「2019 第59回 全日本模型ホビーショー」が東京ビッグサイト青海展示棟Aにて、9月27~29日(9月27日は業者招待日、9月28・29日に一般公開)に開催された。鉄道模型も多数出展されていたので、各メーカーを中心に出展内容を振り返りたい。

  • KATOより発売予定の「TWILIGHT EXPRESS 瑞風」(写真:マイナビニュース)

    KATOより発売予定の「TWILIGHT EXPRESS 瑞風」(JR西日本監修中)

まずはKATO。模型化が進められている「TWILIGHT EXPRESS 瑞風」の試作品が公開された。JR西日本監修の下、光沢のある塗装や光の反射を徹底して再現している。

KATOは新たな企画として、「貨物駅プレート」も製品化する予定。コンテナや自動車を積み込む貨物駅を手軽に再現できるアイテムとして開発が進められている。付属のパーツは未塗装のため、ユーザーがひと手間加えることで、より実感的になる。

すでに製品化が発表されている製品については、試作品を多数展示。これら鉄道模型の試作品は、多くの来場者の注目を集めていた。

  • 「TWILIGHT EXPRESS 瑞風」は11月発売予定。実車の雰囲気を余すところなく再現している。室内灯は明るすぎず、豪華列車にふさわしい上品な灯りをともす

  • 試作品による製品活用例。貨物列車を走らせる楽しみが広がりそう

  • 多くの発売予定製品の試作品がショーケースに並ぶ

  • 最近まで運行された中央線開業130周年記念ラッピング編成も登場

  • 常磐線で活躍した415系。最大で15両編成を再現できる

トミーテックは「TOMIX」と「ジオコレ」シリーズの新製品を多数発表。「TOMIX」からは、第1弾が企画進行中の「281系 ハローキティはるか」に第2弾のラッピングが仲間入り。たくさんの花々があしらわれ、かわいらしくも美しいラッピングを再現する。1/80スケールでは旧型客車の10系シリーズやスハネ30形などが製品化される。

  • 「ハローキティはるか」は第3弾も製品化が決定した

  • 青のスハネフ30形、茶色の10系・32系客車セットは限定品として発売予定

発売予定品の試作品として、251系「スーパービュー踊り子」、新幹線0系1000番台、製品化発表で紹介された281系「はるか」や10系客車などが展示された。なお、一部製品はラッピングを再現するため、版権元監修中となっている。

  • 多種多様な車両が続々と製品化される

  • 気になっている車両がどのように再現されるかがわかりやすい

  • 発売済みの新製品。「TWILIGHT EXPRESS 瑞風」や中央線のラッピング編成はTOMIXからも発売される

トミーテックの「ジオコレ」シリーズからは、新たに伊豆箱根鉄道7000系『ラブライブ! サンシャイン!!』ラッピング電車「Over the Rainbow号」が発表された。先頭車と中間車のドア数の違いが特徴的な7000系を初製品化。ラッピングの再現も注目だろう。

  • 伊豆箱根鉄道7000系『ラブライブ! サンシャイン!!』ラッピング電車「Over the Rainbow号」。同作品のラッピング電車・バスはこれまでにも多数製品化されてきた

その他にも、新型車両の京成電鉄3100形、新京成電鉄80000形をはじめ、大阪を走る地下鉄御堂筋線30系ステンレス車・アルミ車の製品化を発表した。

  • デビュー前の京成電鉄3100形、新京成電鉄80000形も製品化

  • 地下鉄御堂筋線のNゲージに、新たに「シルバーカー」が仲間入りする

今回の試作品には、伊豆箱根鉄道3000系や長野電鉄8500系などがラインナップされた。バスコレクション「バスタ新宿」では、Nゲージスケールで「バスタ新宿」のジオラマを展示。非常に充実した新製品発表と試作品展示だった。

  • 発売予定の鉄道コレクションは、単行から長編成までさまざま

  • ブラインドパッケージの第29弾には、左奥から名鉄・西鉄・南海・西武・東武がラインナップ

  • バスコレクション「バスタ新宿」もブラインドパッケージでの発売

トミーテックでは、新たなシリーズとして「FIRST CAR MUSEUM」と「鉄顔コレクション」も展開するという。「FIRST CAR MUSEUM」は鉄道の先頭車両に着目したシリーズで、おもにディスプレイを目的としたアイテムとなる。「鉄顔コレクション」は1/80スケールで車両の顔をモデル化した。

  • 沢山の車両を並べれば、鉄道模型で作る自分だけの博物館に

  • 1/80スケールで顔をリアルに再現した「鉄顔コレクション」

  • 別売のカード型ケースに収めて好きな車両を持ち運べる。裏にはICカードを入れられる

マイクロエースはこれから発売する予定の車両の試作品を多数展示した。今回のイベントでは、今年6月に引退した京急電鉄800形を2つの仕様で製品化すると発表。今年3月にデビューした上信電鉄700形(元JR東日本107系)も発表された。すでに発表されている発売予定製品については、試作品が数多く展示されていた。

  • 今回発表の新製品は京急電鉄800形と上信電鉄700形。JR九州「いさぶろう・しんぺい」は再生産となる

  • 発売予定製品の試作品を数多く展示

マイクロエースは他に「マイクロスピーカーシステム」も発売している。鉄道模型にBluetoothスピーカーを組み込むことで、PC・スマートフォンなどの音声を車両から流せるアイテムだ。走行音はもちろん、まったく別の音声を流すこともできる。鉄道模型以外の模型に組み込むこともできるので、使い方次第で無限に夢が広がるだろう。

