昨年末、リアル店舗のような折込チラシを配布して“バズった”メルカリ。これまでも、何度も巧みなプロモーションを仕掛けてきた同社が「新元号の発表」という国民的イベントで黙っているワケがなかった。
「速さ」で注目を奪った、巧みなプロモーション
2019年4月1日14時、新元号が「令和」と発表されてからわずか2時間半後、国民の興奮冷めやらぬ頃に同社は、渋谷で「メルカリ新元号発表イベント」を実施した。
イベントで行われたことは2つ。まず1つ目は、「美しすぎる書道家」こと涼風花氏の書道パフォーマンスだ。力強く「令和」の文字を書くそのパフォーマンスは、通行人の目をくぎ付けにした。
もう1つは、事前に涼氏が書いていた「令和」の文字をプリントしたTシャツの無料配布だ。この「令和Tシャツ」は元号の発表後、急ピッチで大勢のスタッフによって制作され、合計500人に渡された。
パフォーマンスに足を止めた人たちがTシャツを受け取るための列に並び、またそれを見た人が後列に続く。時間が経つごとに人が集まってきて、会場には長い行列ができていた。
新元号発表直後ということもあり、このイベントには多くの報道陣が参加した。さらには渋谷の通行人を巻き込み、SNSでの発信にもつなげさせるという、メルカリの上手なプロモーションを見せつけられた。
このイベントは、どのように企画され、何を狙って行われたのか。イベント終了後、この企画の担当者であるメルカリ マーケティング部 マーケティングスペシャリストの星賢志氏に話を聞いた。
服が情報を伝える、再利用可能な「新しい号外」
――今回のイベントの狙いはどういったものだったのでしょう?
星賢志氏(以下、星) : 日本中が盛り上がる新元号の発表を、メルカリがいち早くお祝いしよう、というのが今回の企画でやりたかったことです。
涼さんの巨大な書き初めは、新しい時代が始まることを示したいという想い、そしてTシャツの配布は、これまでなかった「号外の新しい形」を提案したいという想いのもとに実施しました。
――号外の新しい形とは?
星 : 今まで「号外」というと、主に新聞などの紙媒体で配布されることが多かったかと思います。しかし、それらは渡されたあとには使い道がなくて、ゴミになってしまうことが問題でした。
そこで今回メルカリが配布したのは、新元号を伝えるための情報をTシャツにプリントした「再利用可能な号外」です。Tシャツを着たり、写真を撮ったりして楽しめるので、受け取ったあともゴミになりません。
また、このプロモーションには、当社が提供する「メルカリ」のサービスのメッセージも込めています。メルカリによるCtoCのマーケットプレイスは、本来価値のなくなったものをゴミとして捨てるのではなく、次の人に渡す、という仕組みを作り出しています。
――元号の発表後に、すぐ配布用のTシャツの制作に取り掛かったとのことですが、イベントの準備時間が短く、トラブルもあったのではないですか?
星 : もともと、「新元号が発表されてすぐに動く」という前提で組んだ施策だったので、大きな問題はありませんでしたね。むしろ、イベント運営側の「ドタバタ」を絵にできたのも、面白かったんじゃないでしょうか。
メルカリは、世間を投影するプラットフォームに
――イベントを終えたばかりで、まだ確認できていないかと思いますが、元号発表直後から、メルカリで「令和」関連の商品が売れていることが話題になっています。こうした盛り上がりについてはどう捉えていますか?
新元号決定ですね!✨
なんと、もうメルカリには「令和」関連商品が!みなさんすごいスピード👀#新元号 #令和 #Reiwa #令和元年 pic.twitter.com/hfyhjdmr8D — メルカリ (@mercari_jp) 2019年4月1日
星 : メルカリでは昔からよく、世間の話題を投影するような現象が起こってきました。例えば、大坂なおみ選手が全豪オープンで優勝した時には、関連グッズが多く売れたり、検索されたりするようになりました。
そういった現象は、メルカリが世の中に浸透している証でもありますので、今回、メルカリ上でいろんな商品のやり取りがなされていることは嬉しいですね。
――最後に、イベントを実施した今の心境を教えてください
星 : 多くの方にイベントに来て頂き、非常にありがたく思います。
それと同時に、「新しい元号」「新しい時代の始まり」に多くの人が注目していることを客観的に感じられました。令和はいい時代になればいいなぁと、一個人として思いますね。メルカリでも、「新しい時代の日常的なマーケットプレイス」として、これからもさまざまなことに挑戦し続けたいと思います。