髪が生えるとわかっただけで、こんなにも浮かれることができるんだ

――そうした薄毛との格闘との結果、現在は植毛してそうした悩みも解決されたわけですが、植毛するにあたってはどんな心境だったのでしょうか。

  • 薄毛を克服して、どのような変化があったのだろうか?

ネズミ:4年間も髪がない生活が当たり前だったこともあって、ひたすら楽しみでした。ずっと髪形を選べなかったので、植毛手術の前日にはヘアカタログを見て「髪が生えたらこの髪型にしよう」って考えたり、とにかくウキウキでした。髪が生えるとわかっただけで、こんなにも浮かれることができるんだって。

やかべ:部屋に行ったらそのカタログがあったんですけど、したい髪型のページにたくさん折り目がついてましたからね。

――相方としては、植毛することには反対じゃなかった?

やかべ:もう、全然。相方がものすごく乗り気だったので。植毛して喜ぶならこっちも嬉しいですから。

――今お話していても、植毛しているとはわからないですね。むしろ毛量の多い人だな~っていうくらいで。

ネズミ:そうですよね。植毛した部分は前髪なんですけど、たぶん普通の人と比べても違いがわからないと思います。(植毛時の写真を見せながら)単純に、この範囲が植毛した部分で、これが生えきったのが今の状態です。

――そもそも、植毛というのはどういう状態なのかレクチャーしてもらえますか?

ネズミ:後ろ髪の毛根を間引いて、前頭部に植え込んでいるんです。つまり、自分の毛根の場所を移動しているんです。側頭部とか後頭部って、理論上ハゲないんですよね。その部分から毛根を間引いているので、取ってもある程度の量は残るんです。植え込んだ部分に新しい組織がちゃんとできるので、髪の毛が伸びるし、抜けてもまた生え変わるっていう、他の髪の毛と同じ状態になるんです。この状態から今の状態になるまでに1年くらいかかりました(手術は2018年4月1日に実施)。

やかべ:自毛植毛というものなんです。

――不安はなかったんですか。

ネズミ:全然なかったです。人生で一度も手術したことがなかったので、手術というもの自体への不安はありましたけど、先生の説明を受けてシステムを理解した上で受けたので、全然怖くはなかったです。

――写真をもう一度見せて欲しいんですけど、この猫耳はなんですか?

ネズミ:これは、毎日ツイッターに、髪の毛の写真をカチューシャで止めた状態でアップするように言われていて、家にあったのがこれだけで。買い替えるよりはこれの方が面白いな、と思いまして。だいたいみなさん、一家に一個はあると思うんですけど。

やかべ:ないよ! こんなの。26歳の一人暮らしの男の部屋にこれがあったらヤバいでしょ。どうですか、面白いですかこれ?

――いや、あんまり。

やかべ:ははははは!

ネズミ:買い替えれば良かったよ!

僕はハゲネタが好きでしたけどね(笑)

――薄毛時代と、植毛した今とではどこがどう変わったか教えてください。

ネズミ:まず、薄毛あるあるとして、最初はまさか自分の髪が抜けるとは思ってないんですよ。先ほどお話したように、最初は本気でホテルの掃除が行き届いていないんだと思ってましたから。それくらい、「まさか自分が!」って、実感するまでに時間がかかるんですよ。それと、とにかく風が怖いんです。前髪を散らしていた分、ちょっとでも風が吹くとそれが崩れてしまうので、あらゆる風が怖かったですね。扇風機でさえも。

――じゃあ、夏場はエアコンに気を付けないといけなかったわけですね。

ネズミ:そうですね。「送風」にはしないで欲しかったです。エアコンをつけるときには必ず「除湿がいいよ」ってみんなを誘導して除湿にさせてましたから。風を避けまくってました。あと、地下鉄を降りるときの突風もめちゃくちゃ怖かったです。

――帽子をかぶったりはしなかったんですか?

ネズミ:かぶったりしたこともあったんですけど、髪が押さえつけられちゃう分、いざ脱いだときのセットが上手くいかないんですよ。だから、帽子は帽子で考えものなんですよね~。

――ここに至るまで、自分から植毛という選択を考えたことはなかったんでしょうか。

ネズミ:存在は知っていましたけど、身近じゃなかったので、植毛しようなんて思いもしなかったです。今となっては、選択肢の一つだとは思うんですけど。

――やかべさんから「こうしてみれば?」とかアドバイスはしなかったんですか。

やかべ:もう、薄毛が進んでいたので。自分でケアもしていましたし、僕が何か言ってもどうせ聞き入れないし、自分の方がわかってるからって思うだろうなって。だから何も言わなかったです。

ネズミ:いや、今日は取材用に「相方の好きなようにやらせてあげたい」みたいな良い感じで言ってますけど、すげえバカにしてましたからね!

やかべ:ははははは!