  • ごく小さなスピーカーを車内に組み込み、Bluetoothを利用して音声を再生できる

グリーンマックスも最近発表された車両の試作品を数多く展示。今回のイベントで初めて発表された京王電鉄1000系・レインボーラッピングに関して、スタッフの手塗りによる試作品で展示走行を行った。

  • グリーンマックスが新たに発表した京王電鉄1000系・レインボーラッピング。一般の7色の中では、5次車・ブルーグリーンと6次車・オレンジベージュが製品化予定

試作品では、東武鉄道50070型やJR東日本205系5000番台などが展示されていた。グリーンマックスでは、私鉄を中心に過去に発売した車両のリニューアルも進めており、これからますます充実していくだろう。

  • 他社線にも乗り入れる東武鉄道50070型や、「Qシート」が導入された東急電鉄6000系が登場

  • 武蔵野線でまだまだ活躍中の205系をNゲージで手もとに。211系では、パンタグラフ周辺の低屋根にも注目したい

  • 今後の製品化予定車両にも、私鉄の車両が数多く登場

他社が発売していない車両の製品化に挑戦しているポポンデッタは今回、南海電鉄30000系「こうや」の試作品をイベント初公開。登場時と更新車の2種類が発売される予定で、見た目の違いとして連結器の有無などが挙げられる。同じく製作中の相模鉄道20000系やJR九州305系も会場で展示された。

  • 南海電鉄30000系「こうや」。連結器無しが登場時の車両、連結器有りが更新車となる

  • 相模鉄道20000系・JR九州305系ともに特徴的な色や車体が再現されている

これ以降の発売予定品としては、東武鉄道500系「リバティ」や東京メトロ銀座線1000系の製品化が予告されている。どちらもまだNゲージの大手メーカーが製品化していない車両であるため、どのように再現されるか、今後の情報に期待したい。

  • まだ登場していない車両の製品化に挑むポポンデッタの意欲を感じられる。続報を待とう

ポポンデッタの隣では、同社グループのポポプロが各種ジオラマ素材を販売していた。リアルな地面の表現や街の電飾など、さまざまなシチュエーションでの情景制作に合わせ、多様な製品が用意されている。

  • ポポプロ製品の活用例。組み合わせることでリアルなジオラマを作れる

  • 京急電鉄の主要駅をイメージした大型ジオラマ。まるで生きた街並みを見ているかのようだ

ハセガワが展開する「MODEMO」では、江ノ島電鉄10形・20形、都電荒川線7700形を発売予定。試作品展示に加え、車両のレイアウト走行も行われた。

  • 発売予定の江ノ電と都電荒川線の試作品が展示された

  • どちらのレイアウトも沿線の風景がふんだんに取り入れられ、見ていて楽しい

日本型のZゲージ鉄道模型を手がけるロクハンのブースも見学した。トランクに収まったミニレイアウトの展示が来場者の目を引く。往年の特急形車両や機関車・客車など、種類はさまざま。スケールは小さくても、長編成には十分な迫力がある。

ロクハンでは、もっと小さなスペースで遊べるシリーズとして、「Zショーティー」も展開する。もともと小さいZゲージの車長がさらに半分になり、空きスペースさえあればどこでも線路を組んで模型運転を楽しめる。

  • トランクに収まるサイズに生活感のある情景が作り込まれている

  • 「Zショーティー」の製品展示

  • 485系初期形「ひばり」(写真中央)。その迫力は他のスケールに見劣りしない

  • 「Zショーティー」ではE5系「はやぶさ」と「ドクターイエロー」「成田エクスプレス」の3種類のスターターセットも発売予定

  • フルスケールのZゲージとともに、「Zショーティー」も続々登場予定となっている

その他、ジオラマ制作のディディエフ、小型車両を数多く製品化する津川洋行など、多数のメーカーが出展していた。すべてを詳しく紹介することができず心苦しいが、それほどに各社のそれぞれの製品にかける熱意が筆者にも伝わった。

  • ジオラマ制作を手がけるディディエフは、各種ジオラマ素材や観覧車模型を販売。存在感は抜群

  • たとえ小さくても、情景があることで鉄道模型の見映えはより良くなる

  • 津川洋行はかつての軽便鉄道をイメージさせる2軸気動車シリーズを発売予定

  • 寿司ネタが鉄道模型として走る「すし電」も展開。シュールな光景が会場で人気を呼んだ

  • W2STADIO製作のペーパーモデルも津川洋行ブースで展示。ボンネットの中まで表現されていることに驚かされた

  • さんけいのペーパーキット「みにちゅあーと」シリーズ。一部は鉄道模型のスケールに対応する

  • 『千と千尋の神隠し』の「油屋」と異世界の街並みをジオラマで再現。多くの来場者の目にとまっていた様子だった

  • 木造模型のウッディジョーでは、木造電車・機関車の完成見本を展示。KATOの「小型車両用動力ユニット」でNゲージ化できる

  • PLUMからは1/80スケールの中央線201系や電車庫などを発売予定。多数のパーツで細部まで徹底的に再現される

今年開催された全日本模型ホビーショーの出展企業数は81社だったという。今回紹介した鉄道模型関連の企業は12社と、数でいえば少ないが、これだけでも1日中見ていられるほどに展示内容は充実しており、それぞれが素晴らしいものだった。これらの中で気になる製品が見つかったなら、ぜひ各社公式サイトなどで今後の発売予定をチェックしてみてほしい。