クルマの「電動化」と「知能化」を技術の2本柱に据える日産自動車は今後、どんなクルマを作ろうとしているのか。その一端を垣間見ることができるのが、先日発売となった新型「スカイライン」だ。将来の自動運転社会を見据え、日産はあえて、このクルマにハンズオフ機能を搭載した。

  • 日産の新型「スカイライン」

    日産の新型「スカイライン」

最新技術を取り入れ続けてきた「スカイライン」

「スカイライン」という4ドアセダンは、プリンス自動車工業が生み出したクルマだ。

プリンス自動車は第二次世界大戦後の1947年に立川飛行機出身の技術者らが設立した。当初は「東京電気自動車」という社名で、その後は「たま電気自動車」「富士精密工業」を経てプリンス自動車に落ち着く。技術に凝ったクルマづくりを特徴としたが経営はうまくいかず、1966年に日産自動車に吸収合併された。合併に伴い、スカイラインも「日産スカイライン」と呼ばれるようになった。

そもそも、飛行機を開発してきた技術者たちが生み出したプリンス時代のスカイラインは、車体にもサスペンションにも先端の技術を使い、ガソリンエンジンはトヨタ自動車や日産を上回る馬力を誇った。1964年、鈴鹿サーキット(三重県)で開催された第2回日本グランプリでは、2代目スカイラインが一瞬、ドイツのポルシェ「904」を追い越したが、その場面は高い技術の証として伝説になっている。

技術のプリンスが生み出したスカイラインは、日産車となった1966年以降もプリンス時代の偉業を引き継ぐクルマであり続けた。1969年には初代「GT-R」が誕生。その高性能なエンジンには、レーシングカーの技術を活用していた。

日本車にターボエンジンが登場するのは、1979年の日産「セドリック/グロリア」からである。スカイラインも同技術を取り入れた。「スカイラインRSターボ」というクルマでは、ターボチャージャーによって過給された空気の密度を高めるインタークーラーを追加で装着し、さらに馬力を高めた。

スカイラインは日産にとって、その時々の先進技術を取り入れてきた象徴的なクルマだ。エンジン以外に、例えばHICAS(ハイキャス:High Capacity Actively-controlled Suspension)と呼ばれる後輪操舵技術を初めて搭載したのも、1985年のスカイラインであった。

  • 歴代「スカイライン」
  • 歴代「スカイライン」
  • 歴代の「スカイライン」。初代は1957年に誕生した

そして現行スカイラインは、「ステアリング・バイ・ワイヤー」という技術を世界で初めて搭載している。この技術は、ハンドルと前輪を軸でつなげるのではなく、ハンドル操作を信号化し、前輪を電気制御で動かす仕組みだ。ハンドルを切ると、その動きは電線を通じて前輪に伝わる。コンピュータ制御された操舵角が、前輪側のモーターによってタイヤを方向づけるのである。

このバイ・ワイヤーという技術は、今日、多くのクルマでアクセルにもブレーキにも使われている。ここでいうワイヤーとは、ピアノ線のような鋼線ではなく、信号を送る電線を意味する。そして、このステアリング・バイ・ワイヤーは、新型スカイラインが搭載する「プロパイロット 2.0」という運転支援技術にも大いに役立っているのである。