SK Hynixは10月21日、1Z nmプロセスを採用した1チップで16Gビットを実現したDDR4 DRAMの開発に成功し、2020年より本格的な販売を開始すると発表した。

同社の1Z nmは、10nm台プロセスの第3世代にあたるものであるが、同社具体的な数値を明らかにしていない。すでに1Z nm世代のDRAMとしては、競合のSamsung Electronicsが2019年3月に、8Gビット品を2019年下半期から量産を開始することを、Micron Technologyが同8月に16Gビット品の量産を開始したことをそれぞれアナウンスしており、プロセスの微細化競争が激化している。

SK Hynixでは、1Z世代化により、DRAMの生産性が前世代(1Y nm)比で約27%向上するとしている。また、静電容量の最大化に向け、キャパシタの動作安定性を向上させることを目的に、これまでのプロセスで採用されていない新材料を採用したとするほか、高額なEUV露光装置を用いずに生産できるため、コスト面の競争力があるとも主張している。

この1Znm DRAMのデータ転送速度は最大3200Mbpsとしているが、電力効率を向上させており、1Y nm世代の8GビットDRAMチップで構成された同容量のモジュールと比較して、電力消費は約40%削減できるという。

さらに同社では、次世代モバイルDRAMであるLPDDR5や高性能DRAMであるHBM3など、さまざまなアプリケーションに1Z nmプロセスを適用していくことを計画していることも明らかにしている。

DRAM製造へのEUV導入はいつになる?

今回のSK Hynixの発表において最大の注目ポイントは、少なくとも1Z nmプロセスではEUVを導入しない、ということが明らかになった点であろう。韓国の半導体業界に詳しい関係者によると、同社は利川(イチョン)の本社工場に研究開発用EUV露光装置を少なくとも2台導入しており、現在同所に建設中で2020年下期に竣工が予定されているのM16製造棟をDRAM EUVプロセス専用棟とするとみられていることから、EUVのDRAMへの本格導入は2021年になる可能性が高いという。また、すでにEUVを手がけるASMLにそれ用のEUV露光装置を発注したとのうわさも流れている。

一方、競合のSamsungは、すでにロジックICやファウンドリ向けにEUVの導入を進めているが、華城(ファソン)に建設中の同事業部門EUV専用棟が本格的稼働するのは2020年になる模様である。SamsungもDRAMの製造にEUVを導入することを検討しているとされるが、具体的な計画は明らかにしていない。なお、ASMLは2020年に合計35台のEUV露光装置の出荷を予定しており、その中にはDRAMの量産に向けたものも含まれていることを認めているが、具体的な顧客名は公開していない。しかし、DRAM大手はすでにSamsung、SK Hynix、Micronの3社のみであり、遅かれ早かれ、各社ともにEUVを1α世代以降のどこかのタイミングで導入していくことが見込まれる。

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    SK Hynixの1Z nmプロセス採用16GビットDDR4 DRAMチップと、それを搭載したモジュール (出所:SK Hynix)