劇場公開(期間限定上映)と映像ソフトで展開する「東映Vシネクスト」の『ビルド NEW WORLD 仮面ライダーグリス』(監督:中澤祥次郎)の公開記念舞台挨拶が2019年9月7日、東京・新宿バルト9にて開催され、主演の武田航平をはじめとする主要キャストと中澤監督が登壇。抜群のチームワークで軽快なトークが繰り広げられた。

  • 左から滝裕可里、水上剣星、赤楚衛二、高田夏帆、武田航平、栄信、芹澤興人、吉村卓也、中澤祥次郎監督

『ビルド NEW WORLD 仮面ライダーグリス』は、2018年8月に幕を閉じた特撮テレビドラマ『仮面ライダービルド』のスピンオフ作品となる。

2019年4月に東映ビデオからBlu-ray&DVDが発売されたVシネクスト『ビルド NEW WORLD 仮面ライダークローズ』(監督:山口恭平)では、仮面ライダークローズ/万丈龍我を主役に置き、仮面ライダービルド/桐生戦兎(演:犬飼貴丈)が創り出した「新世界」に未知の脅威が襲いかかり、ふたたび仮面ライダーたちが過酷な戦いに挑む模様が描かれた。

本作『仮面ライダーグリス』は『クローズ』の後を受けた物語となり、仮面ライダーグリス/猿渡一海と彼を慕う「三羽ガラス」(赤羽、青羽、黄羽)が物語の中核をなし、全編に笑いと興奮と感動をもたらすエキサイティングな作品に仕上がっている。

仮面ライダーグリス/猿渡一海を演じる武田航平は、登場するやいなや「おっはよーございまーっす!」とハイテンションで挨拶し、つめかけた大勢のファンからの興奮を誘った。「公開初日(9月6日)を迎えた心境は?」というMC篠宮暁(オジンオズボーン)の質問に対して武田は「いよいよこの日が来たな~という気持ち。昨日からいろんな方たちが観に来てくださって、ほんとうに感謝しています。みなさんに観ていただくことで、やっと映画が完成したという気分です」と、主演映画の公開が始まったことをしみじみと噛みしめていた。

今回、一海は仮面ライダーグリスの最強形態というべき「グリスパーフェクトキングダム」への変身を行うのだが、武田はこの「変身ポーズ」について「僕の人生の中でも"最後"の変身だと思ったので、『ビルド』に出演してきた今までの思い、そして『仮面ライダーキバ』(2008年)から関わってきた仮面ライダーへの思いを込めました。(三羽ガラスの)ドックタグを握りながら変身するというアイデアも自分から出させてもらいました」と、並々ならぬ意気込みをもって今回の「変身」に臨んだことを明かした。

一海が熱烈に憧れているネットアイドル「みーたん」こと石動美空を演じる高田夏帆。本作は『ドルオタ、推しと付き合うってよ』という短編作品と「同時上映」というスタイルになっているが、一海と美空のコミカルなやりとりを中心とした『ドルオタ~』と、『グリス』本編のシリアスな演技の使い分けについて尋ねられた高田は「シリアスなところは、ずっとずっと(一海を)信じ続けようという思いで演じました。コミカルなところは、もう美空という役を1年以上も演じてきて、自分にとって美空は家族以上の『女友だち』のような感覚がありますので"ああ、幸せでよかったね"なんて思いながら演じていました」と、美空という役を完全に自分のものとしてつかみ、いかなる状況でも自然に演じられていることを説明した。

一海を「カシラ」と呼んで慕っている三羽ガラスの1人、キャッスルハード(ハザード)スマッシュに変身する赤羽を演じる栄信は、撮影時のエピソードとして「病室のベッドで寝ているシーンでは、ベッドのサイズが合わなくて僕の"足"の先がはみだしているんです。そうしたら、なんかわからないんですけど中澤監督が『栄信くん、くるぶしから下だけで芝居しようか』と言って……。初めての経験をさせていただきました」と、長身ゆえに他の2人と同じベッドではサイズが合わず、ベッドからはみだした「足先だけの演技」を要求されたことを明かした。

