台風などが発生するたびに何かと話題になる日本人の社畜ぶりや、リモートワーク・在宅勤務という働き方。リモートワークは、通勤の煩わしさから解放されるという大きなメリットがあるが、一方で「メリハリがつかない」「孤独感が募る」などといったデメリットを指摘する声も目立ってきている。
しかし、働き方改革の一環として、リモートワークを推進・導入する企業は着実に増えている。ビジネスチャットツール「Chatwork(チャットワーク)」を展開しているChatwork株式会社も、リモートワークを推進している企業のひとつだ。
今回、同社の法務総務部で週5日の勤務日のうち3日間を在宅で働いているという矢部優子さんにインタビューを敢行。
リモートワークの導入事例はこれまでマイナビニュースでも幾度か取り上げてきたが、同社はインフラ事業としてビジネスチャットツールを展開し、リモートワークを支援してきた側でもある。そんな同社で働く社員が語る、アナログとデジタルを使い分ける働き方とは。
出社しなければならない理由は……ハンコ文化?
「私が入社したのは、まだ『Chatwork』が旧社名『EC studio』だった頃で、今年9月でちょうど入社10年になります。当時は私が結婚してすぐの時期で、週5日・10-17時というフルタイムより少し短い準社員のような形で勤務していました」と入社当初を振り返る矢部さん。
入社して2年ほど経った頃、第一子を授かったのを機に会社へ相談して在宅勤務を始めたという。
「在宅勤務を相談した時は手探りな感じで。結局、出産前は体調の関係ですぐに産休に入ってしまったんですが、産後、本格的に仕事に復帰する3カ月前から、1日2時間など少しずつ在宅勤務で仕事に復帰していきました」
EC studio時代から、社内では「Skype」を業務で多用していたとのこと。矢部さんが在宅勤務を始めた頃は、より使い勝手のいい社内用ツールとして「Chatwork」が開発され、ちょうど一般ユーザーへのサービス提供も始まったタイミングだったそうだ。
矢部さんは現在、梅田にある大阪オフィスに月曜日と金曜日の週2日出社し、残りの火〜木曜日の3日間は在宅で勤務している。
同社の法務総務部は、法務担当と総務担当が所属している部署。計3名が所属しており、矢部さんは東京オフィスの社員と2人で総務の業務を担当しているという。
どちらかというと、リモートワークを実践しているのはエンジニアやクリエイターといった業種の方が多い印象で、法務や総務などのバックオフィス業務はオフィスでしかできない作業が多いといったイメージもあるが……
「労務手続きなども行うので、環境的にはセキュリティの問題でカフェなどではなく自宅で働いてまして、会社から支給されているノートパソコンと会社から格安で譲り受けたモニターを使っています」
「東京のスタッフが出社してくれているからということもありますが、たいていのことは在宅でもすべてクラウド上で対応できていて、書類もすべて自宅で作成します。備品の発注などもチャットで依頼を受けて私がPCから発注すれば、当日もしくは翌日にオフィスに届きます。基本的に台風などの時も上長に相談して、OKなら在宅というスタイルですね。オフィスでしかできない業務としては社印や取引印など印章を扱うような権限周りで。オフィスに出社して対応する必要がある業務と、在宅で対応する業務は明確に分けて働いています」
ちなみにインタビューを行ったこの日、矢部さんの上司である本部長は母方の実家がある徳之島でリモートワークをしていたのだとか。
Chatworkだからこそ対面のコミュニケーションを大切に
従業員の結婚時の手続きや経費精算など職務上、飛び込みの相談も多そうだが、タスク管理もオンラインで円滑に行われているという。
「Chatwork内に労務面もできるような法務総務部と他部署のスタッフ用の部屋があり、そこでクラウド上にあるマニュアルに案内するなど、適宜レスポンスを返す形です。部署ごとの部屋もあって、出勤・退勤はチャットルームに報告する決まりになっています。チャット上で上司がすぐに状況を把握しやすくなっていますし、週1回のWeb会議で課題などを話し合い、大きな問題も起きないようにしています」
同社はオフィスに固定電話がなく、基本的に社員に電話対応を推奨していないことで知られているが、一方で生のコミュニケーションの必要性や意義も重視している。
「チャットだけでは拾いきれない部分もありますので、私も出社した時はなるべく他のスタッフと一緒にランチへ行くようにしています。スタッフ同士で食事に行くと会社から月4,000円までランチ代が支給されるという食券制度があり、昔からみんなで一緒にランチによく行く社風で。ゴリゴリのIT企業ではあるんですが、ビジネスチャット事業をやっているからこそ、リアルでのコミュニケーションも大事にしています」
3歳になる第二子もいるという矢部さん。あと数年は現在のような勤務スタイルを続けていきたいと考えているようだ。
「下の子が小学校に入って少し落ち着いたら、オフィスに出社する回数もまた調整したいです。東京のオフィスで毎日出社してくれている方のライフプランもあると思うので。部内の誰かが我慢や無理をせず、みんなで心地よく回せるようにやってきたいなと思っています」
リモートワークを導入し浸透させていくには、オフィスの環境も非常に重要であることを痛感した今回のインタビュー。リモートワークを行う人がいる一方で、社内で働く人に何か余計な労力がかかってしまっては本末転倒である。
働き方改革を成功させるためには、ハードとソフトの両方からアプローチすることが大切なようだ。