近年、新たな経済の軸として注目されている「シェアリングエコノミー(通称:シェアエコ)」。これにはどういう特徴があり、なぜ今注目を集めているのだろうか。また、今後どのような広がりを見せ、私たちの生活にどう影響する(変化をもたらす)のか、一般社団法人シェアリングエコノミー協会・事務局長の石山アンジュさんに話をうかがった。

  • 一般社団法人シェアリングエコノミー協会事務局長・石山アンジュさん

    一般社団法人シェアリングエコノミー協会事務局長・石山アンジュさん

シェアリングエコノミーとは?

シェアリングエコノミーは共有型経済とも言われ、個人と個人の間で使っていないモノ・場所・技能などを貸し借りする社会的な仕組み・サービスのことを指す。具体的には、メルカリなどの個人的なモノの売買や、Airbnbといったスペースレンタルなど、「インターネット上で行われるCtoCのサービス」のことで、フリーマーケットやCDレンタルなどもシェアリングエコノミーに分類される。

日に日に広がりを見せる「シェア」の考え方や消費スタイル。シェアを日本経済の発展につなぐ活動をしている同協会の事務局長であり、内閣官房シェアリングエコノミー伝道師という肩書きを持つ石山アンジュさんの、シェアリングエコノミーについての見解は次のとおりだ。

なぜ注目されているのか?

シェアリングエコノミーは、三つの社会への影響が期待され注目を集めているという。

一つ目は、少子高齢化に伴う労働人口減少による課題への解決。人口減少によって税収が減っていくと、例えば地方においてはタクシーや公共交通機関が減り、結果、高齢者が病院に行きたくても交通手段がままならなくなるという状況が生じる。こういった、行政だけでは難しい課題に対して、例えば地元の人が運転代行や家事代行をするなどして、時間や労力をシェアすることが、課題解決の一つの手段となるかもしれないという期待だ。

二つ目は、一億総活躍社会の実現。これまでは自分の知識やスキルを活かすというと、ハードルの高い職種が中心のイメージが強かった。しかし、誰もが自分の持っている知識や情報、スキル、場所や時間などの「資産」をだれかのためにシェアすることができ、身近なもので副業や収入を得ることが可能になるのだ。つまり、「家に宿泊してもらうことはできる」「料理ならできる」「犬の散歩ならできる」といった自分の持っているそれぞれの「資産」を活用し、お金だけでなく、生きがいにつながるような機会を持つことができるようになるということが期待されている。

三つ目は、持続可能な社会の実現。これは時間とお金をかけて新しいものを作らなくても、今眠っている資産をシェアリングエコノミーで活用することで、抱えている課題に対し持続的に解決できるというもの。例えば空き家問題や大量生産・大量消費といった課題も、メルカリやAirbnbなどを通して資産活用することで解決が可能。こういったサステイナブルな社会の実現に向けた可能性に期待がされ、注目を集めているという。

GDPとシェアリングエコノミー

シェアリングエコノミーの可能性について取り上げたが、実はその多くはGDPに反映されておらず、現状は目に見える経済効果という実感が薄い状態にある。

GDPに反映されているのは、UberやAirbnb、メルカリといった、シェアリングサービスのプラットフォームを運営する事業者の手数料収入などに限られており、プラットフォームを利用する個人のやりとり(メルカリでいう”出品者”と”購入者”)で生まれる経済効果はGDPには反映されない。このように、日本全体の経済に対して数字的貢献ができない部分は一定数あるそうだ。

しかし、シェアリングエコノミーに限らず、今の社会は「所有」から「利用」にシフトされているといえる。例えば、トヨタがカーシェアに力を入れるなど、GDPに反映されない経済領域はどんどん大きくなってきているのだ。

こういった「見えない価値」、「個人の豊かさ」は現在国としても議論の対象となっており、GDPに変わる新たな指標ができる未来も近いかもしれない。

※内閣府は、個人が担う民泊やモノの貸し借りなどの「シェアリングエコノミー」も国内総生産(GDP)に入れる方針を打ち出している。早ければ2020年度から、まず民泊分を算入する予定

安心・安全に利用できるシェアを目指して

石山さんはシェアの可能性に注目が集まる反面、まだまだシェアリングエコノミーは制度が整っていないのが現状であると語る。

そのため同協会では、シェアを日本経済の発展につなぐ活動だけでなく、CtoCのプラットフォームを安心・安全に普及させていくために国や行政と協力しながらシェアサービスの制度化の活動にも力を入れているという。

例えば、企業に付与されるプライバシーマークのようなものを、シェアリングエコノミー認証制度という形で、シェアのプラットフォームにも普及させる取り組み。国の定めた基準に則ったプラットフォームに、そういった認証制度を設けることで、多くの人が安心・安全にシェアサービスを利用できる環境を整えていくといった活動を行っている。

シェアリングエコノミーがもたらす社会

今の日本は、経済的な豊かさはすでに手に入れている。時間を犠牲にして働き、たくさん稼ぐよりも、自分の時間を豊かにしたいという人が増えているのが現状だ。そういった時代の変化とともに変わってきた価値観と、シェアという概念はとてもマッチしている。

既存社会で課題になっていることの解決手段の一つとしてシェアリングエコノミーが大きくなれば、「消費しないと解決しない」ではなく、CtoCでより安く、より気軽に助け合いができるのだ。さらに、1つの企業で月収30万円を稼ぐのではなく、複数の仕事を持つことで、様々なスキルを身につけることができ、勤めている企業の業績によって収入を失うかもしれないというリスクが減る可能性もある。

お金や地位ではなく、「選択肢」や「頼れる先」をどれほど持っているかが、これからの社会の本当の豊かさなのかもしれない。

■取材協力:石山アンジュさん

内閣官房シェアリングエコノミー伝道師/一般社団法人シェアリングエコノミー協会事務局長/一般社団法人Public Meets Innovation代表理事

1989年生まれ。「シェア(共有)」の概念に親しみながら育つ。2012年国際基督教大学(ICU)卒。新卒でリクルート入社、その後クラウドワークス経営企画室を経て現職。 シェアリングエコノミーを通じた新しいライフスタイルを提案する活動を行うほか、政府と民間のパイプ役として規制緩和や政策推進にも従事。総務省地域情報化アドバイザー、厚生労働省「シェアリングエコノミーが雇用・労働に与える影響に関する研究会」構成委員、経済産業省「シェアリングエコノミーにおける経済活動の統計調査による把握に関する研究会」委員なども務める。2018年米国メディア「Shareable」にて世界のスーパーシェアラー日本代表に選出。ほか NewsPicks「WEEKLY OCHIAI」レギュラーMC、拡張家族Cift メンバーなど、幅広く活動。著書に「シェアライフ-新しい社会の新しい生き方(クロスメディア・パブリッシング)」がある。