この半導体ニュースのまとめ

・三菱電機が第8世代IGBTを搭載した1.2kVモジュールを発表
・電力損失を従来比最大約19%低減し、インバーターの省エネ化に貢献
・パッケージ互換と電流強化により、既存システムの高効率化・高出力化を容易に実現

三菱電機は5月19日、産業用インバーターや大容量モータードライブ装置向けパワー半導体モジュールの新製品として、「産業用NXタイプ 1.2kV IGBTモジュール」10機種のサンプル提供を6月15日から順次開始すると発表した。最新の第8世代IGBTを搭載することで、電力損失を従来製品比で最大約19%低減し、産業機器の省エネルギー化に貢献する。

  • 「産業用NXタイプ 1.2kV IGBTモジュール」

    「産業用NXタイプ 1.2kV IGBTモジュール」の1つ「CM1000DX-24M」の外観 (出所:三菱電機)

脱炭素化を背景に高まるパワー半導体の重要性

近年、脱炭素社会の実現に向けて、電力を効率的に変換するパワー半導体の重要性が一段と高まっている。特に産業分野では、工作機械や産業用ロボットなどのモーターを駆動・制御するインバーターにおいて、消費電力削減が大きな課題となっている。

こうした中で、インバーターに組み込まれるパワー半導体モジュールに対しても、高効率化と高出力化を両立する性能向上が求められるようになっている。

第8世代IGBTで電力損失19%低減

同製品は、ゲートのダミートレンチを上下2段に分割することでゲート容量を最適化した独自の「SDA(Split Dummy Active)構造」ならびに、チップの裏面に深いn層を形成することでダイナミック動作時のキャリア制御を行う構造である「CPL(Controlling carrier Plasma Layer)」を採用して開発された第8世代IGBTを採用している点が最大の特徴。これらの構造を採用することで、スイッチング時の電圧変化(dv/dt)の抑制や過電圧の低減を実現。これにより、ターンオン/ターンオフおよび導通時の損失を抑え、第7世代製品と比べて最大約19%の電力損失低減を達成したとしている。

同一パッケージで高出力化にも対応

加えて、IGBTとダイオードのチップ配置を最適化することで、従来と同一パッケージサイズを維持しながら、従来製品比1.25倍となる定格電流1000A品を新たにラインアップ。これにより、既存のインバーター設計を大きく変更することなく、出力強化が可能となり、高出力化と設計資産の活用を両立できる点も特徴とする。

パッケージ互換で開発期間短縮にも寄与

さらに、従来の産業NXタイプパッケージを継続採用し、外形サイズや端子配置を共通化したことで、既存製品からの置き換えを容易にしており、インバーター開発における設計変更を最小限に抑え、開発期間の短縮なども図ることができるともしている。

パワー半導体需要拡大を背景にポートフォリオ強化

三菱電機のパワー半導体モジュールは、産業、車載、電力、鉄道など幅広い分野で採用されており、IGBT技術の進化を軸に性能向上が進められてきた。今回の第8世代IGBT製品搭載モジュールは、その延長線上に位置付けられ、省エネと高出力の両立を求める産業用途への対応を強化する取り組みといえる。

今後も同社は、パワー半導体需要の拡大に対応しながらニーズに合わせた製品を迅速かつ安定的に供給していくことで、各産業分野のパワーエレクトロニクス機器の省エネ化を加速させていき、GX(グリーントランスフォーメーション)への貢献を目指すとしている。