名車「W124」と共通する? 「MAZDA3」の乗り味

MAZDA3とW124には、技術面でも関連性がある。それを教えてくれたのは、開発主査の別府耕太氏だ。「W124のようなオールドスタイルの欧州車の挙動は、人間にとって自然で、楽な動きが実現できていました。MAZDA3は、最新技術でそうした性能を実現しています」というのが別府氏の解説である。最新技術の一例として別府氏が挙げたのは、MAZDA3で初めて採用した樹脂だった。

  • マツダの新型車「MAZDA3」

    「MAZDA3」は最新技術で人間にとって自然で楽な挙動を実現しているという

MAZDA3では、路面からのショックをサスペンションだけでなくボディでも減衰するため、鉄と鉄を溶接する面に、振動を熱に変換する樹脂を採用している。この樹脂の働きは、例えば汗を熱に変換するユニクロの「ヒートテック」のようなものといえば分かりやすいだろうか。振動エネルギーが樹脂を通過するとマイルドになって乗員に伝わり、結果的に人間がバランスを取りやすくなる、というものだ。

他社が鉄と鉄との接着面に樹脂を使うのは、主にボディ剛性を高めるためであり、マツダとは異なる考え方であるという。別府氏によれば、「完全にリニアな状態は人間にとって不自然です。脳からの信号は神経を伝わり、コンマ何秒かの後に、操作する手や足に伝わるというズレがあります。そういった最新の研究結果を反映させました」とのこと。こうした考え方は、パワーステアリングやアクセルペダルの操作感にもいかされているそうだ。

  • 「MAZDA3」の室内

    パワーステアリングやアクセルペダルの操作感も人間研究に基づき調整したとのこと

考えてみれば、過去のマツダ車は新車販売で値引き額を大きくした結果、下取り価格が下がり、査定額の低い他社ディーラーには売れないという状況を生み出し、それを揶揄する「マツダ地獄」なる言葉が一人歩きしたことがあった。また、1980年代後半のマツダは、高級車メーカーへの転換を果たすことを目標に掲げ、マツダ店、オートラマ店、アンフィニ店、ユーノス店、オートザム店と販売チャンネルを5つに増やすとともに、工場を増設するという方針をとったが、バブル崩壊で一気に赤字に陥るという危機も味わった。

魂動デザインやスカイアクティブ技術により、マツダのブランド価値が向上した今日から考えると、遠い昔のお話のようだ。MAZDA3の登場から始まるマツダの新世代商品群は、同社のブランド価値をさらに高めそうな気配である。