カスピ海と黒海の間に位置する南コーカサスにある国、ジョージア。最近では、ラグビー代表が来日したり、ジョージア出身の力士・栃ノ心が活躍していたりと、スポーツでその国名を耳にした人も多いのではないだろうか。
実際、ジョージアは人口約390万人とコンパクトな国ながら、レスリングでは五輪でメダルを獲得しており、柔道の強豪国でもある。ユネスコ無形文化遺産にも登録されている同国発祥の古式武術「チダオバ」は、レスリングや柔道と似ており、肉体派の競技が盛んな国民性であることがうかがえる。
よく耳にするようになったとはいえ、ジョージアがどのような国なのか、詳しく知らないという人のほうが多いのではないだろうか。そこで、天皇陛下の即位礼正殿の儀に合わせて来日中のサロメ・ズラビシュヴィリ大統領に、ジョージアの魅力について話を聞いてきた。
―― まだ日本に到着されたばかりとお聞きしていますが、日本の印象はいかがでしょうか
日本に来るのは今回が初めてではないんです。日本はとても古く大きな文化、文明の国だと以前から感じています。本日も日本の寺院や庭園を拝見させていただくことができましたが、よりその印象が強くなりました。一方で、とても賑やかで人の多いところも拝見しました。とても活気がある国だと思います。
―― 楽しんで頂けているようで何よりです。今、日本ではジョージアワインの売り上げが伸びています。その点についてはどのように考えていらっしゃいますか
私、実はワインアンバサダーだと自認しているんです(笑)。ですから、ジョージアワインを広めていくことは、私の役目だと思っています。先ほど申し上げたように、日本は文化、文明の国で、とても洗練されたテイストを持っていると思います。
そういう方々だからこそ、ジョージアワインがとっても合っているんじゃないでしょうか。ジョージアワインは少しクセのある個性的な味わいですが、味わいだけではなく8千年の歴史を誇るワインでもあります。ジョージアにとってワインは国の制度の中でも大きな役割を果たしてきたものです。その深さを理解していただけるのは、やはり日本の方ではないかと思っています。
ジョージアワインの展示会が日本でも行われましたが、その前にフランス・ボルドーでも実施されています。ボルドーはフランスでワインにおける首都のようなところ。そのボルドーでもジョージアワインは、ワイン発祥の地として認められました。そこに関しては私も疑問を抱くことはありません。
―― ジョージアワインの特長にはどのようなものがありますか
先日、ジョージアワインの土着品種が栽培されているところを訪れました。そこだけでも460品種もの土着品種があったんです。つまり、いろいろな料理に合わせることができるんです。もともとジョージアには525種類の土着固有種があります。そのすべてがワインに使われているわけではありませんが、現在は若手のワインメーカーが新しい実験を行っていて、新しい品種の開発も行っています。この多様性がジョージアワインの大きな特徴だと私は考えています。
―― 展示会の成功をはじめジョージアワインが世界市場において、とてもうまく発信されているように思います。今後、どのようなところを強みとして市場にアピールしていくのでしょうか。
ジョージアの長い歴史の中で、攻め込まれてしまったことがたくさんあったんですが、相手はジョージアのブドウ畑を攻撃していたんです。その後、国を再生するために、まずワインの栽培から始めたんです。ブドウの栽培がジョージアという国の復活が始まっています。
現在も、ワインはとてもシンボリックな役割も果たしています。他のワイン産地と比較するわけでは無いですが…… 多様性として、品質として、負けないものを持っていると思います。将来にわたって、高いポテンシャルがあると考えています。今は、世界に向けての最初の段階ですね。
―― 日本ではワインだけでなくジョージア産の炭酸水などもスーパーやコンビニなどでも気軽に買えるようになってきました。スポーツの分野でもジョージア出身の方が活躍しており、日本での認知が高まっているところだと思います。ジョージアに興味を持った日本人に、ぜひ観光の魅力も教えてください
ジョージアは非常に小さい国で限られた面積ではありますが、砂漠もある一方で5000m級の山もあります。でも、そのすべてを見るとしても、思うほどの時間は必要ないんですよ。環境のほか、動物や植物など、この自然の多様性が一番目立つ特徴でしょう。また、文化的にも非常に豊かな国です。私よくフランス人に、フランスのチーズよりもジョージアには教会が多い、なんていうんですけど(笑)、それくらい教会がたくさんあります。6世紀ごろから10世紀ごろの歴史ある教会が数多くあって、文化的なツアーも楽しむことができます。
文化で言いますと、世界的に有名なジョージア出身の歌手もおりますし、オペラなどのツアーも多くあります。さらにジョージアは今、スポーツ大国としても注目を集めています。そこは、相撲という日本の国技の中で活躍しているジョージア出身の力士もおりますから、日本の皆さんにも感じていただけていると思います。
そして一番大事なことは…… ジョージア料理がおいしい、ってことですね(笑)。グルメツアーもおすすめですよ。
世界で最初にキリスト教を国教としたからこその歴史ある教会の数々、万年雪を抱くほどの高く雄大なコーカサス山脈、亜熱帯のような気候の黒海エリアなど、その狭い国土を感じさせない豊かな魅力がジョージアにはたくさんある。ひとまずは気軽に日本でも楽しめるジョージアワインや炭酸水を楽しみつつ、渡航の計画を立ててみてはいかがだろうか。