をちょい足しする手間は面倒かもしれない。ただ、それを補って余りある健康面でのメリットがあるので、真野さんの意見を参考に自分だけの「オリジナル酢納豆」を開発してみてはいかがだろうか。
※写真と本文は関係ありません
取材協力:真野稔子(まの・としこ)
管理栄養士。モデルから食のアドバイザーへ転身。食は健康の基本であり、美の基本であるという考えから、お腹の中からキレイを作ろうというコンセプトに基づき、シンプルでナチュラルな食生活を提案。パーソナル管理栄養士として、また病院(病棟・外来)・企業・行政機関などでの栄養指導、カフェなどのメニュー開発や各種メディアに出演するなど幅広く活動中。
オフィシャルブログ「Food Care ~食べて身体をケアしましょう~」・「理想の身体を手に入れる・美人ごはん お腹の中からキレイを作ろう」やフェイスブックでも情報を発信している。