今回は、自然吸気エンジンの上級グレード「X」とカスタムのターボモデル「カスタムRS」の2台に試乗することができた。スタイルはスーパーハイトワゴンだけにボクシーだが、愛嬌のあるデザインにまとまっている。特に標準車は、ヘッドライトとグリルを一体デザインとしたすっきりしたフロントマスクが好印象だ。

一方のカスタムは押し出しの強い顔つきとなるが、個性重視のカスタムユーザーがターゲットなので、これはこれで……ということなのだろう。外観上のポイントとしては、全車でLEDヘッドランプとLEDテールランプを標準化したところに注目したい。夜間の視認性が向上しているのも嬉しいところだ。

  • ダイハツの新型「タント」
  • ダイハツの新型「タント」
  • 左が標準車、右がタントカスタムのフロントマスク

運転席に収まってまず感じるのは、視界の良さだ。ガラス面積が大きい上、ダッシュボードやメーターパネルも視界の邪魔にならないように配慮されている。運転しやすそうだな、というのが第一印象だ。新設計というシートの座り心地もなかなか良い。トヨタ自動車「プリウス」のものを彷彿させる横基調の薄型デザインのメーターパネルも見やすい。ダッシュボードに最大9インチサイズのナビゲーションシステムが用意されているところも、今どきの軽ワゴンらしいと感じた。

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    運転席からの視界は良好。シートの座り心地もよかった

走り始めると、新型タントの魅力が次々に明らかになってきた。まず静粛性の高さ。軽自動車、特に車内で音が響きやすいワゴンとしては、かなり優秀といえる。軽自動車は乗る人とエンジンの搭載位置が近くなるので、どうしてもエンジン音が気になるもの。しかし、新型タントでは全域であまり気にならない音量に抑えてあるようだ。

もちろん、走り自体の質も高まっている。安定感があり、しかも乗り心地がいい。ボディ剛性が高まったことで、ソフトな足でもノッポなボディを支えることができているのだろう。最も分かりやすいのは曲がる時だ。背が高いゆえ、カーブでは車体の傾きを感じるが、ボディの動きが安定しているので、運転者、乗員ともに不安を感じない。

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    剛性が高まっているので、カーブでの走りにも安定感がある

効率が高まったパワートレインは、走行中のエンジン回転数をなるべく抑えてくれるので、静粛性の向上にも効いてくる。もちろん、ターボの方がパワーにゆとりがあるが、日常走行なら、自然吸気エンジンでも不満を感じるシーンは少ないだろう。

タントは後席も重要なクルマなので、最後に試してみた。その結果としては、後席に乗ってガッカリ……などということはなく、乗り心地と静粛性はともに優れていて、むしろ軽自動車であることを忘れてしまいそうなほどだった。小さなファミリーカーとして、これまで以上の活躍が期待できそうだ。これらの進化も、DNGAで実現した高い基本性能があってこそなのである。

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    新型「タント」が多くの点で進化できたのは、ダイハツが「DNGA」で実現した高い基本性能によるところが大きい

スーパーハイトワゴンは今や、軽自動車市場で最も売れているジャンルだ。ダイハツは先駆者としてのプライドを持って、タントの正常進化を図った。

細かい部分の気配りや機能の充実ぶり、その進化などを見ていくと、クルマには詳しくなくても、日常の相棒としてクルマを使い倒すママさんたちに鍛え上げられてきたクルマだと思わせてくれる部分も多い。ファミリーカーとしてのタントの素質は、今回のモデルチェンジで大幅に高まったと思う。

さらにダイハツでは、新型タントを開発するにあたり、当初から高齢者の使用を想定したクルマづくりを進めてきた。乗り降りのしやすさなどから、その開発姿勢を感じとることができる。誰にでも使いやすいクルマを目指すダイハツの考え方には好感が持てる。

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    ファミリーカーとして、ますます力をつけた新型「タント」。足りないものといえば……

ただ、全体的に評価すると、クルマとしては優れている新型タントだが、ちょっと真面目さが際立ちすぎているのではないかとも感じた。全体的に質実剛健のイメージが強く、遊びの部分やおしゃれな要素は少ない。こういった点ついては、ライバルとなるホンダ「N-BOX」やスズキ「スペーシア」に軍配が上がるだろう。タントの魅力は「乗れば分かる」ということなのだろうが、もう少し視覚的に訴える部分があれば、ライバルとの戦いをより有利に進められたかもしれない。