テレビ朝日で放送されている『渡辺篤史の建もの探訪』(毎週土曜4:30~ ※関東ローカル)が、2月2日に放送1,500回を突破し、4月に30周年を迎える。毎回、リハーサルや下見は一切せず、その住宅の魅力を見たまま、感じたままに伝え続けてきた俳優・渡辺篤史が、番組への思いを語った。

  • 渡辺篤史 -テレビ朝日提供

元々建築好きだったという渡辺は「テレビ朝日からこの番組をやらないかと声がかかったのですが、初代のプロデューサーは僕が建築好きなことはまったく知らなかったんです」と、笑顔で当時を振り返る。

開始当初は沖縄を皮切りに桜前線と共に北上しつつ、日本全国の名建築を訪ねる旅番組として企画されていたが、渡辺が「個人住宅の取材にしましょうよ」と提案したことで現在の形に。番組は計13回で終了する予定だったが、いつしか評判を呼び、長寿番組になった。

渡辺は「番組を見てくれていた子どもが番組の影響で建築家を目指し、やがて成長して夢をかなえた彼が設計した家を取材に行ったことがありました。彼はロケ現場の隅のほうに立って感激、緊張していた…。この番組が育てた青年たちとのこうした出会いは、涙が出るほどうれしいですね」と秘話を語る。

さらに「いいですね~!」と褒めまくるスタイルについて、「僕は日本の住宅がもっともっと良くなればいいと思って、この番組をやっています。施主に選ばれた設計家が一生懸命考えて建てた家なのだから、僕はうまく仕上がっている部分を褒め、それが放送されて評判になればいい。そうすることでその建築家を育て、ひいては住宅事情がよくなっていけばいいと思っている。だから絶対に否定しない。設計家が施主の家族を思って一生懸命作っているものだから、いいところを探して世間話を織り込みつつ紹介しています」と明かした。

番組初期から現在まで番組制作に携わるJCTVの山澤達義プロデューサーは「渡辺さんは建築雑誌では絶対に見せない、“家の中の全部の扉”を開けてくれました」と振り返る。

「当初、建築家にはそういう取材はやめてくれ、と拒否されました」と言うが、「渡辺さんはトイレ、風呂、キッチンの収納も開けちゃうんです。箸も食器もきちんと収まるように設計しているところを紹介すると、視聴者はビックリしました。『建築家はこんなことまでやってくれるんだ!』『食器の枚数まで考えて設計してくれるんだ!』と…。そうやって渡辺さんは、建築家に対する印象のハードルを下げてくれたんです」と紹介した。