子どもを持つ親の多くが、わが子に「将来は大成してもらいたい」と考えていることだろう。そのために子どもに英語を学ばせたり、ピアノやスイミングといった習い事をさせたりしているかもしれない。そういった学びも重要ではあるだろうが、「グローバルに活躍するために必要な要素なのか」と問われると、パパ・ママはどのように答えるだろうか。

この質問に対する解答へのヒントをくれそうなのが、ニューヨークで生まれ育った日系アメリカ人・酒井レオ氏だ。酒井氏は、バンク・オブ・アメリカで史上最年少で全米No.1の営業成績を収めており、現在はビジネスパーソンがグローバルに活躍できるよう、能力開発のサポートをしているという。

これからのグローバル時代を生きる子どもたちが世界へと羽ばたくため、パパ・ママは子育てにおいて何を心がけたらよいのだろうか。

  • 子どものメンタルを強くするには?

    グローバルで活躍するには?

挫折する機会を親が奪ってはいけない

こんにちは。酒井レオです。

前回は、子どもの「なぜ?」という好奇心、そして、「好き」で夢中になれるものが将来につながっていくというお話をしました。今回は、その好奇心と好きを貫いていくためのメンタルについて、お話をしていきたいと思います。

近頃、教育界でも「レジリエンス(resilience)」という言葉が注目を集めています。日本語では、「回復力」、「復元力」、「跳ね返す力」と訳されることが多く、これを教育に当てはめてみますと、「嫌なことや逃げ出したいことがあっても、再び前に進んでいこうと自身を奮い立たせる回復力」、「大きなストレスを跳ね返す力」、「最後まで全力で取り組むことのできるやり抜く力」という表現になるかと思います。

レジリエンスの反対語は、脆弱性を意味する「vulnerability」です。懸命に取り組んできたことでも、ほんの些細なきっかけひとつで崩れてしまう。そんなもろさは誰の中にも潜んでいることでしょう。そこで諦めた瞬間に、それは挫折と呼ばれます。

しかし、諦めずにその経験をバネにして這い上がれば、それは人生の糧となります。どんな経験も糧にできる。それこそが、レジリエンスの根底にあるものでしょう。

人生を前進させるには、課題や障壁を自分の力で乗り越えなければなりません。それを私は「突破力」と呼んでいます。どんな困難にぶつかっても、立ち向かっていく突破力があれば、道を切り拓くことができます。突破力があれば、どんな苦境からも人生を好転させることができます。

この突破力を身につけるために必要なのが、きちんと挫折を経験させることです。子どもが傷つくことを過度に心配し、親が先回りして挫折する機会を奪うことは、自分で前に突き進む突破力を奪うことにほかなりません。小さな挫折を経験させないでいると、人生そのものを挫折してしまうことになるかもしれないのです。挫折して、突破する方法を模索し、乗り越える。この繰り返しがレジリエンスを育みます。

数値化して達成感を味わうことで成長できる

目標は、必ず数値化させましょう。なぜなら、数字はウソをつかないからです。低学年の子どもなら、1日3問算数の問題を解くということでいいのです。わずか3問でも「やり遂げた」という達成感を得ることができますし、終わったあとにカレンダーに丸をつけ、努力の成果を“見える化”すると、やる気を持続しやすくなる効果があります。

取り組んでいるスポーツがあれば、3カ月程度で達成できる大きな目標をまずは立てます。しかし、大人以上に子どもの集中力は長くは続きません。ですから、大きな目標を達成するために必要な小さな目標をクリアしていくスタイルがおすすめです。

「3カ月後にリフティングができるようになりたい」。これが大きな目標とした場合、親がスケジュールを組んで取り組ませるのではなく、自分で決めること。これが何より重要です。

「リフティングマスターするにはどうしたらいいと思う?」
「やっぱり、練習するしかないよね」
「そうね。いつだったら、練習できそう?」
「習い事のない、月曜日と木曜日の夕方かな」
「うん。その時間ならできるね。あとは、朝、学校へ行く前に5分くらいなら毎日できそうだけど?」
「あ、そうか。じゃあ、朝にする。毎日やったほうがうまくなりそうだから」

自分で決められるように会話を導きながら、目標達成の枠組みを作ります。もちろん、練習した日にはカレンダーに丸をつけて見える化することも忘れません。

あとはスモールステップで、最初の2週間で、まずはワンバウンドリフティングを3回できるようにしようなど、小さな達成感を味わえる、自信をつけてもっとやりたいと思えるくらいのさじ加減の目標を設定し、クリアするたびにまた小さな目標を設定して、3カ月後の目標達成につなげます。

毎朝5分。朝食前に練習を終わらせるためには何時に起きて準備をすればいいか。そう考えることでタイムマネジメント力も身につき、実際に練習を続けることで、「できる!」「自分にもやれた」という自信と達成感が手に入るのです。

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酒井レオ

ニューヨーク生まれ、ニューヨーク育ちのバイリンガル日系アメリカ人。 NPO法人Pursue Your Dream FoundationおよびLittle Monster, Inc 共同経営者。金融、IT、メーカーなどあらゆる業界を対象に、社長・役員のためのエグゼクティブコーチングから、マネジメント研修、新人研修まで幅広く指導を行っている。