神尾楓珠と池田エライザのダブル主演によって、かっぴーによる人気漫画『左ききのエレン』のドラマ化が実現。池田が、天才ゆえの孤独と葛藤を抱えるエレン役に抜てきされた。画家として他を圧倒する才能を持つエレンだが、2009年にモデルとしてデビューした池田自身は、女優業をスタートさせるや数々の魅力的な役を射止め、『夏、至るころ』では初めての映画監督に挑むなど、“才能”ともいえるチャレンジ精神とともに力強く前進している。「周りに気を使って、いい子ぶっていた時期が長い」と照れ笑いで告白する彼女が、「自分で未来を選択できる幸せに気づいた。今、すごく楽しいんです!」と充実の時を迎えるまでに、どんな心境の変化があったのか。胸の内を語ってもらった。

  • 池田エライザ

    MBS/TBSドラマイズム『左ききのエレン』でエレン役を務める池田エライザ

本ドラマの主人公となるのは、自らの才能の限界に苦しみながらも、いつか“何者か”になることを夢見る朝倉光一(神尾)。一方、圧倒的な芸術的才能に恵まれながらも、天才ゆえの苦悩と孤独を抱える山岸エレン(池田)。凡才と天才、相対する2人の敗北や挫折を通して、その先に本当の“自分”を発見するまでをリアルに描き出す青春群像劇だ。

――もともと原作を読まれていたとのこと。エレン役のオファーを受けたときには、特別な思いがあったのではないでしょうか。

かっぴーさんの漫画は、『左ききのエレン』の連載前から読んでいました。『左ききのエレン』の連載が始まって読んでみたら、エレンが私と同じ左利きで、名前もなんとなく似ている(笑)。勝手に親近感が湧いて、連載当初から「この役、やりたい!」と衝動的に思っていました。もし他の誰かが演じることになっていたら、ものすごく悔しかったと思います。

――それだけに、いざ演じるとなったらいろいろなこだわりも生まれてきたのでは?

エレンを演じる上では、立ち方や表情、話し方などにこだわりたくないなと思ったんです。こだわりを考えずとも、エレンとしてそこに立っていられるように、エレンとしての記憶を作っていくのが大変な作業でした。「自分はエレンだ」という錯覚が起きるくらいに、亡き父の思い出、絵を描き続けているときの視界など、いろいろな記憶を自分の中に作っていきました。

――いつも役作りでは「記憶を作る」という取り組みをされているのでしょうか。

そのキャラクターの家のインテリアやクローゼットの中身、その服を買った経緯、使う食器の色、そこから生まれた手癖など、そういったものも記憶から作って考えたりします。地図を見ながら、たぶん住んでいるのはこのあたりだから、初めて行った遊園地はここかな? とか(笑)。特にエレンは、過去を反芻しながら生きている子だと思ったので、過去や記憶についてたくさん考えました。エレンは天才だけれど、とても人間味のある女の子。演じる身としては、エレンが可愛くて仕方ありません。

――とことん役柄について考えられる、大変な没頭型のように感じます。

もうちょっと飄々とやれればいいんですが、体から染み込ませないと、できないんですよね。でも飄々とやって、それでお金をもらうのも忍びないですし…。役者って、製作者の中でも現場に携われる時間が少ないもの。いざ撮影するとなったときに、それまで数々のクリエイターの方たちが準備してきたものに対して、中途半端な思いで現場に臨みたくないと思っています。

  • 池田エライザ

――役者さんでありながら、製作者側の目も持っていらっしゃる。

私、昔から周りに気を使うタイプで。キョロキョロと周りを見て、「怒られないようにしよう」といい子ぶっていた時期も長いんです(笑)。ある時、事務所の方に「いい子ぶっても、大人にはそれがバレるよ。楽になっていいよ」と言っていただいて、肩の力が抜けました。今は本当にやりたいことを、やらせていただいているなと思っています。でも「いい子でいなきゃ」と思っていた時期があったからこそ、いろいろな人の気持ちを考えるようになったり、視野が広くなったように思います。

――『夏、至るころ』では初めての映画監督にもチャレンジされます。そのチャレンジ精神はどのように培われたのでしょうか。

うちは、兄たちがすごく頭が良くて。勉強でもバーっとすぐに覚えて、なんでもできてしまう。私はほどほど。「お兄ちゃんたちに負けたくない」と頑張って、漢字ドリルの小テストでも、「100点以外は欲しくない」と思ったりしました。100点の羅列が好きでしたね(笑)。そして幼少期にアンラッキーなことがたくさんあったことも、影響しているかもしれません。小さな頃にお目目クリクリで目立っていたのか、変なふうに目をつけられてしまったり、追いかけられてしまったり。嫌だなと思うことがたくさんありました。でも今はやりたいことを見つけて、すごく幸せです。事務所の方にも「楽になっていいよ」と背中を押していただいて、“自分で未来を選択できる幸せ”に気づくことができた。それこそが、私の強みだと思います。

――監督業も楽しいですか? 女優業に影響を与えることもあるのでしょうか。

すごく楽しいです。ハーフで華やかで…など言われることもあるんですが、私、褒められると恐縮しちゃうタイプで(笑)。なので裏方のお仕事は、気質的にも向いているところがあるかもしれません。裏方をやることで、お肌の状態をよくしなきゃとか、ニキビ作らないようにしなきゃとか、より一層、女優としても支えてくださる方のことを考えるようにもなれたし、もっと優しい人になりたいとも思うようになりました。うん、本当に今、すごく楽しいです!

  • (c)かっぴー・nifuni/集英社 (c)ドラマ「左ききのエレン」製作委員会・MBS

■池田エライザ
1996年4月16日生まれ、福岡県出身。2009年度「ニコラモデル・オーディション」グランプリを受賞。同年、『ニコラ』の専属モデルを務める。映画『みんな!エスパーだよ!』(15)のヒロインに抜てきされ、『一礼して、キス』(17)で映画初主演を務める。その後も『ルームロンダリング』(18)、『貞子』(19)などで主演を務め、2020年夏公開予定の『夏、至るころ』では映画監督に初挑戦するなど、活躍の場を広げている。
■MBS/TBSドラマイズム『左ききのエレン』
MBS:10月20日より毎週日曜24:50~ ※初回は25:15~
TBS:10月22日より毎週火曜25:28~
ほか