JR各社が2019年3月16日に実施したダイヤ改正。関西においても、おおさか東線の開業や新快速「Aシート」の導入など大きな動きがあった。嵯峨野線(山陰本線)の新駅、梅小路京都西駅の開業もそのひとつ。同駅の設置により、京都鉄道博物館をはじめとする梅小路エリアへの利便性が格段に向上した。

  • 嵯峨野線(山陰本線京都~園部間)の快速・普通列車は221系を中心に運用される

一方、新駅開業にともない、嵯峨野線のさらなる混雑を心配する声も聞かれる。新駅開業にわき立つ3月下旬、嵯峨野線の列車に乗車し、現状を確認した。

■「偉大なるローカル線」から都市型路線に成長

最初に嵯峨野線の概要を確認したい。嵯峨野線は愛称であり、正式には山陰本線の一部。京都~園部間にこの愛称が付けられ、京都市への中核路線のひとつとなった。新駅の梅小路京都西駅が京都鉄道博物館や京都水族館への最寄り駅となるほか、二条城に近い二条駅、東映太秦映画村が徒歩圏内の太秦駅、嵯峨・嵐山エリアの玄関口となる嵯峨嵐山駅など、沿線に観光名所が点在し、観光客の利用が多いことも特徴に挙げられる。

嵯峨野線はJR西日本の発足以降、都市型路線に急成長した路線でもある。1987(昭和62)年の同社発足当時、嵯峨野線という愛称はなく、単線・非電化というローカル色の濃い路線であった。当時の時刻表を開いてみると、日中の普通列車は1時間に1~2本しかなく、長距離列車の目立つダイヤだったようだ。「偉大なるローカル線」とも評された山陰本線の一部であることを如実に物語っている。

1989(平成元)年に嵯峨(現・嵯峨嵐山)~馬堀間が新線に切り替わり、1990年に京都~園部間が電化された。以降、複線化工事が進められ、2010年に京都~園部間の複線化が一部を除き完了。現在、11~14時台における京都駅始発の普通・快速列車は嵯峨嵐山行が毎時1本、亀岡行が毎時2本、園部行が毎時2本(うち1本が快速)となっている。

嵯峨野線は新駅の開業も多かった。1987年当時、京都~嵯峨(現・嵯峨嵐山)間の途中駅は丹波口駅・二条駅・花園駅の3駅だったが、後に太秦駅と円町駅が開業。新駅の梅小路京都西駅は、丹波口駅から1km未満(営業キロ0.8km)の距離にある。

■土曜日の嵯峨野線は観光客が目立つ

筆者は3月後半の土曜日、京都鉄道博物館での取材を終えた後、梅小路京都西駅から亀岡行の普通列車に乗車した。梅小路京都西駅は京都鉄道博物館のすぐ北側に設置され、こどもたちを連れた家族での利用が目立つ。駅の構造は2面2線の相対式で、ホームは予想以上に広い。木製のベンチが置かれ、京都らしさを醸し出している。

  • 梅小路京都西駅は3月16日のダイヤ改正に合わせて開業

亀岡行の普通列車は7分遅れで梅小路京都西駅に到着した。使用車両は221系8両編成。車内は転換クロスシート中心の座席配置となっている。8両編成のうち、亀岡方2両は比較的空いているように見えたが、筆者が乗車した4号車は立客で混雑していた。

土曜日ということもあり、車内はやはり観光客の姿が目立つ。訪日外国人も多数乗車していて、進行方向と逆向きの転換クロスシートに座っている人も多い。京都駅で折り返す際、転換クロスシートに不慣れな訪日外国人が多かったか、あるいは座席を転換する余裕もないほどの勢いで乗客が車内に乗り込んできたのか……などと想像する。

多くの乗客で混雑する中、亀岡行の普通列車は梅小路京都西駅を発車。丹波口駅、二条駅に停車した後、11時44分、快速停車駅でもある円町駅に到着した。金閣寺方面の京都市営バスに乗り換えられるため、この駅も観光客の利用が多い。実際、京都駅で外国人観光客から金閣寺への行き方について聞かれ、円町駅から京都市営バスに乗り換えるルートを紹介したこともある。金閣寺への玄関口であることを示すために、円町駅に「金閣寺口」のような副駅名を導入しても良さそうに思える。

円町駅を発車した普通列車は花園駅、太秦駅を経て嵯峨嵐山駅へ。同駅に近づくと、到着を知らせる日本語・英語・中国語・韓国語の自動放送が流れた。11時50分、嵯峨嵐山駅に着くと観光客が一斉に下車し、立客の姿は見かけなくなった。

嵯峨嵐山駅から先はローカル色が濃くなる。保津峡駅はトンネルに挟まれた駅だが、車内からでも絶景を楽しめる。馬掘駅付近から戸建ての新しい住宅が目立ち、終点の亀岡駅には12時2分に到着。駅周辺ではプロサッカーチーム「京都サンガF.C.」の本拠地となる予定の「京都スタジアム(仮称)」の建設が進んでいるようで、完成予定は2020年春とのこと。スタジアムが完成すれば、週末の試合開催日をはじめ、嵯峨野線の混雑がさらに増すかもしれない。

亀岡行の普通列車はその後、同駅12時22分発の京都行となって折り返す。筆者もこの普通列車に乗り、京都駅へ折り返すした。亀岡駅での座席の埋まり具合は3割程度といったところで空席が目立ったが、嵯峨嵐山駅までにすべての座席が埋まる。最終的に下り列車と同じく立客が目立ち、12時49分に京都駅に到着した。

  • 橋上駅舎となった亀岡駅。嵯峨野線区間では二条駅、嵯峨嵐山駅、亀岡駅がかつて名駅舎として知られたが、いずれも高架化または橋上駅舎化により建て替えられている

嵯峨野線はとくに京都~嵯峨嵐山間の混雑が激しい。221系の特徴である転換クロスシートが影響し、ドア付近に乗客が集中してしまい、乗降に手間取る場面を見かけた。小さい子を連れた家族はベビーカーの置き場所に困っている様子だった。

転換クロスシートの221系ではなく、ロングシートの車両に変更すれば、乗降が多少スムーズになるかもしれない。とはいえ、ベビーカーの置き場所に関する問題は解消されないだろう。現状ではドア付近の補助席を使用中止し、空いたスペースをベビーカー用にするしかないように思われる。今後も土休日を中心に乗客増が見込まれるため、快速・普通列車を増発する、あるいは各列車の両数を増やすなどの対応が望まれる。

■京都駅の嵯峨野線のりばも混雑

京都駅では31~34番線ホームを嵯峨野線の快速・普通列車が使用する。ただし、34番線ホームは降車専用。32番線ホームに列車が到着した後、32・33番線ホームが大混雑となり、やむなくホームの端を歩く利用者の姿も目立った。

嵯峨野線は京都駅構内で一部単線となっており、ホームの構造を見ても駅舎寄りの車両が混む傾向にあることは明らか。嵯峨野線の混雑を少しでも緩和するため、京都駅においてもなにかしらの工夫が必要ではないか。ハード面はもちろんだが、ソフト面においても、乗客増に対応したきめ細かな対策を講じる段階になっていると感じる。