“朝ドラ100作目”となる2019年度前期NHK連続テレビ小説『なつぞら』(4月1日スタート、毎週月~土曜8:00~)でヒロインを務める女優の広瀬すずにインタビュー。ヒロインとしての心がけや100作目という巡り合わせについて話を聞いた。
また、戦争で両親を失った少女・奥原なつ(広瀬)が、北海道・十勝の大自然と開拓者精神あふれた大人たちの中でたくましく育ち、そこで育まれた想像力と開拓者精神を生かしてアニメーションの世界にチャレンジしていく姿を描く本作の魅力も語ってもらった。
■ヒロインとしてみんなのエネルギーに
――朝ドラのヒロインなんだと実感した瞬間は?
1週間のスケジュールがなつだらけになって、本当にやってるんだって感じています。大変だなとはまだ思っていなくて、こんなに長く同じ役で一日中お芝居をさせてもらっている毎日がすごい楽しいなと思っています。
――ヒロインとして意識していることは?
ずっと撮影していると人って疲れてきますが、今までのヒロインの方たちはそれを吹き飛ばす力があったと思うので、“自分は楽しい”ということが伝わるといいなと思っています。私はみなさんのようなパワーはないけれど、まず自分ができることを一生懸命やろうと。初めて主演したドラマのときから、主演としてこんな風に立っていたいなって今まで感じたことを表に出して、みなさんに感じてもらって、そういうエネルギーになるような姿でずっと現場にいれたらいいなと常に意識しています。
――お姉さんの広瀬アリスさんは『わろてんか』で朝ドラに出演されましたが、何かアドバイスはもらいましたか?
ヒロインをやられたみなさんは大変だったと聞くので、覚悟しておこうと思っていたんですが、姉も「ヒロインじゃないけど私でも大変だった。だからヒロインは本当に大変だと思う」と言っていました。あんまり仕事の話はしないのに、「朝ドラのヒロインは大変だ」だけはメールが来て、「そんなに?」と思いました(笑)。長丁場の撮影もあってみなさんから「大丈夫?」と心配してもらうんですけど、私はまだその感じにはなっていなくて、リハから楽しいです。
――“朝ドラ100作目”、そして、始まってすぐに新元号に変わりますが、巡り合わせとして巡ってきたことをどう思っていますか?
人や作品の運、巡り合わせの運は異常に強い自信があって、(昨年の)紅白のときも“平成最後”と。特別な言葉に出会えるのは幸せで光栄だなと思うし、逆にこんな自分で申し訳ないという気持ちも大きいです。でも、不安を感じた作品のときに共演した先輩に「せっかくだから楽しみなよ」と言われて、その言葉にすごく救われて、この1年くらい都合よく「せっかくだからやらせてもらおう」「せっかくだから楽しもう」と思うようになりました。もっと重さを感じないといけないとも思いますが、感じすぎても自滅してしまうので、巡り合わせ、強い運を持っているからこそ楽しませてもらおうと思います。
■早く届けたい! 物語と主人公の魅力
――大森寿美男さんの脚本はいかがですか?
1ページめくるたびに心がやられる感じというか、読んでいくと「過去にこんな会話したのにまた母さんにこんなこと言われるんだ」といった切なさがすごく描かれていて、それを読んで1人じゃ耐えきれなくて、マネージャーさんや事務所の社長さんに「涙が止まらなかったです」と言いました。読み始めたら止まらなくなるというか、一人ひとりの裏の感情まで見える。切なさや喜びを感じてくれたり、人の幸せを自分の幸せだと思っている登場人物が多い印象で、早く世の中に届けたいという感情が台本もらうたびに増えます。
――なつはどういう人だと思っていますか?
幸せを感じながら生きているんだけど、子供のときから家族と離れてしまったため、勝手に距離を作ってしまう性格はどこかにあるだろうなと思っています。でも、「幸せ」という言葉や表現をちゃんと相手にも伝えるし、「ありがとう」と「ごめんなさい」をちゃんと言う少女だなと思いながら演じています。
――ご自身と似ているなと思った部分は?
あんなに良い子じゃないだろうなと思うし(笑)、なつから感じるものがたくさんあって、だから自分も頑張ろうと思います。本当に太陽みたいな存在の子。見習わなくちゃなと思うくらい素敵な女の子だと思います。
――公開されたポスターで、なつはこんがり焼けた姿を披露していますが、なつのビジュアルについてどう思いましたか?
北海道にいるときのなつは、日焼けメイクをしていて、素朴さがある。衣装のオーバーオールとチェックは、私は役で着ることがすごくあるんですが、その中でも“ザ・朝ドラ”というように麦わら帽子をかぶっているのがすごくうれしかったです。元気な女の子のイメージがハマって、男っぽい雰囲気とおさげしているバランス感でこれがなつなんだと思いました。現場ではほかのキャストの方に「いまどきの子でこんな似合う子いないよ」と言われ、自信をもって衣装を着させてもらってお芝居できたらいいなと思います。
――若い世代のテレビ離れが進んでいますが、この作品をどう届けたいですか?
『半分、青い。』を見て、なんでこんなに続きが気になって明日まで待てないんだろうという感情になり、これが中毒かと。話が進むのも早いけどたっぷり時間を感じられる、朝ドラ独特のテンポとリズムがあるなと思いました。誰が見てもクスって笑える幸せを感じ、『なつぞら』でもそんな気持ちを届けることができたら。気軽に見られるし、涙とか笑いとかいろんな感情をもらえるドラマだと思うので、どの世代の方にも届いたらうれしいです。また、アニメーションがたくさん公開されている中で、それがどうやって作られているのか、今この時代だからこそ届けたいというか、見たら誰もが「わあ!」って思うシーンがたくさんあると思います。
広瀬すず
1998年6月19日生まれ、静岡県出身。2012年に雑誌『Seventeen』のオーディションでミスセブンティーンに選ばれ、専属モデルとしてデビュー。2013年にドラマ『幽かな彼女』で女優デビュー後、同年公開の映画『謝罪の王様』で映画初出演。2015年放送のドラマ『学校のカイダン』では初主演を務めた。映画『海街diary』(15)で数々の映画賞で新人賞を受賞し、『三度目の殺人』(17)で日本アカデミー賞最優秀助演女優賞を獲得。そのほかの主な出演作に映画『ちはやふる -上の句/下の句-』『四月は君の嘘』『怒り』(16)、『チア☆ダン~女子高生がチアダンスで全米制覇しちゃったホントの話~』(17)、『ちはやふる -結び-』『ラプラスの魔女』(18)など。2018年は『第69回NHK紅白歌合戦』の紅組司会にも抜てきされた。
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