JR東海は7日、これまで走行試験を行っていた東海道新幹線の営業車による地上設備を計測する「軌道状態監視システム」「トロリ線状態監視システム」「ATC信号・軌道回路状態監視システム」の3つのシステム(状態監視システム)について、実用化のめどが立ったことからN700S営業車で計測を行うと発表した。

  • N700S確認試験車

東海道新幹線では、計測専用の車両である「ドクターイエロー」により、定期的に軌道や電気設備の計測を行い、計画的に保守作業を行うことで日々の安全・安定輸送を確保している。より高頻度に設備の状態把握を行い、タイムリーに保守作業を行えるように、営業車に搭載可能な計測機器の小型・軽量化など技術開発にも取り組んできた。

走行中の営業列車で軌道の状態を計測する「軌道状態監視システム」はすでに導入され、乗り心地の向上を図っている。昨年6月からは、新たな計測項目を追加させた次期「軌道状態監視システム」をN700S確認試験車に搭載しての走行試験も実施してきた。

さらに今回、電気関係の設備の状態を走行中の営業列車で計測する「トロリ線状態監視システム」と「ATC信号・軌道回路状態監視システム」の2つのシステムについても技術開発を行い、昨年10月から順次、N700S確認試験車に搭載して走行試験を実施。このたび、これら3つのシステムについて実用化のめどが立ち、N700S営業車での計測を行うことになったという。

次期「軌道状態監視システム」は、走行中に軌道の状態を計測し、データをリアルタイムに中央指令等へ送信するシステム。汎用のセンサ類(加速度計・レーザ変位計・ジャイロ)を組み合わせることで計測項目を追加し、「レールの形状(上下方向のずれ)」に加えて、「レールの形状(左右方向のずれ)」「左右レール間の距離」「左右レールの高低差」などを計測する。

  • N700Sの車体の屋根上に「トロリ線状態監視システム」を設置する(提供 : JR東海)

「トロリ線状態監視システム」は、トロリ線の状態(摩耗・高さなど)を計測するシステムで、照射光源に赤外線LEDを採用することにより、太陽光によるノイズを受けにくく、安定した計測を可能にする。また、トロリ線状態監視装置内にカメラとトロリ線の高さを検出する機器を新設し、トロリ線の高さに応じてカメラのピントを調整することで、高速走行時でも正確な計測が可能となっている。

「ATC信号・軌道回路状態監視システム」は、走行中にレールに流れるATC信号や帰線電流を計測し、取得したデータを定期的に保守部門の現業機関等へ送信するシステム。異常の予兆を早期に検知し、信号設備や軌道回路に対して必要な処置や保守を速やかに行うことが可能となる。

これらの状態監視システムをN700S営業車の3編成に搭載するほか、軌道状態にをより高頻度に計測を行うため、さらに別の3編成にも「軌道状態監視システム」を搭載する。今後のスケジュールとして、2021年3月までN700S確認試験車に搭載した計測機器の長期耐久性等を確認し、2021年4月から計測機器を搭載したN700Sの営業運転を開始するとのこと。