変化の激しいITスタートアップ業界では、事業だけでなくビジネス用語もまた次々と生まれています。今回は「ピッチ」という言葉の意味について紹介しましょう。

  • ピッチという言葉の意味を知っていますか?(写真:マイナビニュース)

    ピッチという言葉の意味を知っていますか?

短い時間で投げるテクニック

一般に【Pitch(ピッチ)】とは「投げる」という意味を持つ言葉です。野球でボールを投げる選手がピッチャーですね。

投げるのはボールだけではありません。安いよ安いよ! とか、今日限りだよ! など、通行人に言葉を投げる時もあります。ここからお店の「売り込み」もピッチと呼ぶようになりました。いかに短い言葉で、相手を振り向かせるかが勝負です。

やがて、「エレベーターピッチ」という言葉が生まれました。エレベーターで一緒になるようなほんの数十秒で、自分の提案を伝えて、相手に興味を抱かせるための手段です。

特に、スタートアップ企業にとってのピッチは、投資家などに対するごく短時間のプレゼンテーションです。ビジネスモデル勝負であるスタートアップ企業にとって、重要なテクニックであることは容易に想像できます。

ピッチにとって必要なこと

ピッチは不特定多数の、その分野にまったく知識が無い相手を対象とします。わかりやすく伝え、心を動かさなければなりません。

そのためには、専門用語をできるだけ使わず、商品を売り込むよりアイデアの可能性を提案することが重要です。細かなデータを羅列するばかりではなく、共感してもらうための工夫も欠かせません。

ピッチはこのような順番で話すことが望ましいといわれています。

(1)どの問題を解決しようとするのか
(2)サービスの内容は何か
(3)市場規模はどれくらいか
(4)どんなチームがそれをやるのか
(5)今後の計画はどうなっているのか

ピッチに許された時間は数分です。この短期間で投資家の心をつかめば、資金調達へ大きく前進することができます。

資金調達だけでなく、メンバーの募集や業務提携のために実施するピッチもあります。スタートアップにおいて、もっとも重要なコミュニケーションだといえるでしょう。

多くのスタートアップ企業とベンチャーキャピタルが集まるピッチイベントは、日本でも定期的に各地で開催されています。

【pitch】の語源は、中世英語で「突き刺す」という意味の【picchen】にまでさかのぼります。刺すような鋭さがピッチに求められることは、いまも変わりません。

【例文】
「10分くらいのプレゼンから要点を絞ってピッチ資料を作ろうかな」
「良いアイデアだと思っても、ピッチに成功しないと始まらない」