マラソン日本記録保持者の大迫選手を妻の大迫あゆみさんが9月28日、「半端なくない」大迫家の食卓と銘打ち、マラソンランナー向けに栄養の摂取法や食事メニュー、捕食の取り方などのセミナーを開催した。世界的マラソンランナーである大迫傑を支える食事とはどのようなものか、レポートする。

  • 「半端なくない」大迫家の食卓」セミナー

大迫あゆみさんは元スポーツメーカーの営業担当で、大迫選手と結婚して今年で7年目。彼女自身、駅伝や競泳、テニスなどのスポーツの経験はあるが、トップアスリートして活躍してきたわけではない。そんな彼女だが、夫を食事面でサポートするため、アスリートフードマイスターの資格を取得。日々、夫である大迫選手を影ながら支える重責を担っている。

  • 大迫あゆみさん

セミナーでは、あゆみさんは大迫家の食事について「半端なく普通の家庭料理」であると語る。リオ・オリンピックの前や記録会の時でも、大迫選手は、特別な食事メニューは用意していなかったという。普段のレシピについても様々な食品を組み合わせて五大栄養素を摂取するメニューを公開。それは、親子丼やおでん、焼きそばなど一般の家庭でもよくあるメニューだ。これについてあゆみさんは、大迫家の食事のモットーとして食事が変なプレッシャーにならないようにするための配慮なのだという。

  • 大迫家の普段の食事メニュー。左が親子丼、ナッツ入りサラダ、オクラのお浸し、厚揚げのキムチ煮、お麩の味噌汁、フルーツ。右が根菜入り鶏つくね、おでん、サラダ、フルーツ

また、食事の際、気をつかっているのが臨機応変さだ。ポイント練習などの強度の強い練習をするときは、たんぱく質が多めの食事となるように心掛けたり、レース前日は丼物などで炭水化物の摂取量を増やす工夫をしているという。メニューの内容は大迫選手の前日のストレッチの様子や持ち運びする荷物の種類や量の変化で練習メニューを予想し、臨機応変に決めているという。

  • レース前日は、げん担ぎに鰻重。炭水化物を多めに摂取し、エネルギーを蓄える手助けも

また、栄養の摂取も毎食でなく一日のトータルで考える柔軟性が必要であるとコメント。朝、足りない場合は、昼、一日でだめなら、一週間で帳尻を合わせることで気持ちに余裕を持って無理せず継続できることを重視しているという。そして、足りない分は捕食を上手に利用。長時間の移動中やレース間の時間が空くときに効果的に摂取することを提案している。

大迫選手は、試合前に消化しやすく、すぐエネルギーに変わるカステラを好んで摂取するという。その際、バターを多めにつかった高級カステラは避け、普通のカステラをオススメしている。また、大迫選手は、いろいろな食品を入れたスムージーを愛飲。毎日のように摂取しているという。水分については、一日一ガロンを摂取。水分は、水だけでなくミネラル入りの麦茶を愛用。ヨーロッパで大会がある場合はパウダーを持たせているとのこと。

また、食事以外に大切なこととして休息を重視。特にメンタル部分の休息については、アメリカで共にトレーニングに励んだオリンピック金メダリスト、モハメド・ファラー選手から大きく影響を受けたという。ファラー選手の家に招待されたとき、同選手の飾らない性格やキングサイズのピザを頬張るトップアスリートにあるまじき食事風景を見て大きな衝撃を受けたとのこと。

この日以来、ストイックであることこだわらず、より柔軟な思考を持つようになったという。特にプレッシャーの処理は重要な問題だ。トップアスリートであるが故にかかる記録や結果に対するプレッシャーもまた大きくなる。この問題に対してあゆみさんは、家の中では、陸上の話はできるだけしないようにしているという。できるだけ普通のお父さんとして接しているとのこと。できだけ、リラックスできる環境を作っていくのも自分の仕事とコメントしている。