  • ネズミさんのハゲネタに大爆笑するやかべさん

ネズミ:舞台ではやらないんですけど、ネタ合わせのときとかに、2人だけの間でハゲネタをやってたんですよ。そうすると僕の発言でこんなに笑ったことがないっていうくらいに笑い転げていて。

やかべ:僕はハゲネタが好きでしたから(笑)。お客さんの前ではやらないですけど、2人の間でやる鉄板ネタはありましたから。

ネズミ:ネタにハゲを入れてお客さんが引いたときも、楽屋に戻ったらめっちゃ腹抱えて笑ってるんですよ。「こいつ、ハゲてるのにハゲネタでスベってるやん!」って。

やかべ:いやまあ、お客さんもウケていいのになって思ってましたけどね(笑)。

薄毛を克服できるということを知ってほしい

――植毛をしてからのネズミさんは変わりましたか?

やかべ:変わりましたね。今ままではハゲてる分、うつむき気味で、気持ち的に毛根と精魂が一緒に抜けている感じがあったんですよ。でも植毛したことで、どんどん背筋が伸びてきて、毛と一緒で堂々とするようになってきましたね。

ネズミ:街を歩いていても、風が吹いてきたときに前髪を気にしなくていいというだけで、堂々としていられますし、人生の中の6割に余裕ができたので。お笑いのこともちょっと増やしたりできますし。

やかべ:ちょっとかい!

ネズミ:人と話すときも、相手の毛量を見ちゃっていたんですよ。あと「この人、上手く隠してんな」とか思いながら話してたんですけど、最近はそんなことはなくなりました。最近は、自分が気にしなくなった分、人の髪の毛を見なくなってるんですよ。薄毛の先輩に「俺の頭、気にならなかった?」って言われても、「すいません、普通にネタ見ていて気付きませんでした」って。

やかべ:それでいいんだけどね、普通は(笑)。

ネズミ:前は、ネタじゃなくてずっと頭しか見てなかったからね。あのコンビはこっちがツッコミだけど、じつはツッコミの方がハゲてるから本当のボケはあっちだ、とか。

やかべ:「どんなにツッコんでもハゲてるから説得力がないよ」とかね。意味がわからない持論があるんですよ。

ネズミ:めちゃくちゃ相方の頭を叩いてたけど、本当は自分の頭を叩いて刺激を与えた方がいい、とか。

――この記事が出ることで周囲に摩擦が生じそうですけど、大丈夫ですか。

ネズミ:大丈夫です、僕はもう勝ち組なので。

――すごい自信がありますね! じゃあお笑いにも自信が出てきた?

ネズミ:そうですね、ネタ中に頭を触ることもなくなりましたし。

やかべ:ダイナミックになりましたね。ネタ中も舞台の袖まで行きますからね。

ネズミ:前は、なるべく手だけしか動かさないようにしてましたから。

――賞レースとかの結果にも繋がったりしそうですか?

やかべ:言われてみれば、ずっと1回戦敗退だった「M-1グランプリ」で2回戦まで行きました。

ネズミ:植毛している最中に上がったので、植毛し終えた今年はもっといけるかもしれないですね。たぶん、髪の毛で減点されて落ちてたと思うので。

やかべ:いや違うだろそれは(笑)。そんな審査員おらんから。

ネズミネズミ:でも最近は、みんなから「見せて見せて」って言われてすごいですね。

――すごく評判がいいんですね。

やかべ:評判がいいですね。僕もそれは嬉しいし、薄毛を克服できるということを知ってほしいので。前よりも明るく薄毛の話をしています。

――じゃあ、まわりの人に希望を与えている感じで。

ネズミ:そうですね、僕自身も相当助かりましたし。

やかべ:確かに、いないですもんね。まわりに植毛している人が。いても言わないでしょうし。色んな所で人に見せて話しているので、めちゃくちゃ影響を与えていると思います。

  • 薄毛を克服したことで、プライベートでも仕事でも前向きになれたと話す、ネズミさん

――モテるようになったりしました?

ネズミ:それがですね、不思議とモテるようになってはいなくて。

やかべ:いくら髪が生えても、もともとのスタートがありますからね。

ネズミ:番組で共演した女の子には「髪が生えた今となっては、口元を隠せばカッコイイです」って言われて。「あ、そうかそこもあったのか」って。歯が出ていたことを忘れてました。

やかべ:もともとコンプレックスが多いからね。

――とはいえ、1つの大きなコンプレックスを克服したわけですから。植毛芸人として今後はどう生きていきたいですか。

ネズミ:この1年、植毛に助けられて、おかげさまでテレビにレギュラー出演させていただいたので、ここからは僕らが売れることで、「あの人、植毛してたんだ?」って知ってもらうことで、植毛が広まれば良いなと思います。薄毛の人たちの選択肢にあんまりないと思いますし、意外と手軽にできるということを知ってほしいと思います。

やかべ:植毛して、面積が埋まったので、芸も埋めていこうと思います。

ネズミネズミ:芸を埋めるってどういうこと(笑)。

やかべ:うまいこと言って締めようと思って失敗しました(笑)。

――では最後に、薄毛に悩んでいる方々に向けてメッセージをお願いします。

ネズミ:薄毛治療は、早ければ早いほど、人生を楽しめる時間が増えると思います。実際やってみて思ったのは、薄毛のことを考える時間が生活の中からなくなった分、行事ごとも思いっきり楽しめるので。海に行っても薄毛のこと気にしてたらMAXで楽しめないですけど、薄毛の悩みがなくなれば100%楽しめます。ぜひ、取り掛かるなら早めに取り掛かって、楽しい時間を満喫してほしいです!