日本テレビのショート動画サービス「テレビバ」が、昨年10月から本格稼働して半年が経った。ヒットドラマ『3年A組-今から皆さんは、人質です-』との連動コンテンツが大きな人気を集めるほか、オリジナルコンテンツも複数配信している。
そんな中、かつて地上波で放送されていたミニ番組『アグリンの家』が、JAグループの提供そのままに4年ぶり復活するいう新たな展開がスタートする。「テレビバ」事業を担当する日本テレビICT戦略本部の秋山健一郎氏に話を聞いた――。
■ネット上で視聴者とドラマの接点増やす
日テレが展開する動画配信サービスと言えば、「Hulu」のほか、「日テレTADA」「TVer」という見逃し配信があるが、「テレビバ」は有名YouTuberたちが席巻するショート動画界の中で、テレビ局の持つノウハウで多様なコンテンツを作り、戦略的に拡散。それを、さまざまな手法でマネタイズすることを目的としている。
番組連動コンテンツで、大きな反響を得たのが『3年A組』のスペシャルショートムービー。本編で人質に取られる前の生徒たちの放課後の日常を描いたもので、ドラマがスタートする前の昨年12月31日に「#1」をスタートさせてから、ドラマと連動する形で「#30」(2月28日配信)まで配信した。秋山氏は「生徒を演じるキャストの皆さんが豪華で、魅力的なコンテンツになると思いました」といい、「本数や配信頻度、配信ならではの拡散施策を行い、テレビだけでなく、ネット上で視聴者とドラマの接点を増やすことができました」と手応えを語る。
また、バラエティ番組でも派生コンテンツを配信。オードリーの若林正恭と水卜麻美アナがMCの『犬も食わない』(18年10~12月放送)のコントで春日俊彰が演じた「YouTuberナメてるおじさん芸人・古井ひでお」のキャラクターが登場する「古井ひでおチャンネル」は、番組終了後もひとり歩きをはじめ、現在も週1回ペースで配信している。
さらに、桝太一アナの企画や放送後のフリートークなどを配信する『ZIP!』公式チャンネルなども展開。「番組関連のコンテンツはどんどん増やしていきたい」と意欲を示し、「ショート動画とドラマの親和性が強いことがあらためて分かったので、今後もドラマ連動のオリジナルコンテンツを考えています」と構想を明かした。
■2.5次元俳優出演のオリジナルコンテンツも
一方で、オリジナルコンテンツも次々に制作。黒羽麻璃央、鳥越裕貴、眞嶋秀斗による癒やし系パジャマコメディ『寝ないの?小山内三兄弟』や、高橋健介、鳥越裕貴、ゆうたろうによるトークバラエティ『ぼくたちのあそびば』という2.5次元俳優が出演する動画は「ファンの方たちも含めて、幅広い皆さんに楽しんでもらっています」と話す。
この2つのコンテンツは社内募集で成立した企画で、地上波の第一線で活躍する制作者が参加。「これからのテレビのクリエイターは、地上波の番組もネットのコンテンツも両方作れるようになったほうが絶対にいい。ショート動画の拡散戦略を通して、ネットでも日本テレビのクリエイティブを有効に生かせるようにしたい」と狙いを語った。
撮影の体制が整えば、その日のうちにアップできるという身軽さがショート動画の強み。『古井ひでお』で「3年A組朝礼体操」に即興チャレンジした回の再生回数が、前回比約7倍に跳ね上がったように、世の中の話題にフレキシブルに対応することで、拡散力のある動画の量産を狙う。
■1社提供のミニ番組を再編集して復活
そんな中、新たな展開としてスタートするのが、『アグリンの家』(7日スタート、毎週日曜17:00配信)。これは、地上波で2011年10月から3年半にわたって放送された、JAグループの1社提供番組を再編集して復活させるという画期的な試みだ。
全国の農業生産者を紹介するとともに、その食材を使って料理を作るというのが番組の流れで、地上波の放送では『真相報道バンキシャ!』と『ザ!鉄腕!DASH!!』という人気番組の間に放送されていたことから、記憶にある視聴者も多いだろう。
この番組は、秋山氏が企画・プロデュースを手がけ、スポンサーのJAグループの協力が新たに得られたことから、今回の復活が実現。当時放送に使用されなかった映像素材や新撮映像も活用し、2分弱だった番組を5~6分程度のコンテンツにボリュームアップさせる。
番組制作者としても、一度終了した番組が新たなメディアで復活するのは「うれしいですね」といい、「生産者の育てるこだわり、受け継いだ先人からの知恵などを、1話ごとに独自のストーリーで丁寧に表現していきます」とのこと。ゆったりとした落ち着いた映像で構成される『アグリンの家』は、ネット動画の世界で異彩を放つことになるに違いない。