三羽ガラスの1人、スタッグハード(ハザード)スマッシュに変身する青羽役・芹澤興人。

三羽ガラスの最年少、オウルハード(ハザード)スマッシュに変身する黄羽を演じる吉村卓也。

芹澤と吉村は、テレビシリーズで印象的だった青羽と黄羽の「名セリフ」を本作でも聞かせてくれるという。これについて芹澤は「テレビのときと同じセリフでも、状況が変わると意味合いが違ってくるので、あまり力を入れすぎても熱くなっちゃうし……。今回は"漢(おとこ)のカッコよさ"みたいなものを出したいと思って演じました」と、自身の演技プランを明かした。

情報収集能力に長けた美人ジャーナリストの滝川紗羽を演じる滝裕可里。

父である氷室泰山首相の秘書を務める仮面ライダーローグ/氷室幻徳を演じる水上剣星。

桐生戦兎と共に「新世界」を創造し、仮面ライダークローズとして新世界でも人々を守って悪と戦う万丈龍我を演じる赤楚衛二。仲間との"絆"を感じさせるエピソードとして赤楚は「こうして久しぶりに集まっても、久しぶりな感じがしない。よそよそしさもなく、以前のままの空気感でいられるのが"絆"だと思う」と、テレビシリーズからずっと一緒に時間を過ごした仲間たちとの絆の深さを、改めて実感するかのようにコメントした。

本作のメガホンを取った中澤祥次郎監督は、テレビシリーズ『仮面ライダービルド』では一海と三羽ガラスの初登場回(第17、18話)を担当している。中澤監督はキャスト陣のチームワークについて「みんなすごく仲がいいんで、本作を撮るとき『この中に入っていけるだろうか?』と不安を感じましたが、いざ始まると、みなさんあたたかく迎えてくれました。特に武田くんの気遣いが嬉しかった」と、武田を座長とする『グリス』チームの結束力の強さを絶賛していた。

MCを務める篠宮暁(オジンオズボーン)は、『グリス』での一海の衣装に"寄せてきた"服装で登場したことを武田に指摘されると「家にある、いちばん一海っぽい服を着てまいりました!」と返し、『グリス』および仮面ライダーに対する愛情と思い入れの強さを感じた客席から、あたたかい拍手が飛んだ。

本作は「国際テロ組織ダウンフォールから人々を守るために戦う仮面ライダーたち」というメインのストーリーと並行して「憧れのアイドル・美空と"ドルオタ"の一海との関係はどうなるのか?」という展開が観る者の興味をひくが、ここでMC篠宮から高田に、「一海は恋愛対象として"アリ"か"ナシ"か?」という鋭い質問が飛んだ。高田はしばし考えた末に「アリ寄りのナシ」と答えて「ナシなのかよ!」と武田を憤慨させた。「惜しい!」とフォローする高田は「アリ寄りのナシ」の理由として「一海は、女性がそっぽを向いたとしても一途に追いかけてくれる、素敵で誠実な男性だと思うんです。一方で、サプライズ(プレゼント)とか考えるときに、色とりどりの仲間たちに相談するのかな、と思っちゃったら……。ちょっと1人で決められないのかなって(笑)」と、三羽ガラスと一海の"絆"の深さが仇になっているかのようなコメントを残した。

ショックが強い武田を気の毒に思った高田が「じゃあ、オマケの"アリ"で」と自身の発言のさらなるフォローを行っても、武田は「いいよ、そんなお情けでアリなんて! なんで最後の最後でそんなこと言われないといけないんだよ!」と、まだ納得がいかないようす。そこに「みーたんとしてはアリ。高田夏帆としてはアリ寄りのナシ」と高田が付け加えたところ「1年以上演じてきて、俺は一海を自分自身だと思っているのに、それをナシって言われると俺が否定されているみたい」と武田が嘆き、高田との「一海に対する温度差の違い」を痛感する場面が見られた。

