■高校野球とプロ野球の違いとは
――『熱闘甲子園』のキャスターとして、伝えるうえで意識している点はありますか。
勝敗はもちろんあるんですけど、それよりも背景やストーリー、都道府県の代表としていろんな思いを背負って立っていることを伝えていきたいですね。プロ野球の場合は、生活がかかっていて違う意味でプレッシャーはありますが、「今日ダメでも明日の試合で」と取り返すチャンスがあります。でも高校野球は負けたら終わりで、「自分の野球人生も終わりかもしれない」「この仲間たちと一緒にやることも終わりかもしれない」といろんな思いを背負ってのプレーですから。そこは熱を持って伝えなければいけないと思っています。
――プレーの解説をすることもありますが、過去の放送では、カバーリングなどの見逃しがちなプレーを取り上げているのが印象的でした。
万が一のためにやっているからすごい、ということではなくて、そういったところに力を出せる人は、やっぱり周りから信頼を得ることができるんです。野球は最終的には人と人のつながりが大事で、練習が終わった後もすごく自主練をしていたり、カバーリングをしっかりしていたりする選手に対しては、チームメイトも「彼を応援しよう、彼のために頑張ろう」と思います。そういった部分は、拾ってあげたいなと意識していますね。
――『熱闘甲子園』で過去にキャスターを務められた栗山英樹さん、工藤公康さんは監督に就任されています。古田さんは監督復帰されるご予定はないのですか。
どうなるんですかね。こればっかりは僕も分からないんですよ。チャンスがあれば頑張りますので、応援しててください(笑)。
――また、最近では元プロ野球選手が高校野球の監督に就任するケースが増えています。高校野球の監督には興味はありますか。
もちろん興味自体はあります。ただ、1つの高校に入っちゃうと、そこだけにフルコミットしないといけないじゃないですか。言葉は悪いんですけど、我々のように野球界でそれなりに影響力がある人間は、もっと広くいろんな人に出会った方が刺激を与えられるし、そういう役割を担っていかないといけない。そういう意味では、1つの高校にコミットするということは多分しないと思います。
■相次いだ強豪校の地方大会敗退も「意外とは思わなかった」
――今回の地方大会の大きなトピックスとして、大船渡高校の佐々木(朗希)選手の登板回避が挙げられるかと思います。古田さんは出演された『サンデーLIVE!!』は「監督の考えを僕は支持したい」と話されていましたが、球数制限など「ここを改善したらより良くなるのでは」という点はありますか。
ピッチャーに関して言うと、休む時間をあげないといけないので、球数制限や日程など、考える余地はあります。ただ、今年は日程が考慮されて、準決勝と決勝の間にも休養日が設けられました。最善がなにかというのはまだ分かりませんが、良い方向には進んでいるかなと思います。
――最後に今大会の展望をお聞かせください。地方大会では、昨年優勝した大阪桐蔭や、注目されていた「ビッグ4」を擁した高校が相次いで負けたりと、波乱が多かったと感じます。
いや、毎年のことといいますか、春から夏にかけて力をつけてくるチームは本当に多いので、意外とは思わなかったですね。変な話、「ビッグ4」というのも、マスコミが勝手に決めたことですし(笑)。若い選手は劇的に伸びる瞬間というのがあるので、みんなが思っていなかったニュースターが活躍するのが楽しみです。
■古田敦也
1965年8月6日兵庫県生まれ。川西明峰高、立命館大、トヨタ自動車を経て、1989年ドラフト2位でヤクルトスワローズに入団。MVP2回(93年、97年)、首位打者(91年)、ベストナイン9回、ゴールデングラブ賞10回など数々のタイトルを受賞。2005年に通算2000本安打達成。2006年選手兼任監督に就任し、2007年現役引退。2015年に野球殿堂入り。現在は野球解説者として活躍。