――今回、柴咲さんはWOWOWドラマで初主演を務められますが、もともと「連続ドラマW」に対してどのようなイメージを?

「連続ドラマW」は私の周りにもファンが沢山いて、「今度あれに出るんだって?」って声をかけていただくことも多かったので、現場に入る前から期待値が上がっていました。実際の現場でも、しっかりと骨組みが作られたうえで進行していくので、とてもやりやすかったです。

――演じやすい環境だったということですね?

私にとってのお芝居をする意義って、現場で自分自身が何を思ってその瞬間を生きているかを実感できることにあって、それこそが一番のやりがいでもあったりするんです。今回は本当に素晴らしい経験をさせてもらったので、そういった意味で素敵な作品に携われたという実感はありますね。私自身、この20年いろいろな作品に関わらせていただいた中で、気づいたことがあるんです。私はずっと「時代なんてそうそう簡単に移り変わるものじゃない」って思っていたんですが、割とあっという間に移り変わるんだなって。特に最近そのスピード感が凄まじい。

――というと?

自分の感覚では、「ついこのまえ大河ドラマで1年以上お芝居をやったから、少し休んで英気を養って次の作先品に臨もう!」なんて思っていたら、周りからは「すごい久しぶりですね」とか言われてしまって、「あー、そういう感じなんだ!」って(笑)。世代もちゃんと移り変わっていて、過去に出演した作品を知らない方の方が増えていってるような状態で。私はこれまでは割と、顔付きの印象もあって凛とした強気な役柄や、しっかりした役が多かったように思うんですけれど、今回はそれとは反するような、割と内向的なキャラクターで、自分の意見や主張があまり強くない役柄だったので、自分的にも新鮮でした。

――今回の役柄は柴咲さんご自身とは立場が違うので、「逆にそれを活用したい」とおっしゃっていましたが、事前にどのような準備をされましたか?

大河ドラマの撮影以来、割と髪が短くて潔い感じだったので、少し伸ばしてフワッとさせるように意識していました。メイクさんと相談しながら、私なりに里沙子像を作っていった感じがありますね。感情的な部分については実際に現場で台詞を吐いてみないとわからなかったり、相手の役者さんと呼吸をするようにお芝居をしてみて生まれるものが沢山あるんです。もちろんちゃんと対応できるようにあらかじめセリフは入れますけど、あとは現場で臨機応変に演じたいと思っていたので、自分の中で固めることはしなかったですね。唯一気をつけたのは声のトーンです。あまり低く落ち着いた感じにせず、子育てをする上での迷いや葛藤など、どこかに不安要素が現れるといいなと思いながら演じました。

――母親役を演じるにあたって意識されたことはありますか?

私自身は、母親役だからといって普段と特に変わらないんですけれど、きっとなかには「子どもを産んだ経験がないのに、あなたに母親役なんてできるの?」っておっしゃる方もいなくはないだろうなとは思いました。実際に母親になった人の意見も私なりにいろいろ聞いてみたんですが、「出産によって自分の本質が変わるわけではない」という人もいれば、「変わったわね」っていう人もいるし。本当に一概には言えないんだなっていうのを強く感じましたね。そもそも「子どもがいないから母性がない」なんてそんなおかしな話はないと思うし、それこそ私は5歳くらいから1つ年下の子たちに本を読み聞かせてあげることが結構あったんですよ。もともとお世話をするのが好きで、小さい頃は保母さんになりたかったくらいなんです。

――娘役を演じた松本笑花ちゃんとの共演はいかがでしたか?

基本的に私は子役に対しても大人と一緒の対応しかしないんです。彼女は思った以上に「大人」だったので、現場に自然と溶け込んでいた感じですね。とはいえ、やっぱり子どもにはちょっと宇宙人ぽいっていうか、独特の世界とか視点があって、それが私にはすごく魅力的に映りました。相手をするとかご機嫌を取るとかいうことは一切なく、一緒に盛り上がれましたね。自分の中では、対等な人間関係のような感じがしました。

しかも彼女は天才的なお芝居ができる子だったので、魂のぶつかり合いのような感覚も味わえて、私の方がすごく勉強させてもらった感じがします。「私だったら絶対にテストから100パーセントの力でお芝居したりしないのに」って(笑)。逆に私ももうちょっとテストから力を入れてやらなきゃいけないのかな?

――柴咲さんご自身と里沙子に共通する部分はありましたか?

私は自分自身に正直に生きようとしてるけれども、弱い部分もありますし。そういう意味では、里沙子と共通する部分は沢山あるとは思います。でもそのアウトプットの仕方というか、人との対峙の仕方が違うなぁと思いますね。里沙子はすごく優しい人だと思うんです。でも私自身はそこまで優しくないから、そこで我慢するより言ったほうがいいって思っちゃう方なので(笑)。里沙子の場合は「それ以上自分も傷つきたくないから言えない」とか「怖いから言えない」という臆病な部分があると思うんです。私は言ったあとで「あー、こんな風に言っちゃった」って後悔することが結構あります。それもある種の臆病とも言えるし、もっと強くありたいなと思う時もありますね。

――田辺誠一さん演じる夫の陽一郎や義理の父母とのやりとりも、現実だったらかなりシンドイだろうなぁと感じます。

傍から見るとキツイかもしれませんが、それぞれみんな「普通」なんですよ。だからこそこっちも迷うし、自分の方がおかしいのかなとも思うし。ある意味「お節介」ではあるんですけど、「親切」でもあるわけです。

――確かに「親切」と「お節介」って境が難しいですよね。

私自身、自分がされて嫌だから、誰かに贈り物をするときにすごく気をつけるようにしていることがあって。贈り物をした後に「その後どう?」みたいに反応を聞いてくる人っていますよね? 贈り物は、あげた時点でもうその方のものだし、それをどうしようがその人の自由だと思うんです。だから訊かれると「一体あなたは私にどうして欲しいの?」って思っちゃうんですよね(笑)。

――ハハハ。それはかなり身につまされますね。私もこれから聞かないように気を付けます(笑)。ちなみにもし柴咲さんに裁判員の話が来て、このドラマのような事件を担当することになったら?

できるだけ中立的に物事を見極めなきゃいけないなと言う思いに駆られると思います。自分の感覚的なものに頼りすぎると、絶対に偏りが出てきてしまうので、逆にそれを抑えつけなければいけないじゃないかなって思いますね。