斎藤慎太郎王座への挑戦権を争う第67期王座戦挑戦者決定戦の豊島将之名人―永瀬拓矢叡王戦が7月25日、大阪市福島区「関西将棋会館」で行われ、永瀬叡王が勝利を収めました。
斎藤王座との「26歳対決」に臨む
対局は永瀬叡王の先手で、相居飛車「矢倉」模様の序盤戦となり、永瀬叡王が飛、角、銀を使ってシンプルに先攻しました。「自分の守り駒と相手の攻め駒の交換は損」というのが将棋のセオリーのひとつですが、豊島名人は永瀬叡王の攻めの銀と自身の守りの銀の交換を甘受。さらに、低い位置にいたほうが守りに利くため、「金は引く手に好手あり」という格言もある金を前線に出しスキを見せる、まさに「名人に定跡なし」を地で行く指し回しを見せました。
これが誘いのスキか、本当のスキか。永瀬叡王は交換したばかりの銀を敢然とスキに打ち込みました。
結果的には、豊島名人の金上がりは「本当のスキ」でした。打った銀で相手の桂、香を奪い、奪った香を銀と交換して大きな駒得を果たした永瀬叡王は、一転大駒の角を切って(※自身の大駒を相手の小駒と交換すること)豊島玉を仕留めに掛かります。以降、戦力の少ない豊島名人の攻撃に丁寧に対応してさらに優位を拡大、最後は大差で大一番を制しました。
豊島名人は珍しい大敗となりました。しかし金上がりは相手の攻めを助長するものとなりましたが、そもそもそれまでの作戦が思わしくないもので、わざとスキを見せる勝負手というよりはどちらかと言えば苦肉の策だった模様です。
永瀬叡王は2016年度、第87期棋聖戦五番勝負でタイトル戦初登場。2017年度の第43期棋王戦五番勝負でも挑戦権を獲得しましたが、この2つのシリーズではそれぞれ羽生善治棋聖(※当時)、渡辺明棋王(※現在は王将、棋聖と合わせ三冠)にいずれも2勝3敗で敗退。しかし今年、第4期叡王戦七番勝負で高見泰地叡王(※当時)を4勝0敗で破り、三度目の正直でタイトルを獲得しました。4度目の挑戦となるこの王座戦で一気複数冠となるでしょうか。これまでの公式戦対戦成績は永瀬叡王1勝、斎藤王座1勝となっています。
五番勝負の日程は以下の通りです。
第1局 9月2日 神奈川県秦野市「陣屋」
第2局 9月18日 大阪市「ウェスティンホテル大阪」
第3局 10月1日 神戸市「ホテルオークラ神戸」
第4局 10月8日 静岡県河津町「今井荘」
第5局 10月16日 甲府市「常磐ホテル」