改めて高田は、武田(一海)とのコミカルながらも微笑ましいやりとりのシーンについて「あんなシーンを今まで演じたことがなかったので、すごく楽しかったし、幸せでした。これが本音です!」とまぶしい笑顔で語り、その表情を見た武田も「とってつけたように!」とボヤきながらも、にこやかな顔をのぞかせた。

滝は今年5月に結婚を発表したこともあって、会場全体から大きな祝福の拍手を受け、笑顔でこれに応えていた。滝は結婚について「(本作の)撮影をしているときは、まさか結婚するとは思っていなかったんです。そこから急に"トゥルルル"と(結婚が)決まった」と、謎めいたコメントを発したため、武田らを「ぜんぜんわかんねえ!」とやきもきさせていた。また本作では、テレビシリーズ第1話で幻徳が紗羽に言った「隣のホテルで朝まで語りあかそうか」というセリフを受け、まさかの"伏線回収"が行われたという。これについて水上が滝に「旦那さん、何か言ってた?」と尋ねると、赤楚から「まずは自分の奥さんの心配をしなさいよ!」と鋭いツッコミが飛び、客席の爆笑を誘った。

日々、自身の体を鍛えるためジムに通っているという赤楚は「ベンチプレスで82.5kgまで行きました」と言い、胸を張った。高田は「今日も『筋肉触ってくれる?』と言うので、私が筋肉調査しました」と赤楚の"胸筋"の発達を触って確かめ、「Aカップはぜったいある!」と、なぜかカップサイズで説明して周囲を戸惑わせた。

武田はキャスト陣の"絆"を示すエピソードとして、『ビルド』の打ち上げパーティの際、犬飼、赤楚、水上、栄信と翌朝まで飲んでいたという話題を出し、酔った栄信に向かって、同じく酔った水上が「今ならイケる!」という表情でドロップキックを繰り出したことを明かし、周囲をどよめかせた。武田は、そんな酒席でのアクシデントがあっても仲良くしていられるのが"絆"だと説明したかったようだが、栄信はその時のことを思い出して「テレビのときは(ローグに)消滅させられるし、リアルではドロップキックされるし……いつか寝首をかいてやる(笑)」と水上への"ライバル関係"を再確認しつつ、周囲を笑わせた。

吉村は「カシラと三羽ガラス」の"絆"について話題を振られた際、「僕らの絆はもちろん深いんですけど、この2人(武田と栄信)が同い年で、群を抜いて仲がいいんですよ。で、僕たち2人(吉村、芹澤)がうらやましいなって言ってたら、栄信さんが『いいじゃん、小っちゃい2人で。"半ライス"2人前(笑)』って……俺たちのことを半ライスって!」と、長身の武田、栄信に比べて低めの自分たちが「半ライス」と呼ばれたことへのショックを、苦笑まじりに訴えた。すると芹澤が「みんなが半ライス、半ライスって、吉村くんにだけ言ってたと思っていたんだけど、自分も入っていたんだね。俺は怒る立場だったのか!」と、少し天然な発言で場をなごませる役割を見事に果たした。

最後の挨拶で武田は「この映画は、最初は栄信と2人で"やりたい"と思い立ち、プロデューサーに直談判したところから始まりました。それがまさか、こんな立派な"形"になるとは……と、夢のような思いです。まだまだ終わりたくないなという気持ちがありながらも、やはりこの映画で"平成ライダー"が終わるという寂しい気持ち、そして"やりきった"という思いもあります。映画が完成するためには、みなさんに観ていただいて、語り継いでもらうことが必要です。ほんとうに、みなさんには感謝しかありません。ありがとうございました!」と、こみあげる思いを抑えながら、熱烈な応援をしてくれるファンたちに感謝の思いを伝えていた。

Vシネクスト『ビルド NEW WORLD 仮面ライダーグリス』は現在、新宿バルト9をはじめとする全国劇場にて期間限定公開中。11月27日にはBlu-ray&DVDが発売される。

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