ホンダは開催中のジュネーブモーターショーで新型電気自動車(EV)「Honda e」(ホンダ イー)のプロトタイプを世界初公開した。このクルマが日本や米国ではなく、欧州で世界デビューを果たしたのには理由がありそうだ。

ホンダがジュネーブモーターショーで世界初公開した「Honda e」プロトタイプ(「Honda e」の画像提供:ホンダ)

ホンダが提案したコンパクトEV

「Honda e」は、ホンダが2017年のフランクフルトモーターショーで発表したコンセプトカー「Honda Urban EV Concept」(アーバンイーブイコンセプト)をベースに作った市販モデルだ。いかにもホンダのスモールカーらしい見た目でありつつ、ポップアップ式のドアハンドルや「サイドカメラミラーシステム」(サイドミラーの役割を果たすカメラ)といった先進機能を取り入れることで、シームレスなボディーラインを際立たせている。

2017年の東京モーターショーでも展示されていた「Honda Urban EV Concept」

新開発のEV専用プラットフォームを採用した「Honda e」は、コンパクトなボディーを持ちながら、長いホイールベースと短いオーバーハングを兼ね備えているのが特徴。ホンダによると、このクルマでは街中での取り回しの良さと優れた走行性能を両立しながら、力強いモーターと後輪駆動により、走りの楽しさを実現したという。1回の充電で走行可能な航続距離は200キロ以上(WLTPモード)だ。

ホンダのコンパクトカーらしい外見の「Honda e」プロトタイプ

ホンダは2030年までに自動車販売の3分の2を「電動車両」にする目標を掲げている。この電動車両という言葉は、ハイブリッド車(HV)、プラグインハイブリッド車(PHV)、EV、燃料電池自動車(FCV)を含む幅の広い概念だが、ホンダとしては電動車両のベースとなるHVの販売強化と性能向上を進めながら、PHVとEVのラインアップを拡充していきたい考えだ。

ただ、地域により環境規制の内容も違えば市場のニーズも異なるので、電動車両の販売戦略も地域に合わせた立案が必要になる。例えば、日本はHVのシェアが高い市場だが、その背景には充実した補助金や減税制度、渋滞が多くクルマの平均速度が相対的に遅いという道路状況、高速道路での移動が欧米に比べ短いという交通事情などがある。日本におけるホンダ車(登録車)の販売は、実に56%がHVだというが、日本のHV人気は世界的にみれば特殊な状況なのだ。

一方、これはホンダ車に限った話ではないのだが、欧州では日本ほどHVが売れない。さらに、CO2排出量の規制は今後も強まっていく見通しなので、自動車メーカーとしては、欧州で電動車両、中でも走行中にCO2を排出しないEVの販売を増やしていくことは急務となっている。

「Honda e」プロトタイプのインテリア

ホンダは同社独自の2モーターハイブリッドシステム「i-MMD」を搭載するSUV「CR-V」を欧州に投入し、同地域でHVの訴求を強めているところだが、ここにEVの「Honda e」を追加し、欧州での電動車両比率を高める考えだ。「Honda e」の発売時期は、欧州の一部の国で2019年夏、日本では2020年を予定している。

(藤田真吾)