久しぶりの同窓会で、「フレックスタイム制」で働く友人たちの話を聞いた。育児にも参加できるし歯医者にも通えるって、何だかいいことずくめのようだけど、実際のところどうなの?

  • フレックスタイム制を正しく理解していますか?(写真:マイナビニュース)

    フレックスタイム制を正しく理解していますか?

というわけで、今回はフレックスタイム制について解説します。

フレックスタイム制とは

フレックスタイム制とは、社員自身が始業・終業時刻を自由に決めることができる働き方のことです。

これまでの働き方としては、会社側が労働条件の1つに始業時刻と終業時刻を明示し、社員はそれに則って就業するのが一般的でしたが、フレックスタイム制では、予め清算期間における総労働時間(契約時間)を決めておき、その契約時間内であれば、自分の都合に合わせて出社・退社することが可能です。

ちなみに、始業と終業時刻の一方だけを設定できる状況は、フレックスタイム制とはいえません。

フレックスタイム制の仕組み

一般的なフレックスタイム制では、その時間帯の中であればいつ出社・退社してもよい時間帯「フレキシブルタイム」と、必ず労働しなくてはいけない「 コアタイム 」を定めて運用していくことになります。

フレックスタイムのメリット・デメリット

フレックスタイム制を導入することで、どんなメリットがあるのかを見ていきましょう。まずは、「プライベートと仕事との両立」ですが、フレックスタイム制導入に至った最も大きな背景ともいえるでしょう。

日本社会は今、育児、介護、通院・治療との両立など、実にさまざまな問題を抱えています。私生活と仕事との両立を実現するためには、柔軟な働き方が可能な社会へと変化することが急務です。

フレックスタイム制によって、自分や家庭の事情に合わせた就業時間を選択することが可能になるほか、労働力不足の解消や通勤ラッシュ緩和も期待できるでしょう。

また、従来の働き方に比べ、効率よく仕事ができることもメリットといえます。忙しくない日は早く退社して私生活を充実させた方が、繁忙期のパフォーマンス向上につながるとされています。

一方、デメリットについては、労働時間を自己で管理しつつ、仕事をきちんとこなすだけの調整能力がなければ行き詰まってしまうということです。組織で働いている以上、自分一人で完成する仕事はありません。チーム全体の仕事に支障をきたしてしまうことのないよう、全体の進捗状況を踏まえて勤務時間を調整する必要があるでしょう。

フレックスタイム制導入に必要な条件

フレックスタイム制を導入するには、法律上、「就業規則に、始業・終業時刻を労働者の決定に委ねる旨を記載」し、「フレックスタイム制の基本的枠組みを労使協定に定め、会社側と労働者の代表で合意」しなければなりません。基本的枠組みとなる項目は以下のとおりです。

1.対象労働者の範囲(全従業員、部署単位、個人など)
2.清算期間(適用期間。1カ月以内とされているが1週間単位も可)
3.清算期間における総労働時間(1週間あたりの所定労働時間が40~44時間)
4.標準となる1日の労働時間(清算期間内における総労働時間を、その期間における所定労働日数で除したもの)

このほか、コアタイムやフレキシブルタイムを定める場合には、それぞれの開始及び終了時刻も記載しなければなりません。

これらの条件を全てクリアしていなければ違法となりますので、注意しましょう。

フレックスタイム制における残業とは

フレックスタイム制であっても、残業扱いとなるケースがあります。通常であれば、法定労働時間である1日8時間を超えた時点で残業代が発生するのですが、例えば、31日177.1時間というフレックスタイム制適用の中、8時間以上働いた日が数日あったとしても、31日で177.1時間を超えなければ残業代は発生しません。

これを超えた場合に、残業扱いとなります。

裁量労働制と変形時間労働制

ここで、フレックスタイム制に似た制度を2つご紹介します。

裁量労働制

実際の労働時間に関係なく、労働者と使用者の間の協定で定めた時間だけ働いたと見なす制度。研究者、番組プロデューサー、弁護士、税理士など、職業の自由度が高い専門職で導入されるケースが多い働き方です。ただし、制度の運用方法を間違えるとサービス残業が横行する危険性があるため注意が必要です。

変形時間労働制

1カ月や1週間単位の中で、その間の平均労働時間が規定の法定労働時間を超えない範囲で、特定の日や週の労働時間を延長できる制度です。フレックスタイム制は始業・終業時刻が自由に設定できるのに対し、変形時間労働制ではそれができません。基本的に、忙しい時期に長く働く分、そうでない時に早く帰ることで調整する働き方になります。


少子高齢化による人手不足が進む中、若い世代が働き続けることのできる社会をいかにつくり上げていくのかが、大きな課題となっています。

とはいえ、個々が自分勝手に働いていては経営が成り立ちません。従業員は、制度を上手に活用しつつも、常に責任を持って自己の役割を果たすよう心がけましょう。